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連載 扉の先〜自動化時代の挑戦者たち

扉の先44/双腕スカラロボに特化

【太洋工業】「FAしっかり整えロボット負荷減らす」

売上高の6割を占める電子基板を中心に基板検査装置(約2割)、鏡面研磨機(約1割)などの事業のほか、商社としての顔をもつ太洋工業(和歌山市、社員222人)。

田中清孝執行役員。後ろにあるのはduAroを使ったボタン電池の検査装置。4つの吸着指をもつハンドで部品を掴み、指を広げてリリースする。

これらの事業を組み合せてワンストップ提案できるSIer事業を3年前にスタートさせた。営業を含めた18人の専門部隊だ。用いるのは川崎重工業の人共存型双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」。電子部品部管掌の田中清孝執行役員は「まだ得意分野を打ち出せていない」と笑うが、これまでの取引先である大手セラミックスメーカーやフィルム・ケーブル・ホース加工企業などへ加工・検査装置を年に10台前後納入している。1件当たりの受注金額は数百万円から5千万円が多く、なかには20m以上の生産ライン(2億円)という引き合いもある。売上にして2億円前後。「この先、10億円にまでもっていき1つの事業として成り立たせたい」と意気込む。

同社がSIer事業に参入したのはFAに興味があったことに加え、設計・開発という社内リソースがあったから。客からの自動化要求に応え、当初は年に12台、ロボットを使わないFAを生産ラインに後づけするかたちで納めた。duAroに強いSIerを欲していた川重から声がかかったのを機に、ロボットを扱い始めた。

この協働ロボットは6軸の垂直多関節型ほどの複雑な動きはできないが、「中小企業さんの多くは組立・ネジ締め・箱詰めといった工程で6軸の動きを必要としない。タッチパネルによる簡単なティーチングはとっつきやすく、双腕の片手を使ってワークを固定することができ治具が少なくて済む。スカラ式なので360度回転でき、真後ろにモノを運ぶのにロボットを移動させる必要がない」と数多くのメリットを挙げる。

■画像処理を付加
とはいえロボットありきという立場ではない。「FAとロボットは道路と車輪の関係。道路(FA)が整備されていれば車輪(ロボット)はスムーズに進む。だからFAをしっかり整備することが重要で、それによりロボットにかかる負荷は減らせる」と説く。

田中執行役員が最近感じるのはとにかく自動化したいという中小企業が増えていること。今や人材確保は難しく人件費が高まっているため、完全自動化だけでなく細かなハンドリングなど部分的にでも自動化したいというニーズだ。「ロボットシステム1300万円はパート社員130万円×10人分に相当する。辞められる不安を払拭できるメリットも併せて自動化の価値を感じてもらえるかどうかがカギになるのでは」と話す。

地元和歌山は農業が盛ん。人手不足が問題視され、自動化があまり進んでいない分野でもある。それも睨みながら、画像処理装置を製造販売する子会社の技術を取り込み、『FA・ロボット・画像処理』で得意分野をつくっていきたい」と言う。