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連載 けんかっ早いけど人が好き

けんかっ早いけど人が好き Vol.7

マスクとサングラス

私はおせっかいである。もっとも私の仕事は、野次馬根性と、それをまわりに伝えたくなるおせっかい心があってこそ成り立つので、おせっかい万歳という感じである。

自撮りしてみました。こんな感じ。やはり怪しい。

ただ、面倒くさいのはそのおせっかいが日常生活、特に人と接する機会が増える電車移動のときに発揮されることだ。たとえば、赤ちゃんを連れているお母さんがいたとする。赤ちゃんがぐずり、お母さんは周囲の人を気にして申し訳なさそうな顔であやしはじめる。私はすかさず笑顔を作りお母さんの方を見る。「気にすることないのよ、お母さん。赤ちゃんは泣くのが仕事ですからね」。笑顔にそうメッセージを込め、お母さんと目があうと、うんうんとうなずくことも忘れない。駅の階段でおばあさんが大きな荷物を持っているときも、たとえ逆方向であってもさっと荷物を持ち、いっしょに階段をゆっくり上がる。そして最後は、「気を付けてね」とにっこり笑う。

先日はこんなことがあった。車内で座席に座っていると、ふたつとなりの女性が駅でもないのにぱっと立ち上がり、怪訝そうな顔で窓を見つめている。見ると窓ガラスには、蜂が外に出ようともがいているではないか。彼女と私のあいだには若い男性が座っていた。男性も窓を振り向き、蜂を確認した。「そうだ、青年。窓を開け、その蜂を外に出してくれたまえ」。そう思うものの、男性はなにごともなかったかのように、スマホをいじり始めるではないか。おーい!

仕方ない。私はおもむろに立ち上がり女性のそばに行って窓を開けた。蜂は、すぐに外に出て行った。

「これで大丈夫ですよ」

私はそういう意味をこめて、女性に向かってうなずきながらにっこり笑う。彼女も「ありがとうございます」と言ってくれたのだが、どうも様子がおかしい。なにか怖いものを見るような目で私を見つめているのだ。なぜ? そこで私は気づいた。真夏のその日の私は、大ぶりのサングラスにマスク姿だったのである。これでは笑っても表情がわからないどころか、銀行強盗でもしそうな雰囲気ではないか。

夏は目を守るためにサングラス。でも今年の夏はコロナでマスクもつけている。笑顔のコミュニケーションができない、なんとも面倒な季節である。

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員