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扉の先59/「街」と呼ぶ多機能型物流施設

【日本GLP】無人で荷積み・荷降ろし・搬送も

ビル入り口の顔認証ゲートを通って3階に上がると、だだっ広いコンクリートのフロアでAGF(無人搬送フォークリフト)とAMR(自律走行型搬送ロボット)を組み合わせた実証試験が行われていた。大型トラックに積まれた1㍍立方の荷物をAGFが取り出して床に置くと、小型台車ほどの大きさのAMR(可搬150㌔と300㌔グラムの2台)がそこに潜り込んで台・パレットごとほとんど音もなく運ぶ。もちろん無人でだ。

一部一般客に開放されたコンビニ・カフェテリア・託児所・会議室などが入った円形共用棟「リング」(左)と物流施設(奥)。芝生が多く、自動運転試験を進める道路は私道だが準公道といえる。

この試験の様子は、物流施設開発・運営の日本GLP1111日にオープンした多機能型物流施設「GLP ALFALINK相模原」(神奈川県相模原市)で報道陣に公開された。総延床面積約67万平方㍍を誇るこの施設は、同社が展開する新ブランドALFALINKの第1号物件。4つの物流棟(うち2棟は建設中で来年10月竣工予定)に加え、一部一般客に開放されたコンビニ・カフェテリア・託児所・会議室などが入った共用棟やテニス・フットサル・バスケットボールなどができるマルチコートなどで構成する。同社が「街びらき」と呼ぶのも大げさではない。

「物流施設ディベロッパーが街びらきイベントをするのはおそらく初めてだろう。我々が目指す物流施設のあり方をここで示す」

同社の帖佐義之社長は会見でそう力を込めた。物流施設はとかく裏方的な存在でキツイ・キケンが伴い仕事として魅力を抱きにくい。要求されるのは効率を高めて物流コストをいかに下げるのかに終始しがちだ。「物流センターはコストセンターと捉えられがちだった。我々はオペレーションの効率を高めるだけでなく、働きやすい環境をどうすればつくれるかといったことに20年に渡って取り組んできた。その集大成がここにある。オープン・ハブとすることで人が集まり会話が広がる。アイデアも生まれ創造連鎖が起こる」と利点を話す。

■「物流の次」をデザイン

様々な試みを協業により始めている。同社は自動運転OS開発でリードするティアフォー(名古屋市)などと自動運転車を敷地内で走らせる実証試験を始めた。8つのRiDAR(レーザー光を使った距離・方向測定)と2つのカメラを搭載した長さ5㍍ほどの自動運転車は、走行しながら位置を把握し、周辺物・人を検知し、3D地図を作成。2022年にはレベル4相当の自動運転技術・サービスの実現を目指す。

相模原市、佐川急便との3者では「災害時における救援物資の受入れ及び配送等並びに救援物資受入れ拠点の設置等に関する協定」を締結し、災害対応の体制を整える。会見に出席した本村賢太郎・相模原市長は「これが物流施設?というようなワクワクするものになればと思う。行政だけではなかなか進まないSDGsが進展しそう」と期待する。

コンセプト設計のほか会議室デザイン、家具選定などを担当したクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏はテープカットに出席。「物流の次をつくってほしいと依頼された。ふらりと散歩で訪れてもいるだけで気持ちよくなれるようデザインしたつもり。市民に愛され、ここで働く人がプライドをもてる施設になれば」と話した。