日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

連載

連載

けんかっ早いけど人が好き Vol.16

今年の目標

季節ごと行事は大事だと思う。年々、すさまじい勢いで過ぎてしまう一年を、ほんの少し立ち止まって感じることで、自分を見つめなおせるからだ。一月は正月。二月は節分。三月は桃の節句とお彼岸で、四月は花見。満開の桜を見るたびに、日本に住んでいてよかったと心の底から思う。そして五月は端午の節句である。

デパ地下で調達して楽をする我が家の正月(コロナ前)

おせち、福豆、桜餅(道明寺が好き)、ぼたもち、花見団子、柏餅。しかし、6月からぱったりと季節の行事に無関心になるのは、仕事のあわただしさのせいなのか私が飽きっぽいせいなのか、はたまた6月の和菓子が思いつかないせいなのか?(水無月という三角の和菓子があるそうです)

新年になって最初の行事は正月である。コロナ前、我が家は毎年、私の両親のもとに親戚一同が集まり、おとそ、おせち、初詣をしたあと、書初めを行っていた。文筆業ゆえにこの書初めは毎年、心してとりくんでいるのだが、我が家の書初めにはひとつルールがある。新しい年の自分の目標を、四字熟語で表現するのだ。

高齢になった父は、一日三食。肉食系の姉は、焼肉定食と、目標なのか希望なのか、欲なのかわからない文字が並ぶのも初笑いで楽しい。私はといえば、好球必打、先手必勝、全力疾走といった気合十分な言葉を用意する。一冊入魂(一冊の書籍に魂こめるぞ)とか、全開上等(バイク乗りだったので。やる気のアクセルは常に全開)といったものもあった。

そう。これまでは、今年もやってやるぞという強い思いがすぐに浮かび言葉が出てきた。ところがだ。今年は正月に親戚一同が集まることはできないものの、一年の目標となる言葉はなににするかと考えてみた。すると、笑門来福だの、健康第一だのといったなんとも温厚な言葉しか出てこない。そのまま悶々と考えていると、晴耕雨読だの、漁夫之利だの、あらぬ方向に思考が及んでしまう。大丈夫か。ひょっとして弱っているのか、私?

こんなことではいけない。一年の計は元旦にありだ。選んだ言葉がそのまま一年の流れになるとは思わないが、言葉は言魂。言葉にすれば意味を持ち未来は変わるのである。そして選んだのは、完全燃焼。不完全燃焼だと有毒物質も出ることだし。この一年も後悔しないよう全力で突っ走ろうと思っている。

2022110日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員