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けんかっ早いけど人が好き Vol.26

黄金の傘

雨の季節がやってきた。6月は子どもの事故が多発する。遅くなっても外が明るくて遊ぶ時間が長くなるからとか、小学生は新しいクラスに慣れてきたから(特に小学一年生)と言われているけれど、きっと雨のせいもあるのだと思う。

現在、愛用している傘。ほんとはもっと光るタイプを使いたい。

雨の日は運転中、歩行者を見つけにくい。それを知る子どもたちも防衛策をとり、黄色い帽子をかぶり、ランドセルには黄色いカバーをつけて目立つ工夫をしている。この黄色セットは小柄な一年生だけの小学校もあるようだが、ぜひ、六年生まで義務化してほしいと本気で思う。さらに、最近よく見かけるのは、布地の一部分に透明ビニールの窓がついている子ども用の傘だ。風の強い日に傘を傾けてもちゃんと前が見えるようになっているのである。

子どもたちはこんなに律儀に取り組んでいるというのに、対局にあるのは大人たち、特に男性である。黒い髪、黒いコート、黒いカバンに黒い傘(最近は黒いマスクも)で、歌舞伎の黒子かと突っ込みたくなる姿なのである。交通事故を起こさないためにはクルマ側が配慮すべきことは重々承知しているが、黒づくめの忍者状態の男性を見るたびに、クルマが突っ込んでも忍者のようによけてくれるんでしょうねと、嫌味のひとつも言いたくなるのである。

さて、そんな私はどうしているかというと黄金の傘を愛用している。もちろん骨が純金でできているわけではない(当たり前だ)。布の部分が金色に近いものを使っているのである。これはかなり目立つ。ただ、夜の輝きが今ひとつのため傘メーカーには反射板をつけた傘を販売していただきたいと切に願っている。

色は大事だ。生死を分ける。登山の師匠からは「雪山では、赤や青のジャケットでは雪から顔を出す岩肌と見間違われてしまう。黄色かオレンジが発見されやすい」と耳にタコができるほど教え込まれた。また、消防航空隊の隊長からは「紅葉の季節はピンクが一番発見しやすい」と言われ、以来、秋の山歩きはピンクのバンダナを必ずリュックに入れている。

黄金の傘。かなり派手だが命には代えられない。目立つことは大事なのだ。しかし、悪目立ちするこの性格は、少し控えたほうがいいのかもしれないと自重する昨今である。

(2022年6月10日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員