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けんかっ早いけど人が好き Vol.25

飛び石

うわ!
次の瞬間、ビシッという鈍い音がした。高速道路を走行中に石がふってきたのである。先ほどまできれいだったフロントガラスには、星型に亀裂が入っている。ガラスが私を守ってくれたと安堵したと同時に、車線変更をしておけば、あと数秒でも遅く通過していたらと、頭の中は後悔でぐるぐるである。

かなり大きい飛び石の傷。心の傷も大きい

いや、ちょっと待て。飛び石の原因はなんなのだ? 場所はちょうどトンネルに入るところ。そして石は上からふってきたのだ。トンネルの入り口から落ちてきたと考えるのが妥当だろう。ということは、道路の管理になにかしら問題があったのではないか。修理代、払ってくれるのかしら?

しかし立証するのはむずかしい。どう考えたって無理だ。けれど、もし、本当にトンネル周辺に原因があったのだとしたら、再発防止はしてほしい。一応、伝えてみるかとお客様センターに電話をかけてみた。

「本当にトンネルから石が降ってきたんですか。証拠は?

そんなふうにあしらわれるのではないかとびくついていたものの、電話口に出たオペレータはとても親切で、親身になって話を聞いてくれる。そして必要な情報を私から聞き取ると担当部署と調整してくれた。結果は「対応できない、ごめんなさい」だった。まあ、そうだろう。もしかしたら鳥が落としたのかもしれないし。ただ、オペレータの対応は傷ついたフロントガラス同様、傷ついた私の心を癒すには十分の温かいものだった。ありがとうHさん。

さて、どうするか。時は黄金週間直前。ディーラーも修理対応ができないという。このまま走るわけにもいかないので、ネットで検索して出張ガラスリペアをお願いすることにした。来てくれたのはこれまた元気なお兄ちゃんで、笑顔でさくさく作業を進めてくれる。その手際のよさは目を見張るほどで、フロントガラスは、傷ついたのどこ? と、目を凝らすほどの仕上がりだった。すばらしい。

飛び石は悲しかったけれど、こういうプロの仕事を見られるきっかけになったと思えば悪くない。いや、逆に、いいものを見せてもらったと清々しい気分にすらなっている。高額な修理代は……整備業界の経済をまわす応援代だ。がんばれ日本、がんばれ私である。

(2022年5月25日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員