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けんかっ早いけど人が好き Vol.14

冬とYシャツと私

先日、国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催された。

我が家のアイロンは30年近く使っている年代物

二酸化炭素の削減目標が議論されるとにぎやかになるのが、電気自動車の話題である。電気自動車になれば車両は二酸化炭素を排出しない。ただ、走る時の電気はどうやって作るのかという問題がある。ウェル・トゥ・ホイール(井戸からタイヤ)という言葉があるが、石炭や石油など、掘り起こした化石燃料を燃やして発電させていては二酸化炭素の排出量は、減らない。電気自動車もクリーンとは言えないのだ。

二酸化炭素問題が盛り上がるたびに、自動車に対する圧力が強くなると感じるのは私だけだろうか。排ガス規制やら燃費向上やら、自動車はなんでも出てくる打ち出の小槌じゃないぞと思ってしまう。

ほかの分野でも、もっと厳しく制限をかけるべきなのではないか。いや、そもそも人の行動そのものが二酸化炭素を排出するのだから、行動を律したほうがいいのでは。考え始めると、じゃあ、風呂は一週間に一度にしようとか、野菜は生のまま食べようとか、パスタは早くゆであがる細麺にしようとか、わけわからない方向に思考が行ってしまう。しかし、人間が文化的生活を続ける以上、二酸化炭素は出さざるを得ないのである。

では、その中で、自分なりに何ができるのか。私がひとつ、実践していることがある。ワイシャツのアイロンかけだ。今は形状記憶シャツもあるけれど、やはりどこかくしゃっとしている。文化的生活を送るなかで、びしっとしたワイシャツを着たい私にとっては物足りないのである。したがって形状記憶シャツであってもアイロンはかけるのだが、冬に向かうこの時期、私はアイロンのかけかたを変えている。襟、袖口、そして前身ごろにのみかけるのだ。

アイロンかけは面倒くさい。背中部分をかけているときは、虚しささえ感じる。誰が見るのよ、こんなところ。特に、秋が深まると一度着たジャケットを脱ぐ機会はない。そしてひらめいた。背中や袖はかけなくてもいいのではないか? これは手抜きではない。二酸化炭素排出量削減のためである。地球のために、できることをコツコツと。もうすぐジャケットの下にセーターを着る季節がくる。前身ごろもかけなくてよくなる日は近い。

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員