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扉の先 41/商業施設に本格的ロボットラボ

【HCI ROBOT・AI LAB】 即日テストし見積り作成

入り口で出迎える検温ロボットを含め、様々なメーカーの産業用ロボット17台をすべて実演するかたちで展示した中小企業向けロボット導入支援施設「HCI ROBOT・AI LAB」が11月12日、大阪府泉大津市にオープンした。ロボット関連の施設は近年相次いで開設されているが、ここは一風変わっている。川崎重工業や三菱電機など大手ロボットメーカーを含め26社からロボットや関連部品の供給を受けるため、その日にその場で具体的なテストが実施可能。設備導入にかかるおおよその金額の確認までできるという。そんな本格的な施設が南海線・泉大津駅の目の前の、一般客が訪れる商業施設アルザタウン泉大津の3階にできた。

2台の安川電機製ロボットがカメラを使わずにうまく連携する。一般産業用(左)が注ぐビールを受ける人協働型

開設したのは、ロボット導入とケーブル・ワイヤー・チューブ・シート製造装置の製造を主事業とするHCI(2002年設立、大阪府泉大津市)だ。この商業施設はショッピングとビジネスの融合を目指しており、ここに来春オープンする図書館との協業も同社は泉大津市からの要望を受けて行う予定という。

目玉の1つは同社が三菱電機製6軸ロボットを組み込んだワイヤハーネス製造装置。ケーブルをボビンから取り出してストリッピングし、ケーブル内の細い3つの線にばらす。その1本ずつをAIを使って検査し、各線の先端をストリッピングして端子圧着する。これらを全自動で行う装置は年末までに完成度を高め、来年2月に発売する予定という。

食品向けロボットも用意した。川重の多関節ロボット、ニッタの弾力性のある空圧ハンド、キーエンスの3Dカメラを組み合せ、形の異なる果物を掴んで並べ替えてみせる。説明員は「ハンドをへら状のものに持ち替えればホールケーキを切り分けて箱に入れることもできる」と言う。この装置の動きは隣にあるVRシミュレーションエリアで専用ゴーグルを装着して、「真下から真上からと実際には見られない方向からロボットにぶつかることなく観察できる」。

ガチの導入向け

HCIは駅をはさんだ反対側にも一昨年、近畿経済産業局の委託を受けロボット導入拠点「HCI ROBOT CENTER」を開設した。2つの施設をどう使い分けるのか。奥山剛旭社長はROBOT CENTERは初心者に来てもらい啓蒙活動に使い、ROBOT AI・LABは導入を具体的に考えている人に来てもらうと話す。

「ROBOT AI・LABはガチに導入したい人向けなので『スピード』をテーマにしている。ロボット導入に欠かせない要素技術検証をスピード化し、シミュレーターを用いて検討中の複数のロボットの見比べ、社内プログラマーによる5G・DX・スマートファクトリーの提供を可能にした」

ROBOT AI・LAB内には約10人のロボット・AIエンジニアが常駐し、メーカーの垣根を越えてロボットの調整や設定もその場で対応するという。

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[HCIが来年2月に発売するワイヤハーネス製造装置]


【HCI ROBOT・AI LAB】 2020年11月12日オープン。大阪府泉大津市旭町20-1 アルザタウン泉大津3階
17台の産業用ロボットやハンド・カメラ・搬送装置などの周辺機器を備え、その場で具体的なテストの実施と見積もり作成が可能。自動化の専任人材を抱えない中小企業がロボット導入を検討するのにもってこい。初回無料のコンサルティングサービスを提供中。