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けんかっ早いけど人が好き Vol.29

読書と睡眠

暑いと、なかなか寝付けない。眠りそのものも浅い感じがする。暑いときは夜もエアコンを適切に使えというのでオンにしたままふとんに入るけれど、モーターや風の音が結構、耳に障る。ついでに風が体にあたるのもいやなのだ。そう、こう見えて私は繊細なのである。

新刊出ました。睡眠導入としてお使いくださいませ。

30代のころは、ふとんに入ってから一時間は寝つけなかった。右を向き左を向きとなんども繰り返し、延々と眠りにつけないことが当たり前になっていた。ホットミルクを飲んだり風呂のお湯の温度を低めにしたりと、当時の不眠対策を片っ端から試したけれど効果はない。ヒツジを数えて千匹めを超えたときには、脳内がヒツジだらけになり恐ろしくなってやめた。

何も考えずリラックスするという考え方が一般に知られるようになってからは、それもやってみた。息を吸って~吐いて~と自分の呼吸だけに集中するとか、息を吐ききって8秒数え交感神経と副交感神経をうんちゃらとか。いろいろトライしたなかで私に向いていると思ったのは、米軍式睡眠法である。戦場にいる爆撃機のパイロットでも2分で眠りにつけるという触れ込みのものだ。腕や脚など体の各部から順番に力を抜いていき、最後は、湖に浮かぶボートに仰向けで寝ている図を想像せよ(ほかにもいろんなイメージ図があり選択できる)というものだ。湖面でゆられるボート。さわやかな風と緑の木々。するといつの間にか眠れるのである。これはいい! そう思ったものの、最近、物忘れが激しい私は、米軍式睡眠法をやるということ自体を忘れてしまい、悶々とふとんの上を転がり続ける有様である。情けない。

しかし、さらにいい睡眠方法を見つけた。それは、読書。これまで本は、移動中の電車のなかや、待ち時間などを活用していたのだが、ある日、寝る前にふとんの上で読んでみた。するとどうだろう。読みだして少したつと、部屋の電気を消すのも面倒なくらいに眠くなり、本を閉じたと同時に爆睡である。眠り自体も深い。すばらしい。

本は友だち。こんなところでも友だちとして寄り添ってくれるとは。あとは、物忘れのひどい私が、「寝る前に本を読む」ということを、忘れずにいられるかどうかだけである。

(2022年7月25日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員