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扉の先50/半導体・液晶工場で培った搬送技術

【第一施設工業】自社製基幹ソフトで何でもつなぐ

生きのよい魚を発泡スチロール製容器の特殊な液体のなかに入れるとわずか数秒で凍って動かなくなった。

納入する設備を紹介する松村幸司社長。ロボットアームが載ったAGVが半導体ウェーハ20枚ほどが入ったフープを運び、ストッカーに格納する。

鮮度を保ったまま運搬する手段になる。かと思えば氷点下の温度でも凍らせない技術を用いれば野菜やフルーツを船でゆっくり運べる。第一施設工業(福岡県粕屋郡)は新規事業としてベンチャー企業と手を組みそんなソリューション開発を行っている。ロボットSIerと聞いて訪ねた会社でそう聞くと、記者はいったい何を取材しにきたのだっけと混乱してしまった。

異業種から来た3代目社長の松村幸司氏の柔軟な発想が同社を型にはめない。「物流革命を起こしますよ。新規事業はあと6つくらいやりたい。すべての事業が成功するわけではないが、少なくとも2本が軌道に乗れば5年で売上は10倍にできる」とビッグマウスを披露する。松村社長は人材派遣会社の営業部長、半導体製造装置向け基幹システム構築会社の社長などを経て4年前に引き抜かれるかたちで今の会社に入社。2020年3月から現職に。

同社のメイン事業はFA構築とロボットメンテナンス。もともとは半導体・液晶工場向けに垂直搬送システムを納めてきた。リーマンショック前にはクリーンルーム向けでアジア圏で販売シェア約70%まで高まったという。リーマン後は同工場の韓国・台湾・中国への移転に伴って仕事は減り、近年は自社開発の基幹ソフトを利用して工場全体の自動化を提案するようになった。MCS(Material Control System=自動搬送装置統合管理システム)と呼ぶ基幹ソフトを使えば、ユーザーはどこの会社製かを気にせず自動倉庫や搬送機をつなげてフレキシブルに搬送できると松村社長は言う。

「MCSがあればどんなインターフェースでもつながる。最適な設備を選べるので全体として設備投資額を抑えられ、本来のボトルネックも見えてくる。自動化が進まないのは何十億円もの投資になるマテハン大手の基幹システムを使おうとするからだろう」

目指す工場像を導く

同社のロボットSIer事業はこれまでに実績のあるSIer事業にロボットを加えるかたちで2年半前からスタートした。強みは半導体・液晶工場向けで培った垂直・水平搬送設備などを組み合せた個別提案だ。「ロボットや搬送機など単体設備だけを提案していては差別化できない。これからはソフトを軸に周辺装置を含めて一括提案する必要がある」と言う。

同社が心がけるのはコンサルティング会社としてユーザーの希望をきっちり聞きだすこと。「社内にSI人材を抱える大手企業を除けば、お客様はFAに不勉強な面がありがち。我々がきちんと耳を傾けて教育することから始める必要がある」。それには手間と時間を要するが、「お客様から様々なアイデアが出て、最終的に工場全体をどうしたいのかを導き出せる」大きなメリットがあると言う。