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連載 けんかっ早いけど人が好き

けんかっ早いけど人が好き Vol.6

ソフトクリームはお好き?

暑い。言ってもどうにもならないとわかっていても暑い暑いと声が出る。暑いときには、冷たいものが欲しくなる。アイスだ。以前、「ガリガリ君」の赤城乳業に取材したときに聞いたのだが、暑くなればなるほど氷菓であるガリガリ君は売れるそうだ。一方、気温が高くなりすぎるとクリーム系は売れなくなるらしい。

サービスエリアごとにあるご当地ソフトクリームも、楽しみのひとつ。

しかし、いくら暑くてもソフトクリームが無性に食べたくなる場所がある。高速道路のサービスエリアである。こじゃれた街やショッピングモールでもソフトクリームを売っているのに食べたいという気が起こらない。しかし、サービスエリアにクルマを停めて「ソフトクリーム」というのぼり旗が目に入った途端、パブロフの犬のように食べたくなるのである。

街なかで食べない理由のひとつに、ソフトクリームというかわいらしい食べ物を持って歩く姿を他人に見られたくないことがあると思う。中高生なら男子でも女子でもあんなに似合うのに、私の年代でソフトクリームを食べ歩く姿をさらすのには抵抗があるのだ。しかし、サービスエリアは違う。サービスエリアはドライバーの憩いの場所。そして、人生の先輩と見受けられるおじさま方も堂々とソフトクリームを食べている姿に勇気をもらうのである(大げさ)。

以前、イタリアに住んでいたときに熱波がきて、とんでもない暑さになった。当時のイタリアはエアコン普及率が低く熱波は命に係わる事態である。テレビではさかんに注意を呼び掛け、あごひげをたくわえた男性キャスターが街頭でリポートをしていた。彼は、水分をとるように呼び掛けたあと美味しそうに盛り付けられたアイスクリームを手にとってこう言ったのだ。

「熱中症対策にはタンパク質の接種が有効です。アイスクリームを食べましょう」

はい? 私は思わず耳を疑った。たしかにアイスクリームは乳製品だけれど、卵とか肉とかチーズとかを摂取したほうがいいのでは……

そして今、暑い日差しのなかで私はあのときのニュースキャスターの言葉を免罪符のように脳内で繰り返している。仕方ない。体のためだ。食べるか……。そして、仕事で高速道路を使うたびにサービスエリアに寄り、嬉々としてソフトクリームを堪能している。

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員