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ジダイノベーター Vol.2/変形ロボ製作から変形バイク製造へ

ICOMA、工業デザイナーが目指す「バイクメーカー」の道

往年の名車・ホンダ「シティ」への積載を意識して製作された折りたたみ式バイク「モトコンポ」。それを彷彿とさせる印象的な箱型ボディの電動オートバイ「タタメルバイク」。SNSによる試作機発表は、国内バイク製品発表における最大リアクションを獲得するなど、発売前から注目を集めている。

折りたたみ式電動バイク「タタメルバイク」

タタメルバイクを開発したスタートアップ「ICOMA」は2021年創業。プロダクトデザイナーの生駒崇光CEOが個人で行っていた電動折りたたみバイクの制作が大きな反響を呼び、根強い市販化の声に応えるべく設立された。

生駒CEOはタカラトミーにおいて玩具の試作や変形ロボット「トランスフォーマー」の海外事業を担当したのち、家電スタートアップやロボットベンチャーでプロダクトデザインや開発を行ってきた。

SNSで頂いたレスポンスを分析すると、バイクユーザーのみならずこれまで一切バイクに乗ってこなかった方々からの声も非常に多かったことが起業の後押しになりました。もともとバイクや変形メカが好きで、何か新しく面白いものが作れないかと思ってスタートしたのがタタメルバイクです。家庭用の電源で気軽に充電でき、置き場所に困らず自由に移動が楽しめるカタチを目指しました」(生駒CEO

タタメルバイクは折りたためば全長70㌢シート高68㌢全幅26㌢と机の下に収納できるコンパクトサイズながら、最高時速40㌔、航続距離40㌔と市販の原付と同等の走行性能を発揮する。

従来の二輪車製造と異なる大きな特徴は、金型をまったく使わず製造している点だ。金属系のパーツはレーザーや板金加工で、樹脂系パーツは3Dプリンタを活用して製作している。またこれらの設計図は今後オープンにし、B2BB2Cの垣根を取り払った共創やコラボレーションへ繋げていくという。

■玩具製作で培った安全への配慮

一方、気になるのは安全性だ。既存の国内メーカーが支持されてきた理由のひとつに、徹底した安全への配慮がある。

「当社はトヨタ、ホンダ、カワサキなど既存のモビリティメーカーで活躍されてきた方々にサポートメンバーとして参加してもらっておりますが、安全面について相談すると『そこまでやらなくても』という声を頂くことが大半です。私はスタートが子供向け玩具の製作ですから、安全面へのこだわりは人一倍強いかも知れません」

実際に車体を構成するキーパーツには実際のバイクに使われるパーツをふんだんに使用。安全性に加えて、バイクならではの「乗る楽しさ」を味わえる。さらにバッテリーはポータブル電源として、アウトドアや非常時においても活用できる。

「今夏にはまずキットバイクで数量を限定して販売をスタートします。こちらは私たちがユーザーの皆さんをサポートしながら、完成車を製作するカタチになります。完成車の販売は年末を目処に進めていきます」

パワートレインの変化は、様々なプレイヤーのモビリティ分野進出を可能にした。ICOMAも変化の波に乗りつつ、さらなる大きな波をキャッチしようとしている。

「タタメルバイクはユーザーニーズに合わせた様々なカスタムが可能ですが、プロジェクト自体も共創パートナーに合わせた多様な提案が可能です。地場産業と連携した『ご当地バイク』や、全く異なる業種との『コラボバイク』など、私たちのプラットフォームをより多くの皆さんに活用して頂き、共に成長していければと考えております」

(2022年3月25日号掲載)