日本物流新聞

介護者がステップバーを踏み込んで立位動作を補助する

製缶後にグラインダーで仕上げる

自社で作った二輪車や三輪車。 調達したエンジンを搭載しているのでちゃんと走る

製品づくりに役立てようと適正姿勢指導士、ストレッチトレーナーの資格を取得した津嶋義彦社長

柔軟な発想力で斬新な介護機器を製造

株式会社津島鉄工所/京都府城陽市

歩行器「たぁ〜くん」

見た目はいたってシンプルなつくりだが、これ1台で立位動作と歩行の補助ができる。世の中に立位動作を補助する機器は様々あるが、動力源を使った大がかりな吊り上げ装置などが付くのが一般的。「たぁ〜くん」は介護される人がなるべく自分の力を使って、負担の少ない形で自然な動きで立ち上りそのまま歩けるように工夫されている。
「自立しながら歩ける歩行器はほかにないと思う」
3年前に製品化した津島鉄工所(従業員35人、1969年設立)の津嶋義彦社長はそう言う。「異業種の我々だからできた製品と言える。介護業界にはてこの原理で立位するという発想がなかった」。介護施設など向けに年間数十台の販売だが、珍しさもあって展示会に出品すると多くの問合せがある。

【チンプンカンプンな異分野へ】
きっかけは2013年の8月、京都府からの製作提案だった。ところが示されたのは、2カ月後の10月には製品にして展示会で披露するという超タイトなスケジュール。マシニングセンタ(MC)やレーザー加工機、溶接機などを設備する同社は製缶・切削の複合加工を中心に精密板金もこなし、「思い描いたものをすぐに形にできる」のが強み。
そんな多品種・小ロット製造の経験から挑戦を決意した。だが、介護業界の製品を手がけたことはなく、「説明を聞いても言葉がわからずチンプンカンプン。いきなり『関節の屈曲動作』『内旋させて骨盤を入れて・・・』なんて言われても」と津嶋社長は当初の戸惑いを振り返る。
だが、対応力をウリにしてきただけあって、柔軟な発想力が奏功。世の中にない、バランスと安全性・安心感をもつ歩行器が完成した。 「楽しまないとモノづくりではない」。津嶋社長の信条だ。一度やってみれば技術がアップする。図面に従うだけでなく自分たちで考えてつくらなければ生き残れない、という意味を含んでいる。

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