日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

Voice

機上測定の需要「将来5~10倍もあり得ます」

ブルーム−ノボテスト 代表取締役 山田 亨 氏

金属加工の効率を前後工程含め全体で高めようとの動きが加速するなか、キーデバイスとなる「機上測定システム」が年々注目度を増している。その世界的プレーヤーであるブルーム-ノボテスト(独)の日本法人・山田亨社長は、機上測定の用途の広がりを「将来的な市場可能性」と絡め、熱く語った。

――機上測定は当初、加工が正確かどうかを工作機械のテーブル上で手際よく知るために普及しだしたものと認識します。国内の歴史はまだ20年ほどですね。

「はい。ブルームの日本法人である当社の設立が1999年。この当時は機上測定という言葉さえありませんでした。日本では2000年を越えしばらくして、精度を上げるためのツールとして利用されだしました」

――当初は測っては削る、いわゆる追い込み加工で使われたと記憶します。

「主に精度が必要な金型加工で、切削工具やワークを機上で測って加工を正確に仕上げるという目的で使われていました。ところが私どもの本社があるドイツ市場では、精度を出すという目的と同等かそれ以上に、生産性や歩留まりの向上を狙って使うケースが当時も多かったですね」

――日本でも、その後は徐々に用途や目的が変化・多様化していったようです。

「今もマジョリティは精度を安定して出す為に使われていて、私どもも、その目的に高レベルで応えられるよう努めています。ですが精度だけでなく生産性の向上、さらに機上測定の結果データを分析し、工程改善につなげるといった用途が、国内でもどんどん増えています」

――山田社長は以前、金属加工と機上測定の関係が、クルマとカーナビの関係に酷似していると話されました。つまり、精度よく経路を提示し、運転効率を高めるカーナビがドライブにすっかり欠かせなくなったように・・・

「そう、カーナビのように、金属加工における機上測定もやがて不可欠になれば、いや絶対そうなると、強い期待を込めています(笑)」

――とすると、マーケットは将来的にもっと広がりそうですか?

「期待、あるいは夢として申し上げれば、個人的にポテンシャルとして今の市場規模の5倍、あるいは10倍への成長も可能と見ています」

BURU-MU.jpg

レーザーによる非接触測定で工具先端をチェック。精度維持だけでなく、歩留まり率向上などにも貢献

■非接触レーザー工具測定で世界シェア9割

「というのも、加工ラインから離れた測定ステーションへいったんワークを移動して測り、再び機械に戻し、再段取りを経て仕上げ加工等を行うこれまでのプロセスは非効率で改善要求が強い。だから機上測定の潜在成長力はまだ大きいという理屈です。機上で測定したいという基本的な要求に応えながら、さらにいろんな付加価値・付加機能をつけて市場を開拓しています」。

――非接触レーザー式の測定で圧倒的シェアを持つ優位性を生かした取り組みになりそうですね。

「非接触レーザータイプでは世界シェア9割に達します。おっしゃるようにここをアドバンテージとしながら、性能機能の向上に努めています。例えば、これまでは工具刃先のごく微小なクラックをNCONOFFスキップ信号に連動したレーザーで確認していたのですが、今は刃先形状を連続的に細かく見ていける方法に進化しています。加えて工具やワークの測定だけでなく、スピンドルの状態をモニタリングし、そのデータ分析を通じてメンテナンスを能動的に行えるようにするといった提案もあります。ほか補正機能も強化していますし、78年ほど前から提案を強めているデジログと呼ぶ独自技術もおかげさまで好評です。この技術だとアナログ信号をデジタル化し、無人測定まで行うことができます」

――足下の業績も好調ですが、今後さらに楽しみですね。ただ、熱、油、振動など測定に適さない苛酷環境下での「機上測定」ですから、信頼性をいかに保つかという問題は残りそうです。

「はい。わたしどもも機上測定だけですべて完結できるとは思っていません。三次元測定機などの機外測定の結果と、機上測定の結果の差異を分析して最適修正を行ったり、データから傾向値を探って精度の確かさにつなげるといった必要もあると思います。そういう意味では、測定機メーカーさんらとの『協力と棲み分け』の時代に入ってくるのでしょうね」


ドイツ製の健闘は、信じ切る力?

山田社長はアジアをカバーする組織の社長も兼任。日本やアジアでドイツ製機器がここ相対的に伸びていることを記者として踏まえ「やはりドイツ製が優れている?」 と聞くと、意外な答えが。 

「技術面もあるのでしょうが、自社商品への強い自信が成功要因の一つとみます。ドイツ本社に日本の顧客要望を伝えても、理解はしながらも我々の言う通りに使えばうまくいくから問題ないと感じているようです(笑)。信じ切る力がもの凄いですね。自信に満ちたプロダクトアウト戦略が今は奏功しているようです」、と山田社長評。

2022310日号掲載)