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扉の先58/近未来の製造現場見せる

【入曽精密】5軸加工が誰でも手軽に

5軸加工機横にある画面に登録済みのワークや工具、治具の情報を呼び出し、それを実際に正しくセットしていく。

内覧会では5軸加工ナビの指示に従って段取りする様子を披露した。

加工時の締付力は指示どおりか、加工後のワーク質量と寸法は正しいかどうかも画面の指示に従って漏れなく確認する。そんなカーナビのように加工工程を誘導してくれる加工指南システム「5軸加工ナビ」を入曽精密(埼玉県入間市)と微細切削加工研究所(同)が作りあげた。米ベンチャー企業開発の、クラウドを利用したデジタルマニュアル&加工工程管理システム「TULIP」がベースで、DMG森精機製5軸加工機「DMU50」専用にカスタマイズしたものだ。これを使えば付加価値の高い加工を誰もが行えるという。

受託加工の入曽精密は929日、同社初となる内覧会「近未来の製造現場とは?」を本社で開催。生産財メーカーの幹部や報道関係者らが詰めかけた。同社は微細な複雑形状の削り出し加工を得意とし、薄い花びらが幾重にも重なる「アルミのバラ」(2002年)、スキャニングして得たポリゴンデータから再現した「アルミのバザラ大将」(07年)、0.1㍉角の「サイコロ」(16年)などを発表してきた。こうした作品の加工ノウハウを詰め込んだのが5軸加工ナビで、斉藤清和社長は「困難な作業の負担は軽減され、作業の付加価値が向上する。これが10年後の製造現場の一端」と話す。

装置も開発

昨年開発した1~2分のセットアップで加工精度1ミクロンを標準化する工具長測定機「HAGOROMO-nano」も紹介。接触式で0.02ミクロンの分解能で検出でき、超低接触圧方式なので小径工具(刃径0.01㍉)も測定できる。小径CBN焼結刃物を用いた金型の直彫りなどにも向き、「刃具を交換しても±0.2ミクロン以内に刃具のばらつきを抑え、段差の少ない加工面に仕上げられる。角部は0.1Rにもっていくことも可能」と言う。同社がHAGOROMO-nanoと刃径1.6~2㍉の刃物3本を使って、工具交換しながらおよそ1㌢四方のワークを15領域にわけて15ミクロン深さに加工したところ、領域間の段差は0.5~0.6ミクロンに収まった(走査型電子顕微鏡やキーエンス製3D測定マイクロスコープなどで評価)。

5軸加工ナビ」はワーク加工事例データやDMU50などとセットにして入曽精密と微細加工研の両社で年末に発売する予定。まずはDMG森精機が展開する5軸加工研究会の会員企業約100社に使ってもらうことを目指す。これに先行して今月には図・写真を多く載せ加工ノウハウを体系的に解説したムック『5軸加工ナビ K.Saitoの切削加工哲学~序編~』(B5判、135頁、税別3000円)を発行するとともに、専用サイト(www.5axis-navi.com)も立ち上げた。微細加工研の内田研一執行役員は「コアなコンテンツを増やしていき、将来的には加工レシピとしてサブスク(定額サービス)で提供したい」と話す。