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連載 扉の先〜自動化時代の挑戦者たち

扉の先52/線状物を高速ハンドリング

【倉敷紡績(クラボウ)】目指すは「目と脳と手」の再現

直径1㍉にも満たない光ファイバーをロボットが掴んだかと思うと、姿勢を修正しつつ約2㍉の穴にするすると通してしまう。この間わずか数秒ほど。

セイコーエプソンとタイアップしたデモシステム。写真中央のKurasense-C100で認識したフラットケーブルを力覚センサを用いて自動でタブレット基盤に組み付ける

こうした不定形物を対象とした自動化の難しさは誰もが知るところだが、一方でクラボウがSIer事業に参入したのはそこに市場としての可能性を見出したから。20204月にはケーブルなど線状物の認識に特化した高速3Dビジョンセンサ「Kurasense-C100」を発売。同製品を軸とした自動化システム「クラセンス」の提供を始めるなどロボット事業に本格参入した。

繊維大手として知られる同社は一方で、染色工場向けカラーマッチング技術に端を発する検査・3次元計測にも強みを持つ。技術を活かした新事業の立ち上げ計画が16年に始動すると、高成長が見込まれるロボット分野への参入を決定。ヒアリングで「柔軟物の自動化ができていない」という現場の共通課題を認識し、それをセンサで解決すべく試作開発を始めた。

17年の展示会に出展した針穴に糸を通すロボットに着目した企業から、『ケーブルのような線状物を扱う作業を自動化したい』と多くの声が寄せられました。市場の広さという点で有望だと判断したんです」。クラセンスの開発を担当したロボットプランナーの北井基善氏は線状物に特化したシステム開発の経緯をそう振り返る。

そうしてうまれたクラセンスは、ワーク形状の把握からロボットへ動作指示を出すまでの処理時間が短いという特長を持つ。「処理が早い理由はデータ量の違いです」と北井氏。従来の3Dビジョンセンサが点群データで形状を認識してCADデータと照合するパターンマッチング方式をとるのに対し、クラセンスは先端から01㍉ピッチのデータのみを認識し、3Dプロファイル化しているという。「データ量を絞ることで1秒間に約20回ロボットに指示を出すことができ、パターンマッチングも不要。挿入・組付前にワークの向きに応じた姿勢修正も可能です。ケーブル等を扱う作業はタクトが厳しくそれが自動化を妨げる要因ですが、クラセンスなら人の置換えとして提案できます」

■クラセンスを軸に周辺技術も開発

業界に参入したのは204月。コロナ禍での船出だったが実績を順調に増やしている。引き合いがある業界は「まさに万遍なし」と、環境メカトロニクス事業部情報機器システム部画像情報課の寺本秀太郎課長補佐。「線状物を人手で取り扱う工程すべてが対象になるため需要が幅広く、特に多いのは薄型の電子機器にフラットケーブルやコネクタを挿入する組立工程。挿入確認含めタクトに収める必要がありますが、力覚センサを用いた素早い動作が得意なメーカーと組むなどメーカーごとの強みも活用し拡販を進めています」と話す。

一方で、技術面での目標に掲げるのは人手作業の「完全な」代替だ。特にケーブルを扱う工程では束になった状態から1本だけを抜き取る動作が求められるといい、そのために物陰や束状のケーブルを認識できるロボットハンド搭載型の小型クラセンスや、ケーブルを撚って1本だけを掴める「触感のある」ハンドを開発中。認識にAIを活用するなど周辺技術の開発も推進している。

「端的に言うと人の目と脳と手を再現したいんです」と寺本課長補佐。Kurasense-C100とそうした新技術を掛け合わせ、ゆくゆくは自動車関連分野を開拓したいと前を見据える。