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連載 扉の先〜自動化時代の挑戦者たち

扉の先55/自動車部品メーカーがロボットSIerに

【井原精機】世界シェア首位の部品製造ノウハウ生かす

自動車部品メーカーの井原精機(岡山県井原市)は国内4工場で主力のステアリング部品やハブユニット、ディスクローター、駆動部品を製造する。近年はそれら部品加工ラインにロボットを導入し、笠岡工場ではオイルポンプ加工ライン(2018年)、高周波焼き入れ機(19年)、インプットシャフト加工ライン内径測定器(20年)を自動化。本社のある井原工場ではウォームシャフト加工ライン(20年)の作業者を大幅に減らした。

7人を要したウォームシャフト加工ラインは2人でこなせるようになった。

ウォームシャフト加工ラインはこれまで手作業で行ってきた旧式NC旋盤・転造盤へのワーク投入、加工ワークの計測などを人の背丈ほどのロボット2台で代替。転造下径を自動計測する装置は自社で設計・製作した。従来は昼夜各1×3ライン、検査に1人の計7人を要したが、自動化によって検査を含め2ラインを昼夜各1人で行うことで計2人でこなす。年間の人件費は3分の1に、不良率は5分の1に、加工エリア面積は3分の2(約75平方㍍)になった。だが、効果はそれだけではないと同社業務部の中家貴司マーケティング支援グループ長は言う。

「旧式工作機械のインターフェースをそのまま活用して加工機扉の開閉なども自動化した。安全柵で区切った2つの作業エリアの間にバッファ装置を設けてネック工程を止めない仕組みを作り、ライン可動率は98%20ポイント向上。さらに自社製作による材料供給装置、完成品パレタイザーを設けたことで最大2時間の無人化運転が可能となった」

これを手がけたのは同社のロボットSI事業を担うロボット・商品開発グループ。発足して約2年で社内の2千万~3千万円規模の6つの製造ラインを自動化した。昨年9月には情報収集と横のつながりを得るためFA・ロボットシステムインテグレータ協会に入会。今春からは社外案件の受注も狙い、現在4人の技術スタッフ体制を23年には専門性を高めた11人体制に増員する計画にある。

■品質管理システム確立

ロボットSI事業を始めたのは自動車業界への高い依存度を分散させるため。技術部の矢野裕之部長補佐は「新規分野である建築や福祉関係にも目を向けたが多品種小ロット製品、一品物が多く経験の少なさから対応するのが難しかった」と振り返る。そんなときに自社設備の自動化を外製に頼っていて気がついた。「ロボット単体は安いのにシステムアップすると、なぜこんなに費用がアップするのか。つまりシステム構築には非常に高い付加価値があるからだ」と。システム構築には設計~試運転で厳格な仕組みづくりも必要になるため、大手機器メーカーから専門家を引き抜き、IATF16949:2016ISO9001に自動車産業固有の要求事項を加えたセクター規格)に則した品質マネジメントシステムを確立した。

同社のSIerとしてのウリは母体が部品加工会社であることだろう。装置業からロボットSIerとなるケースはよくあるが加工業からは珍しい。「お客様の要望に応えるだけでなく、ここに測定機を入れれば品質が上がりコストダウンできチョコ停も少なくなる。そんな全体を見渡した提案ができる」と中家グループ長は強みを話す。矢野部長補佐は「案外小さな工夫の積み重ねが生きる。それによりライン可働率が60%台から90%台へと一気に高めることも可能」と言う。これは自社ラインの改良で実証済みだ。