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強みの製品力活かし日本の売上倍増へ

イグス 代表取締役社長 吉田 剛 氏

工作機械やロボットなどの可動部に用いられる「モーションプラスチック」を手掛けるイグス。年間160超もの新製品を世に送り出す圧倒的な開発力で、日本市場におけるシェアを拡大している。さらなる拡販に向けどういった戦略をとるのか。昨年10月に就任した吉田剛代表取締役社長に話を聞いた。

――足元の景況感は。

2020年は感染症の影響を受けましたが、その反動もあって21年は受注・売上げともに好調。受注額も過去最高を達成しました。我々の製品のメインユーザーは工作機械やロボット、半導体製造装置などですが、いずれも堅調に推移しています。中でも半導体業界からはケーブル保護管の静音性を高く評価いただいており、受注が急速に伸長しました」

――工作機械向けにはどのような製品が伸びていますか。

「我々の製品は大別するとケーブル保護管、ケーブル、ドライテック(軸受やリニアガイド等)の3種類。このうち工作機械向けにはケーブル保護管が伸びており、既に市場でもかなり高いシェアを獲得しています。そうした既存ユーザーに対してケーブルを提案し、保護管との同時採用を目指すのが工作機械分野における戦略です。我々のケーブルは他社製と同様の性能を担保しつつ、径をかなり細くできます。これによりケーブル保護管も細くできるため、設計自由度が向上するなどメリットが大きい。またケーブル保護管の新製品『E4Q』は工具を使わず手で開閉できる画期的な製品。従来品と比べ取付時間を約40%削減でき、こうした新製品の拡販を通じさらなるシェアの拡大を図ります」

――ロボット向けの拡販戦略はいかがでしょう。

「ロボットは工作機械と比べ三次元的な動きが多く、ケーブルや保護管にもねじれへの耐性が求められます。しかしケーブルに関して言えば我々は可動ケーブルに特化して製造を行っているスペシャリストであり、そうしたねじれに強いケーブルや保護管のラインナップは他社の追随を許さない圧倒的な幅広さです。工作機械向けと比べ認知度に課題はありますが、逆に言えばポテンシャルも非常に大きい。展示会やWEBマーケティングで認知度を上げていけば、シェア拡大に直結すると考えています」

■工場の拡張も視野

――昨年10月に社長に就任されました。就任にあたっての目標などは。

「できるだけ早期に日本法人の売上高を現状の2倍にすることを目指します。日本ではケーブル保護管が先行していますが、他国ではケーブルやドライテック事業もケーブル保護管に劣らない事業規模。そうした意味でもケーブルやドライテックの伸び代は大きいと見ており、ケーブル保護管とのクロスセールで拡販に努めます。また現状は栃木工場で在庫や組立を行っていますが、2倍の売上げを目指すとなると現状のキャパシティでは対応できません。工場の大幅な拡張も視野に入れた計画的な投資を行う必要があり、既に具体的な検討も開始しています」

――ケーブルやドライテック製品以外に、価格競争力の高い多関節ロボットなどの「ローコストオートメーション」分野にも注力されている印象です。この分野の拡販戦略は。

「ローコストオートメーションは我々にとっても新しい製品分野ですが、日本にはロボットメーカーも多く競争が激しい。そのためまずは競争力が高い製品に注力して拡販したいと考えています。そうした有力製品の1例として挙げられるのが、いわゆる『セブンス・リニアアクチュエータ』。6軸の多関節ロボットに後付けすることでロボットの水平・垂直スライドが可能になり、ロボットの7軸目として機能する製品です。特長はユニバーサルロボットの協働ロボットやエプソン製のスカラロボットと互換性があり、プラグインプレイで簡単に組み込めるという点。無潤滑ポリマー技術の採用で汚れや水滴、粉塵への耐性も高く、ロボットの可動範囲を簡単かつ飛躍的に増やせる非常に面白い製品です。今年に入ってローコストオートメーションの専任担当も採用予定で、これから本格的な拡販に取り組みます」

――社長就任後、肌で感じる貴社の強みはどういった点でしょうか。

「就任後に1月半ほどドイツ本社に駐在したのですが、そこで強く感じたのはイグス最大の強みは製品力だということ。膨大なテストを繰り返すことで品質を担保しつつ、ユーザーニーズをもとに年間160超の新製品をアジャイル開発で世に出すというスピード感が強みです。テストで収集したデータはデータベース化されており、製品ごとに様々な条件別に寿命予測ができる点も優位的。過酷な環境下でも製品性能を発揮できる一方、無潤滑で静粛性が高いためクリーンルームにも最適です。こうした既存の枠組みに囚われない数多くの独自技術を、これからも製品を通じ大きな付加価値としてユーザーに提供していきます」

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ケーブル保護管の新製品「E4Q』。工具を使わず手で開閉でき、従来品と比べ取付時間を約40%削減する

2022310日号掲載)