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扉の先67/国内屈指のAIエンジニア集団

トラストスミス、先端自動化技術の社会実装目指す

「弊社は独自の技術に強みを持っていますが、弊社が提供する価値はユーザーの『利益の最大化』であり、技術を押し売りすることではありません。既存技術のほうが投資対効果に優れていると判断すれば、積極的にそちらをお勧めします」

自社開発AGV「Kaghelo」

こう語るのは東京大学発のAIベンチャー企業「TRUST SMITH(トラストスミス)」顧客価値創造局コンサルタントの堂本拓磨氏。同社は東大で農業機械の研究をしていた大澤琢真社長が、20191月に設立。以来、東大および京大をはじめとした国内の英知が集い、機械学習やディープラーニング、数理アルゴリズムといった最先端技術を活用し、製造業や物流、建設や社会インフラなど多岐に渡る業界へ自律走行・画像認識・最適化システムなどのソリューションを提供している。

同社は人工知能を使った障害物回避型アームのアルゴリズムを開発し、特許も取得している。これは「リーマン計量」と呼ばれる微分幾何学の理論に基づくもので、空間内に存在する障害物を回避し、目的物へアプローチするもの。

「アームから見た空間内の物体との距離、相対速度に応じて適切にコントロールするので、障害物が動いていても回避しながら把持したいワークへ安全に到達することが可能です」

最適化アルゴリズムにも強みを持ち、港湾企業と共にコンテナの積み込み計画の自動化に向けた効率化を担うシステム開発や、工場・倉庫内において数百台規模で稼働するAGVなどのマテリアルハンドリング機器を群制御して効率を最大化させるシステム開発など、既に複数社と共同でプロジェクトを進めている。

■現場で活きる技術を追求

多くのメーカーから様々な製品がリリースされ、さながらAGV戦国時代とも言えるなか、他の自動搬送車に無い強みを持つ自社開発のAGVKagehlo(カゲロウ)」を2021年に上市している。

「倉庫や工場に複数台のAGVを導入する際、回避や接触してしまうトラブルなどで運用効率が上がらないケースがあります。当社は独自の群制御アルゴリズムにより、100台以上の運用であってもAGVが通る経路を最適化し、スムーズな運用を実現します。また車高を175㍉まで薄くできますので、潜り込み式やカーゴ牽引式などユーザーニーズに合わせた自由度の高い設計が可能です」

これら数々の最新技術を武器とする同社は、ともすれば机上での研究開発をメインとした企業に見えてしまう。だが、その実態は製造業に寄り添った技術の実装を推し進める「泥臭さ」も持ち合わせていることも垣間見える。

「当社の強みはヒアリングからソリューション提案、着手までのスピード感と自負していますが、実際はコンサルタントチームがお客様の元に幾度も足を運ぶことによって、最適解を導き出すようにしています。これまでも、これからも現場の方と時間をかけて共に開発した技術の積み重ねが、当社の礎になっていくと考えています」

今年4月には、既存工場から4倍の規模となる新工場へ移転。アームロボットやAGVの開発を加速させるとともに、物流倉庫やスマートファクトリー構築をワンストップで賄える体制を構築している。

堂本氏は「FAやロジスティクスの自動化に関する知見は一通り揃えてはいますが、まだまだ自社に足りないリソースも数多く存在します。今後はより多くのパートナー様と一緒に、世の中の役に立つソリューションを提供して行きたいです」と力強く語ってくれた。

(2022年8月10日号掲載)