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識者の目

2021年の最重要ニュースは何か?

ワクチン、日米政権、そして株価3万円

2021年の経済を動かす大きなニュースは何だろうか。まずはワクチン接種だ。感染収束に成功すれば、その後の東京五輪が感染収束を海外にアピールする効果が見込める。それを前提にすれば、菅首相は任期延長を果たし、コロナ後の新しい成長戦略を追加することも考えられる。逆に、感染収束ができないと、楽観的要因を織り込んだ株価にも悪影響を与えるだろう。

新しい年のテーマを考える

新年2021年は、どんなニュースが日本経済を動かすのだろうか。最初から言うのは矛盾しているかもしれないが、毎年突発的に起こる事件が、事後的に重大ニュースになることが多い。事前のニュース予想は、外れることが多いのが実情だが、事前の心構えを持っておいた方が、予期せぬ事態に遭遇したときにでも、慌てずに済む。予想を持ってない人にとっては大きな不確実性であっても、予想を描いている人には想定の範囲内になることも多い。

21年の経済を動かしそうな大事件を5つ挙げると、次の通りだ(図表1)。早ければ2月下旬から医療関係者の間で接種が始まり、その効果への期待は大きい。ワクチン接種こそが、日本経済にとって最大の経済対策であると筆者は理解している。反面、英国から感染拡大しているコロナ変異種の動向も気になる。この変異種へのワクチン効果には不透明な部分がまだ大きい。

日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査では、21年度の実質GDP予測は前年比3.42%であるが、ワクチン効果が早期に発揮されれば、その成長率は上方修正されるだろう。接種が20217月の東京五輪の手前までに広く実施されるとなると、五輪後の年後半の経済回復がより上向くと予想される。

二番目の東京五輪は、開催されても、その規模は小さくなると思われている。さりとて、実際に五輪開催になれば、日本経済が五輪までに回復したというアピールを全世界に発信できる点で効果は大きい。微妙なのは、インバウンドの解禁ができるかどうかである。インバウンド政策は、菅首相の思い入れが強い政策でもある。五輪効果の柱は、日本を宣伝して、訪日客を増加させることだった。期せずして五輪は、コロナ感染を収束させる期限として、日本政府に強く意識され、ワクチン接種を急ぐ動機にもなっている。

この東京五輪効果には、不動産市場に対する影響もある。東京都では多数の開発案件が五輪後の国際観光都市化を念頭に置いて進められている。今回のコロナ感染で、その成長期待は下振れた訳だが、逆に五輪を期に再び観光都市として復活するチャンスを得たいという思惑もある。21年の景気シナリオには、ワクチン接種と五輪の成功の2つは、欠かすことのできない挽回要因になる。

内外の経済政策も変わる

21年のトップニュースになりそうな事柄の34位は経済政策に絡んだことだ。3位は、菅政権が9月末の任期を延長して、在任期間の長い政権になる見通しだ。実は、その前提も、ワクチン接種と五輪の成功が前提になる。10月までの衆議院選挙でも勝利して、長期政権に向けて踏み出すという予想だ。

現在、菅政権は、2050年のカーボンニュートラル、官民のデジタル化推進を2大成長戦略と位置付けている。衆議院選挙や総裁任期延長が近づけば、ほかにも新しい構想が加わる可能性がある。コロナ感染が収束していれば、観光立国構想、地方経済再生、東京国際都市構想など、新しいテーマを描きやすくなるだろう。国際化とテクノロジーが、菅首相が次に出してきそうなテーマを予想する鍵になると考えられる。

海外では、5位のバイデン政権の政策が挙げられる。米経済の成長加速のためにどのように財政出動を行っていくのだろうか。温室効果ガス対策として、日本の自動車電動化のようなプランが立案される可能性も高い。外交面では、米中関係の仕切直しが予想される。そこでは、制裁関税の引き下げのようなプラスもあれば、戦略的品目の輸出入制限のようなものもあり得る。貿易連携の枠組みを多国間交渉に切り替えていく方針が具体化されることも考えられる。米中いずれかのTPP参加表明、場合によっては両方の参加というサプライズがあるかもしれない。

バイデン外交の主要テーマには、北朝鮮外交の見直しもある。日本にとっては、これは韓国との関係改善の契機になる可能性もある。

株価の新局面

20年は、日経平均株価が大きく上下した年だった(図表2)。3月の安値から11月の急上昇まで、本当に予想外だったと言ってよい。筆者は多くの人から「株価はバブルではないか?」と言われた。それを否定する根拠はないが、株価はまだ上昇する可能性がある。ワクチン接種を始め、株価を押し上げる好材料があるからだ。企業収益の改善、米国の追加的財政出動、米中制裁関税の引き下げ、デジタル化構想の進捗、インバウンド再開などである。

現在の株価は、足元のコロナ感染の悪影響よりも、先々の経済正常化を過度に織り込んでいるため、仮に株価下落があるのならば、すでに織り込んだイベント予想が狂ったときである。例えば、コロナ変異種のリスクが都合の悪いものであることがわかってきたときは怖い。ワクチン接種が、PCR検査と同じように実務的に進みにくかったときは、株価は下押しされるだろう。万一、ワクチン接種が進まず、感染状況が悪化して、緊急事態宣言を発令することになれば、それが株価暴落の引き金になる。

21年の株価は、方向感は上向きだが、常に下落リスクを抱えて、見えている楽観材料を消化した後の年後半は不安定化するとみている。

隠れた要因に気を付ける

冒頭にも述べたが、突然に襲ってくる事件が、事後的に重大事件とされることが多い。隠れた要素として、(1)企業の合併・倒産、政治家の退陣などの出来事が与えるショック、(2)ワクチン接種など期待された効果が予想外に表れず、期待が萎むショック、(3)危機が起こった後に、DXやテレワークの普及、巣籠もり消費・ネット通販の拡大のように民間経済活動が危機に反応して前向きな対応をみせるケースーが挙げられる。

事前予想にある程度の幅を持って検討していると、事前に備えることができるだろう。年内に何度か点検しながら、イベント・リスクの蓋然性を確認することが大切だと言える。

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生 氏