日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として創刊来、
半世紀を超す実績を持つ日本物流新聞のWEBサイトです。
サイト独自の情報を増やしています。

検索

Voice

社会課題を解決する企業に

オークマ 代表取締役社長 家城 淳 氏

脱炭素、少子高齢化、稼ぐ力の強化、技術承継など、モノづくり業界が抱える問題は山積している。解決策の一つとして産業用ロボットやデジタルデータ活用に対する需要が一層高まる。しかし、オークマの家城淳社長は今後の準備をしないと「自動化のわな」の危険性をはらむと指摘する。オークマのスマートファクトリーは自動化のみならず、現場の暗黙知と形式知の変換、自動化を使う人と作る人の共感による知恵の創出を大切にしているという。

-工作機械市場が回復に向かうなか、御社も第1四半期の連結受注高が前年同期比7割増(445億円)まで戻っています。

「コロナ禍で眠っていた受注案件が発出した側面があります。ペントアップ需要は、中国を皮切りに、米国、欧州、日本へと展開しています。これからは『超短納期』『超多品種少量生産』のご要望に応じるため、バラエティーに富んだ製品展開、カスタマイズも含めた柔軟な対応が一層求められます。こういった動きは、米中貿易摩擦で需要地が劇的に変わりつつある半導体に代表されるように、サプライチェーンが変革したことが影響を与えています」

-需要の変化は。

「アフターコロナを見据えて、劇的な生産革新を当社に要請されるケースが増えています。航空宇宙関連の引合いを受けた米国法人『Okuma America』の案件では、デジタル解析を基に生産システムを開発し、Webによるテストカットでお客様の想定を越える加工結果を出しました。デジタル解析で判断しながら、お客様とともに不確定要素を解消する。『モノはないけど、デジタルで確認する』取り組みで成果を出せているのは、当社が長年培ってきたノウハウとお客様とともに挑戦する姿勢を信じていただけたからだと確信しています。こうした対応は脱炭素社会においてこそ重要になります」

-ほかに動きは。

「感染拡大によって、これまで重要視されてこなかった『安心・安全』が新たな自動化需要を生み出しています。以前から『令和は自動化の時代』と申し上げてきたように、人口問題、少子高齢化に対しても自動化は非常に重要です。当社が開発した『ARMROID』はロボットの起点と終点を設定するだけで、衝突しない軌跡が自動生成できるため、ロボットに慣れていない方でも嬉々として使っていただいています。昼間は人、夜間はロボットと、使い分けることで、ライン全体の生産性向上にもつながっているケースも珍しくありません。搭載している衝突回避機能『アンチクラッシュシステム』も大きな安心感につながっています」

9月下旬までオンラインで「ARMROID展」を開催しています。

「いつでも、どこでも、誰でも、じっくり見られるのがオンラインの強みです。とくにWebセミナーは、チャット機能による11のやり取りを通じて、製品やサービスに対する共感をいただいています。個々のつながりを深めるという点でも、オンラインのポテンシャルは十分あります」

-リアルな展示会も増えてきました。

JIMTOFのような国際見本市は、出展者にとっても、お客様にとっても晴れの舞台です。リアルのJIMTOFを毎回楽しみにしているお客様と会場でお会いして、『せっかくだからこれ買うよ』とおっしゃっていただけるのもJIMTOFならではですね。コロナ禍を通してやはりリアルな展示会は共感や創造の場として大切な舞台であると改めて感じています」

■スマートファクトリー構築へ

-昨年7月、社内組織として「ものづくりDXセンター」を新設しました。

「顧客接点でのデジタル活用の開拓を目的とした組織です。当社のスマートファクトリー『ドリームサイト』でIoTや自動化などを通じたコトづくりで成果を出してきたメンバーが、Webによるテストカット、バーチャルショールームの仕組みを構築しています」

-家城社長にとって「ものづくりDX」とは。

「『スマートファクトリーの構築』の一言に尽きます。しかし、IoT、ロボット、AIの導入が進むことで、考えない人が増えれば、せっかくスマートファクトリーを構築しても退化してしまいます。これが『自動化のわな』なのです。なぜモノが作れるのか、その本質的な理由が分かる人が抜ければ、情報が抜け落ちて、次の工場がつくれなくなります。知恵の源泉は現場にあります。カイゼンのノウハウを蓄積し、創造性を育てることが大切です」

-「自動化のわな」に陥らないために、どういった提案を展開していますか。

「スマートファクトリーの構築にあたって『4M』(人=Man・材料=Material・機械=Machine・方法=Method)のデータ収集と解析が基本になりますが、情報があるだけでは本質は理解できません。暗黙知と形式知である情報を共有し、知の交換により理解を深める場、議論する場を創ることが大切です。当社としては稼働率向上に向けたIoT活用の支援システム『Connect Plan』の提案とともに、モノづくりの共創活動も含めて、形式知と暗黙知の交換の場をセッティングしなければならないと考えています」

-当面の目標は。

2030年に向けて、製造業における『社会課題を解決する企業』を目指します。これまで多種多様な業種に向き合ってきた当社の技術蓄積と革新技術の開発を基盤にして、強靭なモノづくり、持続可能なモノづくりを提供し、脱炭素をはじめとした社会課題の解決に力を注いでいきます。あらゆる産業に関わっている工作機械メーカーが果たすべき役割は大きいです」