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リンナイ創業100周年インタビュー

つないだ情熱を次の100年へ〜内藤 弘康 社長インタビュー

コンロや給湯器、ファンヒーターなどのガス機器ほか、食器洗い乾燥機やレンジフードなどのキッチン周り製品など多様な製品を提供するリンナイ。同社は今年、創業100周年を迎えた。これまで歩んできた100年について、そしてこれからの100年に向けての意気込みを内藤弘康社長に聞いた。

リンナイ株式会社 内藤 弘康 社長:1955年、兵庫県姫路市に生まれ、横浜で育つ。1983年リンナイに入社。営業、開発、経営企画を経て、2005年、社長に就任。現在に至る。2013年より名古屋商工会議所副会頭も務める。

— 今年9月1日に創業100周年を迎えられたとのこと、おめでとうございます。

内藤社長:当社の歴史は、1920年に内藤秀次郎と林兼吉の二人で「林内商会」を創業したのが始まりです。もともと2人は名古屋ガス(現東邦ガス)に勤めていたのですが、名古屋市内の今川焼き屋で外国製の加圧式石油ガスコンロの青色の炎の美しさに心を奪われ、見よう見まねで石油ガスコンロを完成させました。そしてガスコンロ、ガスレンジなどのガス機器を全国のガス会社へ販売し、社員500人規模の会社に成長していきました。

しかし、戦時中は軍の監督工場となり、航空機部品を製作する「林内航空機製作所」に改称しました。その時の看板もまだ残っています。戦争が終わると社員は50人程度まで減ってしまったそうです。


— 戦後は50人からの再スタートとなったわけですね。

当社にとって大きな転機となったのは、1950年代に当時、副社長だった内藤明人が、ヨーロッパ視察でドイツのシュバンク博士に出会ったことです。シュバンク博士のバーナー技術を用いれば、当時、日本で主流だったスケルトン式ストーブの課題を解決できると考え、特許契約を結びました。シュバンク社から提示された特許料は約2億円。当時の年商が6億円ほどだったと言いますから、なかなか思い切った決断だったと思います。

そして1957年に発売した日本初の「シュバンク式ガス赤外線ストーブ」は大ヒット。10年で返済する予定だった特許料を2年で返済できたそうです。その後もシュバンクバーナーの技術をグリルに応用した「コンロ兼用グリル付ガステーブルコンロ」やガス高速レンジ「コンベック」など、日本初の技術を用いた製品やその時代の暮らしに合った製品を開発してきたのが当社の強みです。

— 海外展開にも精力的に取り組まれている印象です。

海外に日本の製品をそのまま持っていっても売れません。その国の暮らしに合わせ、その国の文化を取り入れなければ受け入れられません。そこで物理的距離も近く、文化も比較的似ている台湾を海外の初進出先に選びました。今では18の国と地域の20カ所に現地法人を構え、80カ国に輸出しており、全体の約50%が海外の売上です。嬉しいことに韓国ではガスコンロをリンナイと呼ぶ人がいるほど、ブランドが根付いています。

海外事業は、現地社会に貢献することも重要な使命であると考えています。現地生産にこだわり、その国での利益はその国で再投資するようにしています。

— 昨年、グローバルブランドのさらなる確立に向けて、ロゴを一新されました。

前のロゴは特に正式に決めたわけではなかったのです。海外の現地法人がローマ字表記で使用していたものを「これいいじゃん」と、いつからか使うようになったという・・・。現在、当社では企業価値向上を目指したブランディングを推進しています。その一環としてロゴを刷新しました。

— 前ロゴは現地法人からの逆輸入だったのですね。

ヨーロッパやアメリカをはじめ、海外はブランディングが上手。製品のコンセプトやブランドイメージを明確に訴求し、適正価格で販売する能力に長けています。

イタリア現地法人の展示会のブースは、見せ方が素晴らしく圧巻でした。ただ製品でブースを埋め尽くせばよいという考え方を改めるよう、帰国後すぐに日本の社員に指示しました。しかし、本社が子会社を見習っているというのは格好が付かないので、イタリアには内緒の話です(笑)。

熱と暮らし、健康と暮らしをキーワードに

— 高付加価値、高級価格帯の製品開発にも注力されています。

4月に発売した「マイクロバブルバスユニット」の開発のコンセプトは「驚きと感動」です。マイクロバブルの数は従来品比約2倍で、泡が一瞬で浴槽中に広がり、見ているだけで驚きを与えることができると思っています。その泡が身体を包み込み、ぽかぽかとした温まりが持続するほか、微小な泡が皮膚表面の汚れをやさしく落とす効果もあります。

入浴という慣れ親しんだ習慣に驚きと感動を与え、より上質な暮らしを提供する。これが当社のブランドプロミスである「健全で心地よい暮らし方を創造します」の体現につながると考えています。

— 周年スローガンである「つないだ情熱を次の100年へ。」に込めた思いをお聞かせください。

今後も「熱と暮らし」「健康と暮らし」をキーワードに、人々の暮らしを豊かにする製品・サービスを提供していきます。熱に関しては地球温暖化の観点から今後はさらに国の規制が厳しくなることが予想されます。ガスと電気のハイブリッド給湯・暖房システム「エコワン」のような環境対応型の製品が今後一層求められるようになると考えています。加えて高齢化社会を迎えるにあたり、健康への関心もより高まっていくことでしょう。

これまでの歴史を築いてきた先輩諸氏の情熱とチャレンジ精神を継承していきます。私はこれまで固い経営をしてきたところがありますが、今後社員には「これどうかな?」と思うようなことでも、どんどん挑戦してみてほしいです。