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連載 けんかっ早いけど人が好き

けんかっ早いけど人が好き vol.5

女優ライト

コロナで相変わらずリモート会議の日々である。ただ、困るのは画面に映りこむ背景だ。

300円ショップで買った女優ライト。顔色はよくなるのだけれど。

私の仕事用デスクがあるのはダイニングルームの一角なので、このまま会議をすれば洗濯物が丸見えになりかねないのである。こうしたときに便利なのがバーチャル背景である。きれいな写真を背後に映すことができ、我が家を豪邸のように見せかけることができるのだが、弱点がある。わきが甘いのだ。

わきがあまい。そう、私の顔や体のわきに隙間が発生してダイニングルームがちょいちょい映ってしまう。しかも、なぜか画面の下の方に3分の1くらいバーチャル背景が機能せず、掃除機がころがっている床が映されることもある。これはまずい。やはり、背後が見えてもかまわない位置に座る位置を変えなければ。

ノートパソコン持ってうろついた結果、窓を背にして座ることにした。これなら部屋の様子は絶対に映らない。ただしこの場所にも問題がある。後ろが窓なので逆光で顔が真っ黒になってしまうのである。ブラインドカーテンを閉めても、部屋の明かりをつけても改善しない。どうしたものか。そうだ。ユーチューバーが使っている女優ライトを使えばいいのではないか?

女優ライトはドーナツ状のライトで、顔がきれいに映ることでSNSを利用する多くの女性に愛用されている。ネットで探してみると、数百円から数万円まで幅広い(広すぎるぞ)種類があるではないか。そこで、流行りものをいち早くチェックする女性誌編集者の友人にきいてみた。

「女優ライトを買おうと思うんだけど、どれがいい?

私の言葉が終わらないうちに彼女は言い放った。

「あれは、ダメよ! 私たちの年齢になると、パソコンを見るときに老眼鏡をかけるでしょ。そうするとね、眼鏡のレンズにドーナツ型のライトがくっきりと映りこむのよ!

なんと! それはダメだ。女優ライトを使っていることが相手にばれてしまうではないか。相手に話を聞かせていただく立場の人間が、女優ライトで美しく映ろうとしているなどと、思われている場合ではないのである。

リモート取材は、交通費も時間もかけずにできて本当に便利だ。でも、(我々世代は)このように、くだらない苦労もしているのである。

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員