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連載 扉の先〜自動化時代の挑戦者たち

扉の先54/3社協業で検証センター開設

【バイナス】協働ロボット導入の敷居さげる

近年、産業用ロボットや5G、AIの検証施設が相次いでオープンし、失敗のない工場自動化のための環境が整いつつある。

5室で構成する協働ロボットセレクションセンターのうち最大の「ルーム4」では、同じ作業を多メーカーのロボットを用いて行うことができる。ほかにAIと協働ロボットを組み合わせた研究開発(ルーム1)、力覚センサーを使ったギヤの嵌め合わせ検証(ルーム5)なども。

このところ協働ロボットやAMRAutonomous Mobile Robot=自律走行型搬送ロボット)を使った自動化提案に力を注ぐロボットSIer、バイナスが82日、愛知県稲沢市の本社に開設した検証施設「協働ロボットセレクションセンター」(5室合わせて約300平方㍍)もその1つ。ロボット導入に必要な複数メーカーの装置の比較・選定・評価・検証がここで行える。協働ロボットに特化して国内外の主要16メーカー・39機種を取り扱い、しかもそれらを最新の状態に保つという。

そんなことができたのは社員の4分の1にあたる200人余のエンジニアを抱える技術商社・立花エレテック(大阪市西区)と、2016年からロボットのレンタルサービス「RoboRen」を始めたオリックス・レンテック(東京都品川区)と協業したからだ。バイナスのビジョンカメラ、力覚センサーなどを用いた自動車・電機・建設・食品・農業分野で実績のあるインテグレーション力と、立花エレテックの全国規模の顧客ネットワーク、オリックス・レンテックの充実したロボットレンタルサービスを組み合わせる。

単なるデモでない

バイナスの渡辺亙社長は同日、本社で開いた記者会見で「実システム」を強調した。「DX時代に生産現場で活躍が期待される協働ロボットを、実ライン・実システムに導入するための検証を行うために開設した。デモンストレーションを主とした一般的なロボットセンターと異なり、お客様といっしょに最適な実システムを実現するためのノウハウを提供する」と設立の趣旨を話した。

IT(上位)からOT(下位)まで工場をまるごと提案し次世代スマートファクトリーを推進してきた立花エレテックの山口均FAシステム事業本部長は「労働人口の減少で自動化の需要が高まるが、カギとなる協働ロボットを含むシステムはコストが高く生産性向上に本当に結びつくのかという不安があった。3社協業によりその課題を1つずつ解決できれば普及は進む」と見る。

日本初の計測器レンタル会社として設立し、34千種の生産財を取り扱うオリックス・レンテックの小林剛輝・事業戦略本部副本部長は「当社はレンタルサービス『RoboRen』でロボット導入の敷居を下げた。高くて効果がつかみづらかった協働ロボットを月々、課長決裁ですむ価格で導入できる」とレンタルのメリットを訴える。

顧客は自動車分野が多いと見られるが、ターゲットとするのは自動化が進んでいない3品(食品・医薬品・化粧品)や5G関連分野。検査工程などを含みAIAMRなどを使った付加価値の高い1千万円超のシステムの受注を狙う。バイナスは協働ロボットに関してはこれまで年間数社からの受注にとどまっていたが、8月から来年12月までの15カ月間でそれまでの10倍の50社からの受注を目指す。これにより年間売上高は向こう3~5年で昨年の2倍以上の25億円を目指す。