日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

Voice

アクセルラボ セールス・マーケティンググループ グループダイレクター 高橋 貢 氏

家のスマート化で暮らしを次のステージに

目が覚めると自動で開かれたカーテンから日の光が差し込み、空調で調整された快適な温度・湿度の空間が気持ちの良い朝を演出する。照明もTVもその他の機器も、自分が「使いたい」と思ったときにはすでに自動で稼働済みだ。様々な住宅設備が、そこに暮らす人の意思をそっと先回りしてくれる家――そんな未来の住まいは案外、すでに実現の手前まで来ているのかもしれない。

目指すは操作不要のNo UI住宅

そんな思いを記者が抱いたのは、スマートホームサービス「SpaceCore」を展開するアクセルラボを取材したからだ。都内を中心としたマンション開発・管理を手掛けるインアヴァンスが、扱う物件の価値向上のためにスマートホームサービスを始めたのは2016年のこと。17年にはアクセルラボとして分社化され、賃貸住宅を中心に戸建ても含めた累計18000戸をスマート化してきた。

SpaceCoreはスマホアプリを通して操作を行う形が基本形だ。連携できるのは照明やドア・窓センサー、屋内カメラなど20種類以上のデバイス。こうした単体で動く機器類に加え、様々な家電を赤外線信号で制御できる「SPOT mini」といった各種コントローラへの接続も可能で、その先につながる機器を含めると実に様々なものをスマホ1つで動かせるようになる。さらに給湯器や床暖房など住宅設備との連携も行っており、最近では戸建て向けにHEMS(Home Energy Management System)との接続サービスも始めた。これらは操作できる機器の一例に過ぎないが、スマホ1台でここまで幅広い住宅機器を連携・操作できると思うと、何だか夢が膨らんでこないだろうか。

「以前は賃貸向けの需要が主でしたが、コロナ禍で在宅時間が増えるにつれ、生活の質を上げる手段として分譲マンションや戸建て向けの需要が増加しました」。そう話すのはセールス・マーケティンググループ グループダイレクターの高橋貢氏。こうした需要の変化に合わせ、同社も非集合住宅向けの機能を強化したそうで「例えばHEMSとの接続が可能になったことで、太陽光発電設備やエネファーム、蓄電池、EV充電器などの状況をスマホで見られるようになりました。月数回というペースで機能のアップデートを繰り返しており、メーカーやプロトコルを気にせず様々な機器を接続できる環境が実現できつつあります」と手応えを語る。

スマート化の最大のメリットは

ところで漠然と「とにかく便利」というイメージのあるスマートホームだが、その実際のメリットをアクセルラボ自身はどう捉えているのか。高橋氏に尋ねてみたところ、「生活者のフェイズに合わせ、柔軟に家の設備・機器をコントロールできること」との答えが返ってきた。

「例えば小さい子供がいる世帯だとして、通常の電気スイッチの場合は手が届かず子供は操作できない。しかしこれをスマート化させ、様々な機器の操作を割り当てられる『クリッカー』というスイッチを子供の手の届く範囲に両面テープで貼付ければ、子供自身で照明を操作できます。これはあくまで例ですが、要はわざわざ家をリフォームせずとも、生活スタイルや暮らしのフェイズに合わせて柔軟かつ簡単に家の設備をコントロールできる。これがスマート化の最大のメリットではないでしょうか」(高橋氏)

機能拡充を続けるアクセルラボ。「暮らしを次のステージにアップデートする」ことを重視するが、賃貸以外の住宅向けに目指す地点があるという。「最終的には生活における、『スイッチを押す』『リモコンを使う』といった動作をすべてなくしたい。日常の行動をデータ分析で機器の動作に落とし込み、設備が人を先回りして動く『No UI』の世界感を実現したいですね」(高橋氏)。スマートライフの理想形ともいえる「家の自動運転」。その実現に期待がかかる。

2022625日号掲載)