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扉の先66/名古屋に開放感ある新工場

トライエンジニアリング「当社なら一流設備を導入できる」

2階の事務所からも会議室からもガラス越しに階下の工場の様子がよく見える。210キロ可搬のファナックのロボットを使ったヘミングシステム(自動車ボンネットの外周の折り曲げ)や600㌔可搬の安川電機ロボットを利用したレジャーボートをつくる設備(10mのスライド軸を装備)が組み立てられていた。

レジャーボートをつくるための自動化設備。10mのスライド軸をもち、成形したFRP部品をトリミングする

「作業現場で何が行われているのかがよくわかり、作業者は隔離されていると感じにくい。立会い時にはお客様は会議室で商談をしながら自動化設備の動きを確認することができる」

そうメリットを話すのは機械加工の自動化を得意とするロボットSIer、トライエンジニアリング(愛知県名古屋市)取締役の岡丈晴・営業部長兼開発部長。同社は新工場「ライフバレー工場」(同市守山区、全社員の3割弱にあたる11人が勤務、建屋は幅22×長さ50m)を新設し、この4月に本格稼働を始めた。名古屋にはサイエンスパークが多く、医療分野向けの「なごやライフバレー」(名古屋中心部から約10㌔の距離)に同社が確保した1万平方㍍弱の土地に建てたものだ。

同社はこれまで海外案件などまとまった仕事を受注し、本社工場だけでさばき切れない時に瀬戸市にある協力メーカーを頼ってきた。だが、物理的な距離があることから使い勝手は必ずしもよくなく、納期遅れにつながることがあったため工場新設を決めた。

■レジャー向け設備が好調

高い剛性が求められる加工用のロボットシステムが同社の主力。これまでに国内外の自動車メーカーを中心にマシニング装置をおよそ20台、FSW(摩擦撹拌接合)装置を10台、研磨装置を3台納めた。7割を占める自動車分野向け以外の航空・鉄道・住宅設備・建機・船舶分野向けは設備サイズが大きい。コロナ禍にあってもレジャーボート製造向け設備などは好調という。

「新しく増えた仕事もあり、コロナでニーズがより鮮明になった。それまではお客様から設備投資の効果を問われることが多かったが、事業を継続させるのに必要な自動化が求められるようになってきた。少子高齢化が進み、外国人労働者も減るなか事業継続は喫緊の課題と言える」

同時にEV化や脱炭素に向かう投資も大手客を中心に見られるようになった。たとえばバッテリー関係では新しい構造・部品に対応できるもの、エアーレス化で省エネにつながるものなどだ。

技術者を育ててブランド力を強化することが重要な課題と捉える。「仕事をただこなすだけではSIerはただの鉄工所か器用貧乏になりかねない」からだ。同社には専門性の高いスタッフがいるが、顧客の工場を広く見渡して全体最適化するための指示書をつくれる人材が必要だという。

この仕事ならこんな自動化が必要でこのスペースにどんなロボットが収まるとか、逆にここまでなら勤務シフトで対応できるのでロボットは要らないといった提案ができる人材が欠かせない。高い専門性はアウトソースできるので必ずしも必須でない。当社にしかないノウハウを明確化し、当社に頼めば一流のモノが導入できるということを広く知ってもらいたい」