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扉の先62/ユーザー教育が協働ロボ普及のカギ

iCOM技研、SIer要らずのSIerへ

昨年11月に発表されたグローバル・インフォメーションによる市場調査レポート「協働ロボットの世界市場」によると、その市場規模は、2021年の12億米ドルから年平均成長率43.4%で成長し、2027年には105億米ドルに達すると予測されている。

国際ロボット展で出展する新システム

先進国において労働人口がシュリンクしていくなか、救世主的な存在と見られている協働ロボット。だが、実際に中小企業が導入するとなると、さまざまな課題が浮き彫りになる。こうした普及へのハードルを「ヒトづくり」から飛び越えようとしているのがiCOM技研だ。

同社・山口知彦社長が語る。

「協働・産業用にかかわらずロボットは大企業であれば、生産技術部などがしっかりと活用されていますが、中小企業ではまずは活用できるベースを作らないとなりません。クルマは運転できる人がいるから売れますが、ロボットは運用できる人が少ないので普及に至らない。だからこそ教育というコンテンツが鍵となります」

同社でも当初は協働ロボットの可能性を様々な中小企業に提案してきたという。だが、実際の現場からの反応は芳しくなかった。

「提案型のアプローチですと、結局見積もりを出して仕様書を作ってシステムを立ち上げるといった、これまで産業用ロボット導入に行われてきたプロセスと変わりません。これを協働ロボットに置き換えて中小企業に導入して頂くのは難しい。これを変えていくためには人材育成と使い勝手の向上が急務だと感じました」

同社では協働ロボットにおいてトップシェアを誇るユニバーサルロボット(UR社)を専門に取り扱っているが、現在4名の社員がUR社のトレーナー認定を取得。さらに昨年12月にはUR社のトレーニングパートナーをして認定されている。

■ユーザーの自立を促す

昨年には同社内にロボットスクールを開校。ロボットの立ち上げからプログラムの作成方法、周辺機器との連動、安全対策など様々なセミナーを実施。昨今のコロナ禍を鑑みたオンライン型のセミナーも開催している。

「セミナーや教育の内容については、これからまだまだ煮詰めていきます。教育は教育のプロにということで、兵庫県立大学社会情報学部の笹嶋准教授と協働ロボットユーザー向けのカリキュラムを作成しています」

また、ロボットの使い勝手の向上として同社ではパレタイジングシステム「iパレタイザーX」を開発。URロボットと組み合わせたパッケージとして販売している。

「ロボットとシステムの一体化によって、実際の運用において必要なノウハウの習得を最低限で済ますことが可能になります。他社の同様の製品に比べて約1/3サイズとコンパクトですし、積み付けパターンの追加や変更といったプログラムをリモートで行えるIoTユニットも標準搭載しており、現場に合わせた柔軟な運用を可能にします」

来たる3月の国際ロボット展においては、機能を絞り込んだ廉価版のパレタイジングシステムを発表。さらに導入障壁を下げていく構えだ。

「当社の製品をお求めいただいたユーザーに立ち上げや運用のノウハウを伝授し、実際の活用はユーザーさん主体でやっていただく。究極はSIer要らずのSIerにならないと、と思っています。最低限のメンテナンス等は必要ですが、ことあるごとに私たちSIerが顔を出すようではコストメリットにも繋がりません」

製品とノウハウをセットにした提案で、作業の自動化だけではなく、ユーザーの自立化も促す。同社の取り組みは、今後の中小企業における協働ロボット普及の指針となっていくのかもしれない。