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連載 けんかっ早いけど人が好き

けんかっ早いけど人が好き Vol.8

ジャムの誘惑

甘い朝ごはんが好きだ。

現在、出番待ちの我が家のジャムたち。出張に行けないのでかなり少ない。

出張に行くと白いご飯に味噌汁、焼き魚という朝食が出るがどうも食べた気がしない。私にとっての朝ごはんは甘いパン。一気に血糖値を上げてフルパワーを出すためには、甘い朝食しかないのである(急激な血糖値の上昇は体によくないという話もある)。

なかでも私が愛してやまないのは、ジャムをべったり塗ったトーストである。これにスライスチーズをのせて甘辛にしたおいしさといったら。これにはまってからは、ジャムフェチになった。取材で海外に行くたびに、自由時間はスーパーマーケットのジャム売り場に一直線。日本では見たこともないジャムやスプレッドに小躍りして買いまくり、空港で預ける荷物に超過料金がかかりそうになって冷や冷やしたことが何度もある。海外は危険だ。

日本の危険地域は長野県である。長野は果物大国、ジャム大国なのだ。コロナの直前に長野を訪れたときのこと。しかも軽井沢から新幹線で帰る行程である。軽井沢は私にとって指定特別危険帯といっていい。なんたってジャムの専門店があちこちにあるのだ。初日から土産店に寄るたびに、自重しつつも、ついついあれもこれもと買いまくる。そして最後の軽井沢。吸い込まれがちな店内に入らないように足を踏ん張る。なんとか最小限でしのいだのだが、最後に軽井沢駅についたらはじけてしまった。

「もう、帰るだけだし」。

駅の売店で再びジャムを買えるだけ買い求め、車輪がついたキャリーバッグにつめこんだ。キャリーバッグは持ち上げられないほど重くなり、日本の駅のバリアフリー化がすばらしいと、このときほど実感したことはない。

さて、最寄り駅から家までキャリーバッグをごろごろとひいていくと、重いキャリーバッグはいつもよりころがりが悪く半ばひきずるような状態だ。家について荷を解き、ジャムをずらりと並べてにんまりと笑う。そのとき、ふとキャリーバッグの車輪が目に入った。よく見るとなんと車輪が割れているではないか! そんなに重かったのか、ジャム! 車輪の修理代は、2500円もかかった。とんだ出費である。しかたない、これからはリュックを持参しよう、って、結局買うのか、私。

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員