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識者の目

コロナ禍後のニュー・ノーマルを共に考えよう-9

パンデミックが変える世界

今、世界の関心事は、いつアフターコロナが来るのかということである。

主要国でアフターコロナになっているのは中国だけだ。12月に入って英、米でワクチン接種が始まったが、欧米では20214月頃から再度のウィズコロナ(感染に留意しての経済活動再開)を経て、コロナ終息は224月頃まで待たねばならないと予測される。日本も同様で、224月頃までニュー・ノーマルを待たねばならないであろう。そこで、現時点でコロナ禍が引き起こしていることを検証し、ニュー・ノーマルで日本の製造業が取り組むべきことを示してみたい。

パンデミックが起こると、必ず社会は変化することを歴史は証明していると言われる。代表例が14世紀ヨーロッパでの黒死病(ペスト)の大流行である。人口の2/3近くが亡くなって労働力不足となり、ペスト収束後には農民が相対的に力をつけ、領主の権力失墜が封建社会の終焉を招いた。今回のパンデミック(コロナ禍)では人口の2/3が亡くなるようなことはなく、人口動態が影響するような社会体制の変化は起こらない。ただ、民主的な政権よりも中国のような独裁政権の方がパンデミックを制御できるとなると、民主的な国の体制に変化が起こるかもしれない。

日本の製造業の取り組みについて、注意を要するのは「パンデミックは社会を変化させる」ことをチャンスと見て、各国が推進したい戦略を打ち出してきていることである。中国は自国を「自動車強国」とするための電気自動車を、米国は自国の強みであるICT技術でリードするための自動運転技術を、EUは再生可能エネルギー開発での強みを活かそうとグリーン・リカバリー政策を、それぞれ加速させようとしている。日本政府もこれらに影響されて、脱炭素社会を目指すことや電動車へのシフトを推進するなど言い始めている。官製需要は、ユーザーニーズと合致していないことが多く、製造業としてはあくまでユーザーニーズに合った開発・生産を進めていかないと痛い目に会う。

日本の製造業を支える自動車産業は、もはや成長産業ではないとか、ガソリン車は無くなりEVシフトが本格的に進むとメディアは危機を煽るが、ガソリン車は無くならないし、日本にとって世界に勝負できる産業は、これからも自動車産業である。世界一の市場である中国の戦略によって、しばらくは電気自動車部品へのニーズは増える。しかし今回のパンデミックによる変化は、電気自動車よりも、それをしばらくのステップとして燃料電池自動車の普及拡大に向かうと考えている。水素エネルギー活用は日本の強みである。アフターコロナでの経営の立て直しには、まずガソリン車部品を対象とするのが正解で、将来的には燃料電池車を念頭に置いた戦略をお勧めしたい。

ものづくりにおいても、ICT活用によるデジタルトランスフォーメーションへの取り組み、そのセキュリティ対策への取り組みは必須となる。しかし、取り組むべき産業の選択はより重要で、他国との競合を考えながら決定していかねばならない。

オフィスまえかわ  代表 前川 佳徳
同志社大学大学院工学研究科および神学研究科終了。工学博士、神学修士。大阪府立産業技術総合研究所研究員、大阪産業大学デザイン工学部教授を経て、現在オフィス・まえかわ(ものづくり企業支援)代表。製造業のアジア(とくにタイ)展開支援を行っている。タイAlliance for Supporting Industries Association 顧問、日本・インドネシア経済協力事業協会顧問、日本キリスト教団伝道師などを兼務。専門はCG/CAE、デジタルものづくり。型技術協会元会長、現名誉会員、自動車メーカー・部品メーカーとのネットワークに強い。