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けんかっ早いけど人が好き Vol.11

中部横断自動車道

第一回のこのコラムでも書いたとおり、私は道を走ることが好きだ。

新東名高速道路。乗用車の制限速度が120キロで走りやすい。

だから新しい道ができるとわくわくしてしまう。そしてこの夏、私の好奇心を刺激したのが中部横断自動車道である。新東名高速道路の新清水JCT~中央自動車道の双葉JCTまで、総延長132キロメートル。8月2916時に全線開通と聞いてからは居ても立っても居られない。10月1日、東京都に発せられていたコロナによる緊急事態宣言がやっと解除。県境を越える移動は自粛せよと呼びかけられているけれど、ずっとクルマのなかなのだ。事故を起こさないよう細心の注意を払い、さあ、いざ!

中央自動車道を西へ進み、双葉JCTで中部横断自動車道へと入り南下する。見事なまでにまっすぐ南へと走る道はどう考えても縦断道だと思うのだが、なぜか名称は横断道だ、解せぬ(正直、どっちでもいいのだが)。走り始めると、左右に南アルプス市が広がっている。その先の右手には南アルプスの山々。後ろは秩父の山々。そして前方遠くには富士山が見える。なんという景色。すばらしい。山好きにはたまらない光景である。中部横断自動車道、ばんざい!と叫んだのも束の間、突然、トンネルの嵐がやってきた。トンネル、トンネル、またトンネル。トンネルを抜けたと思っても、わずかに谷間の景色が見えるだけでふたたびトンネルだ。

しかもずっと片側一車線の対面通行区間である。反対車線との間にあるのはポールのみ。こんなところで事故って対向車線にはみ出したら、あっという間に重大事故発生で大渋滞。センター部分にワイヤーロープを張れば対向車線に飛び出すことを防げるのだが、NEXCOがいうには、その後、張りなおすために通行止め期間が発生するという。どちらがいいのかと問われれば、そりゃ命でしょうと観光で通る私などは思うのだが、日々使う運転手の方々は、多少のリスクは受け入れてでも工事による通行止めは避けたいという声が多いようだ。

中部横断自動車道のルートは東京在住者には使う理由があまりない。しかもトンネルだらけで面白味もない。しかし、なぜだろう。今度は南から北へ向かって走ってみようと次の計画を練っている。新しい道は理由もなく、やっぱり私を引き付けるのである。

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員