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連載 扉の先〜自動化時代の挑戦者たち

扉の先46/ライフサイクルのすべてを支援

【松栄テクノサービス】ロボットの点検・オーバーホール

昨年3月に竣工した、60人収容のセミナールームを含む濃紺の3階建て本社ビルは自動化事業の著しい成長を物語る。松栄テクノサービス(愛知県長久手市、社員59人)は「ロボットのライフサイクルのすべてをサポートする」と謳うひと味違ったロボットSIerだ。

豊重広泰常務取締役と近年扱うようになった協働ロボット

同社は企画開発、エンジニアリング、メンテナンス、教育、ロボットレンタル、中古ロボットの計6つの事業をもち、主力のメンテナンス事業が年間売上高約10億円の6割を占める。メンテには点検・オーバーホール、出張・引取・持込修理、ロボット据付・セットアップ、ティーチング、条件出し・タクトアップが含まれる。

「ロボットを納めることよりも、お手持ちのロボットの性能を最大限発揮していただき、安心して使っていただけるようにするのが我々の役割」

そう話すのは豊重広泰常務取締役。客先の生産が止まることのないよう、また万一止まってもすぐに復旧できるよう同社は3直の24時間体制で問合せを受け付ける。

扱うロボットは9割がたは自動車生産向けの溶接ロボット。5年ほど前からは協働ロボットを扱い始め、食品業界にも参入した。一般的なロボットSIerと同じように単独で新規のロボットシステムの提案・納入を行うが、その数は年に10台ほど。だが取り扱うロボットの数となると多い。「新規ロボットの取り扱いは年間300台前後と日本一多いのではないか」と豊重常務。他のSIerが主として扱う案件でも、溶接ロボットなどのセットアップに加工ノウハウが必要なケースでは、松栄テクノはサポート役を頼まれるためだ。

データベースを整備

同社の事業は38年前、パナソニックの溶接機実演車業務を担うことからスタートした。ほどなく溶接の熟練技を自動化する際に必要となる多軸ロボットの搬入・セットアップ・ティーチング・点検をロボットメーカーに代わって担うようになった。その後、他メーカーのロボットも扱い、「中古販売、レンタルと応えられるものは何でも応えようと手を広げ、気がつけば6事業を扱うようになった。ただ、メンテ・保守の契約はなく、待っていても仕事が来るものではない。当社を頼っていただくことで未然にトラブルが減らせるをとを訴え続ける必要がある」と言う。

アナログで管理されることが多い業界にあるが、同社はサービスの質を高めるため12年前からデータベースを構築してきた。「ロボットカルテ」と呼ぶシステムで、ロボットに貼られたステッカーに記載の管理番号から、ユーザーに納入したロボットの利用履歴などの情報が得られ、すぐに対応できる。「当社は修理対応がメインなので利用状況をすぐに把握し、当社の誰でも確認して早期に対応できるようにしている」。

協働ロボットを扱うようになり自動化ニーズの高まりをひしひしと感じている。「これまでは決められた動きを繰り返すことが求められたが、自動学習するAI(人工知能)に適切な動作を任せられるようになってきた。条件はまだ限られるが、これらのニーズはもっと広がる」と期待する。