日本物流新聞

基盤を葉脈に見立てた

基板アート「Healing Leaf」ペンダントやピアスとして好評だ

基板の複雑な回路をアートにする取り組みはユニーク

加藤木社長。奥さんと2人で創業、今は派遣社員含め6名に。

複雑な回路・基板設計を「アート」に生かす

有限会社ケイ・ピー・ディ/東京都葛飾区

「Healing Leaf(ヒーリング・リーフ)」

大手自動車の組立工から転じ、たまたま求人のあった基板設計会社に転職。20代半ばだった。総合電機メーカー100%子会社のその設計会社で「限られたスペースの基板上に、回路図通りに電子部品を実装する」仕事に集中した。「パズルを組み合わせるような仕事でした」と、その後、1999年に独立しプリント基板設計会社「ケイ・ピー・ディ」を設立した加藤木一明社長が述懐する。
当時、加藤木氏は「コンパクトな基板を作るには、上流の回路設計を見直す必要がある」との思いを募らせていた。しかし会社は「回路図の指示通りに基板を作ればいい」が基本姿勢。思い切ってその大手子会社を退職し、独立系の基板設計開発会社に移った。CADを使った回路・基板設計の仕事に没頭した。
「ところがその開発会社は転職して半年ほどで倒産してしまったんです。私の結婚式の翌日でした」。―何の因果か、結婚式と同時に会社が消えた。「もう笑うしかなかった」。

【広い視野で創意工夫】
親や親戚が猛反対するなか独立を選んだ。某大手のビデオデッキ(VHS)のメインボードを任されるなど、会社は程なく軌道に乗ったが「当時は毎月400時間ほど働いていた」というから驚き。その一方で東日本大震災時に部品ショートで顧客の製品開発がストップし、年間売上高が9割減になるなどの苦難も経験した。
「銅薄を4~10層に積層した基板に、端子を例えば0.4mm間隔で各層に実装する、そんな基板の設計最適化を、うんうん唸って考えます。1日や2日は寝ないこともありますよ」と笑う。今は30社ほどに顧客が増える一方、東京理科大学と共同開発を進めるなど事業は太さを増し安定感も出てきた。「業界に若い人が少ない。独立心のある青年を育てたい」と言う。

【基板アートにトライ】
回路設計→基板設計→モノを作る、までのトータルな仕事を担うようになって、オリジナル商品作りにも乗り出した。「プリント基板アート」がそう。代表作は「Healing Leaf」。基板面に現れる複雑な回路を葉脈に代え、数年前から木の葉のペンダントやピアスを販売。複雑な回路図を安らぎのデザインに変えた。「基板業界の関係者に密かに買ってもらっています(笑)」と、注文は細々ながら、その繊細なデザインが、間接的に本業の評価にもつながる。
「プリント基板の可能性を拡げ未来につなげます!!」―加藤木氏は名刺にそうメッセージを記している。

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