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扉の先56/AIピッキングを破格値で提供

【アセントロボティクス】プレステ生みの親「ロボット知能化」目指す

機械学習とビジョンカメラを活用したロボットによるピッキング。数年前はベンチャーなど限られたプレイヤーのみがチャレンジしていた領域だが、eコマースの増加や労働力不足といった背景も後押しし、最近ではロボットメーカーや大手マテハンメーカーも続々とこの分野に参入。さながら「AIロボットピッキング戦国時代」に突入している。

「食品ピッキングシステム」

こうした中、圧倒的な低価格を武器に参戦してきたのがアセントロボティクスだ。もともとAIを活用した自動運転技術の開発を行っていた同社だが、コロナ禍を受け社会課題でもある物流分野の問題解決に着手。AIピッキングソフトウェア「アセントピック」を開発し、これをベースとしたピッキングシステムを上市した。

リンゴとミカンを分けて並べる「食品ピッキングシステム」は協働タイプのテックマンロボット、ビジョンカメラ、ソフト、システム調整などの導入費用を合わせて499万円と破格のプライスで提供する。無論、果物の仕分けだけではなくさまざまな活用方法が見込める。

これらは従来なら導入から実用に至るまでに、最低でも1000万円は下らないシステム。それを半額以下の価格で実現できた理由を、同社の石崎雅之COOが語る。

「コストダウンにおける大きなポイントはビジョンカメラ。昨今では高精度のものも多く出ているが値段も高い。しかし、当社の開発したソフト『アセントピック』はカメラ性能に依存せずともワークをしっかりと認識できる。それゆえ、高スペック高価格のビジョンカメラを必要とせず、低スペックのものでもきっちりピッキングできる」  

製造業に向けた提案も複数行われた。バラ積み状態の金属プレートをピッキングし、治具に挿入する「製造ラインプレート部品供給」は、ワーク形状からワークの裏表や正確な位置姿勢を検出、高い精度で治具にセッティングしていく。

「ビジョンカメラでは従来難しいと言われていた反射のある金属や黒のワークでも把持からセットまで難なくこなせる」(石崎COO

■約1時間強でシステム設置

物流業界向けには物流センター内におけるピッキングから箱詰めまでの一連の作業を模した「物流センターピースピッキング」を提案。サイズ・形状の違うさまざまな日用品をピックし、ダンボールへと箱詰めしていく。扱うワークが多数あっても、優れたAIの認識エンジンにより短い時間でのタスクを実行可能にした。

これらのシステムの設置時間だが、ロボット、ハンド、カメラ、パソコン、ネットワーク機器等の設置で約30分。IPアドレスやグリッパーモデルの設定などロボットの設定に約5分。補正を含めたカメラの設定が約10分。マッピング対象領域、ピッキング対象領域の設定に15分。動作確認に15分と約1時間30分あればお釣りが来るという。

プレイステーション生みの親として知られる同社の久夛良木健CEOは、「家電もクルマも、かつては未来永劫続く産業だと思われていたが、いまはいずれも他国にシェアを奪われている。ロボットの分野もこのままでは同様に他国に追い抜かれる。産業用ロボットも進化しているようで進化していない」と危機感を露わにする。

続けて、「変種変量生産が主流となる時代において、これまでと同じようなロボット活用では駄目だし、ハードもソフトもまだまだ進化できる。そのためにも様々なプレイヤーと連携し、やるからにはもっとすごいものを作って皆さんを驚かせたい」と意欲を見せた。