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扉の先49/世にないシステムを開発

【オークラサービス】ロボ2台使ったクラフト袋製造付帯装置

積み重なったクラフト紙の束から4軸ロボットが決められた枚数だけすくい上げ、それをもう1台の6軸ロボットが受け取ってボトマー(筒状のクラフト紙の端面を接合して袋状にする機械)に1束ずつ投入する。

オークラ輸送機製ロボットAi1800(奥)とOR80K(6軸ロボット)を組み合わせた装置を紹介する吉武寛明・設計施工部長

これにより食品などを入れる袋が自動でつくられる。こう聞けば単純なシステムに思えるが、これは極めて自動化が困難な作業部分であり、国内初のシステムという(デパレタイジング特許取得済み)。

「これまで人手に頼っていた作業で、この自動化は長年のテーマだった。『こんな装置を待っていた』と袋メーカー様からの評判は上々」

システムを開発したオークラサービス(兵庫県加古川市)設計施工部の吉武寛明部長は自信ありげに話す。なぜ自動化が難しいのか。クラフト紙は掴みどころがなく剛性もない。それを必要な枚数だけ掴み取って、1束ずつばらして投入する必要があるからだ。同社は親会社のオークラ輸送機の4軸ロボットとOEM6軸ロボットを組み合わせて実現。これまではケースなどハンドリングしやすいものを対象としていたため大きなチャレンジとなった。

そこに挑もうと考えたのは需要がたくさんあると確信していたから。袋状にしてから輸送すると体積が増し空気を運ぶようなことになるため、クラフト紙は使用工場(充填工程)近郊で袋に加工される。となると袋を使用する工場の数だけ自動化システムが求められる。

オークラサービスはコンベヤや機械装置の点検・修理・据付・改造などを手がけ、ロボットSIerとして働くのは全社員の7%にあたる25人ほど。顧客は食品・化学・紙パルプ・農業分野。リーマンショック以降、売上は右肩上がりで、とりわけロボットSIer事業の2020年度売上は前年度比10%以上と吉武部長は言う。

「お客様が省人化しようとすればするほど我々は忙しくなる。コロナ禍で人手を介さないようにする流れなのでなおさら。ネット通販の拡大も追い風になっている」

同社はマテハン大手の親会社がつくるコンベヤやロボットを扱うため、当然のことながら高い搬送技術をもつ。コンベヤならベルト式にするのかローラー式にするのか。チェーン駆動かVベルト駆動のどちらを選ぶのか。搬送物に応じてそういった選択のノウハウをもつ。加えてオリジナルのロボットを扱う強みもある。「得意分野と性能を熟知しているので能力の限界まで使える。メンテナンスも必ず完璧にできる。コンベヤつくって100年、ロボットは40年という両方をつくるメーカー(オークラ輸送機)は唯一でしょう」と吉武部長。

■高まる安全性要求

これまではパレタイジング、デパレタイジング(ケースのパレットへの積み付けと取り出し)という物流システムの下流部分を担うことが多かったが、近年は上流部分を手がけるようになった。上流は様々な材料の投入や異物チェック、蓋閉めなどに相当する。ユーザーが変わればシステムの仕様もがらりと変わるため綿密な打合せと高度な技術が要求される。加えて最近は安全性が強く求められるようになってきた。「エリアセンサーの設置や人が介入できる距離、安全柵の高さといったロボットの安全性の考え方のレベルが上がっている」。

今回の開発のように世の中にないシステム開発に力を注ぐとともにコンパクトで無駄のないシステム構築を中小企業などに提案していく考えだ。