機械・工具などの生産財や、住宅設備機器などの消費財、環境問題に携わるビジネマンなら押さえておきたい基本用語を126語挙げた。新しい概念やこれからの動きに注目したい規格も盛り込んだ。


アディティブ・マニュファクチャリング 【Additive Manufacturing】

付加製造。3Dプリンターブームとともに広がった言葉で、これ までの切削加工が「引き算」的で無駄が多かったのに対し、「足し算」的な積層造形はロスが少なく、加工形状の制約も少ない。

インダストリー4.0【Industry 4.0】

ドイツが実現しようとしている第4次産業革命。通信ネットワークを介して工場内外のモノやサービスを連携させる。将来的には国内を1つの仮想工場に見立て資源の全体最適を実現する、いわばスマートグリッド(次世代送電網)の工場版。一方、米国ではネットの優位性を生かし、企業がもつ膨大なデータの蓄積とAI(人工知能)による処理でサービスを提供する「インダストリアル・インターネット」を複合企業GEなどが推進。製造業のサービス業化が進んでいる。

ガラパゴス現象【ガラパゴスげんしょう】

世界マーケットの要求と乖離し、固有に進化することを指す。主に日本の携帯電話市場(日本の携帯電話会社は通信網の敷設からサービスの提供、端末の仕様から販売まで一手に担い、世界市場と無縁の形で発達)を指す。固有生物が数多く存在する南米エクアドル沖のガラパゴス諸島に重ね合わせた。

協働ロボット【collaborative robot, co-robot, cobot】

従来の産業用ロボットと違い、安全柵を用いずに人との共同作業を前提としたロボット。多様な現場での自動化・省人化ニーズに対応する。これまで精度要求が高いため導入が難しかった研削盤にもAGVと組み合わせた協働ロボット活用の動きが見られる。

コネクテッド・インダストリーズ【Connected Industries】

2017年3月にドイツ情報通信見本市で、日本政府が提唱した概念。既存産業とデジタル技術の「つながり」を指し、機械、データ、技術、人、組織など、様々な分野の連携により、新たな付加価値の創出や、社会課題の解決がもたらされるように、官民が一体となった活動を目指すもの。「スマートものづくり」「バイオ×デジタル」「人工知能(AI)」などが挙げられる。

コネクテッドカー【Connected Car】

常時インターネットに接続し、自動運転や渋滞緩和を目指す自動車。IoTの一形態。個々のドライバーを取り巻く交通状況や各コーナーに最適なハンドリングといった情報をクラウド上に蓄積し、それらをドライバーに戻し安全で快適な運転に導く。米テスラモーターズや独BMWが先行する

コモディティ【Commodity】化

商品が価格低下を伴ってメーカーごとの個性を失うこと。企業収益の圧迫につながるため、多機能化などでこれを避けようとしても過剰性能となるか、他社製品が並列化するまでの時間稼ぎとなることが多い。

人口ボーナス【じんこうボーナス】

一国の人口構成で、総人口に占める生産年齢人口(15-64歳)が多く経済的に有利な状態。日本は1970年代から90年代前半にこの状態を迎えた。人口ボーナス期に入ったベトナムは今後30年この状態が続くとされる。反対に生産年齢人口の少ない状況を人口オーナスという。中国は「一人っ子政策」の影響で急速に高齢化が進みつつある。

ジョブショップ【Job Shop】

多品種少量注文に応じる受注生産工場。

新HMI【Human Machine Interface】

人による機械への入力や、機械の入力結果を人に示す機器のことを指すHMIから発展し、次世代の車づくりに貢献する先進技術を示す。モニターや操作リモコンなどをパッチパネル操作にして、凸凹の製品イメージをなくすメリットもある。

スマイルカーブ【Smiling curve】

電子産業などの付加価値構造を表す言葉。電子産業では製品開発~販売・サービスまでの事業プロセスにおいて、中間工程(組立・製造)の収益性が低下する一方、上流工程(研究・開発)と下流工程(流通・サービス)の収益性が高くなる傾向がある。これを横軸に事業プロセス、縦軸に付加価値として図示すると人が笑った際の口元のような曲線となることからこの名がついた。

ソサエティー5.0【Society 5.0】

日本政府が2016年1月に閣議決定した第5期科学技術基本計画の中で用いられた言葉。グローバル社会の大変革時代をリードしていくため、新たな発想や概念から創造する非連続的なイノベーションを生み出すために、研究開発を強化し新しい価値やサービスを次々と市場に送り出す「超スマート社会」を指す。

ソリッド【Solid】

切れ刃からシャンク部までが一体の切削工具を指す。刃先交換式に対して用いられる。なお3次元CADの分野では、「ソリッドモデル」(中身の詰まった立体モデル)、「サーフェイスモデル」(面のみで構成される中身のないモデル)と使われる。

タレット【Turret】

10個前後の切削工具を取りつける旋回刃物台。ATCよりもすばやく刃物を交換することができる。

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)【たんそせんいきょうかプラスチック】

鉄に比べ4分の1の重さで強度は10倍とされる。軽合金より価格が高く、限界を超える応力が加わると直ちに破断しやすい(粘りがない)短所も。70年代から釣りざおやスポーツ用品などに使われ始め、軽量化による燃費向上が図れるため00年代前半からは航空機や自動車などに用途が広がった。炭素繊維には独特の風合いがあり、システムキッチンの扉に採用される例も。

超硬【ちょうこう】

切削工具などに使われる超硬合金。金属炭化物粉末と金属粉末を焼結してつくる。タングステン・チタン・コバルトなどレアメタルを含む。金型などに使われる超硬合金を、従来の放電・研削加工から切削加工だけで完結させようとする「直彫り」が広がりつつある。

デジタルツイン【Digital Twin】

デジタルの双子。現実世界を仮想空間上にそっくりそのまま再現すること。現実に近いシミュレーションが可能になる。

テーパー【Taper】

円錐状の先細り形状。工作機械の主軸穴の大きさについてBT30番、BT40番などと表現される。近年は振れ精度に優れるHSK-E50(BT30番相当)、HSK-E32(BT40番相当)などの採用が目につく。

トップランナーモーター

モーターで消費される電力は産業部門の消費電力量の75%を占めるとされるためトップランナー化される。2015年4月以降、国内向けに出荷するモーターのエネルギー消費効率を区分ごとに出荷台数により加重平均した数値が、基準エネルギー消費効率を下回らないようにする必要がある。

ドローン【Drone】

小型無人飛行機。元々は雄バチを意味する。先行する米国では2025年に米上空に3万機が飛び、市場規模10兆円に達すると米シンクタンクは予測する。積載重量を高めた製品も開発され、カメラを積んで撮影するだけでなくモノの搬送が可能になってきた。15年5月には国内初となるドローン用試験飛行場「物流飛行ロボットつくば研究所」(茨城県つくば市)がオープン(=写真)。飛行時間3時間、飛行距離120kmを実現するハイブリッド機も登場。

ハイス【High-speed Steel】

高速度鋼。金属材の高速切削に適する特殊鋼で、タングステン、クロム、バナジウムの含有量が多い。旋盤用バイトとして最も広く用いられる。

バイス【Vise】

工作物をつかまえる万力。

バイト【Cutting Tool】

旋削用刃物。bite(切り込む)から出た語か。バイト全体をハイスでつくるのは不経済なので、差し込みバイトをバイトホルダにつかませて用いる。

バックラッシュ【Backlash】

サーボモーターと機械可動部の隙間(ガタ)。これがあることでねじや歯車は自由に動けるが、移動方向の反転時にバックラッシュの分だけ余計に動く必要が生じる。リニアモータードライブはバックラッシュのない応答性をもつ。

ファイバーレーザー【Fiber Laser】

レーザー加工機に採用される光源の1つで近年急速に普及している(他の光源に「CO2レーザー」「結晶レーザー」がある)。ガラスファイバーを使ってエネルギーを増幅させる方式で、省エネで高反射材に向き、メンテナンスが少なくてすむ。比較的構造が単純なため複合加工機に搭載しやすい。

ファウンドリー【Foundry】

半導体受託製造会社。LSI(大規模集積回路)の量産を専門に請け負う企業で、台湾やシンガポールに多い。

プラットフォーム【Platform】

産業や商品など、それぞれの分野において、階層的に捉えた場合、上位構造を支える基盤となる下位構造の部分。産業や商品のみならず、ITやIoT、人材育成など幅広く使われている言葉。

ロストワックス【Lost-wax】

鋳造法の一種。ワックス(ロウ)で作った原型の周囲を鋳砂やセラミックで覆い固め、加熱によりワックスを消失させることで鋳型を作成。できた型に溶けた金属を流し込むことで部品などを成形する。高額な金型が不要で、高精度を要する部品の成形に向く。

AGF【Automatic Guided Forklift】

無人搬送フォークリフト。コンピュータ制御により無人で搬送する。

AGV【Automatic Guided Vehicle】

無人搬送車。ワークや部品、工具などを積み、所定の場所に運ぶ。超重量物搬送、自動給電、多関節ロボット搭載(=写真)といったタイプも。

AI【Artificial Intelligence】

人工知能。学習や判断といった人間の知能を備えたコンピュータ・システム。近年のコンピュータの高性能化とディープラーニング(深層学習。画像、動画、音声などの処理を得意とする)の進歩によって急速に発展している。

AMR【Autonomous Mobile Robot】

自律走行型搬送ロボット。

ATC【Automatic Tool Changer】

自動工具交換装置。

APC【Automatic Palette Changer】

自動パレット交換装置。

BCP【Business Continuity Plan】

事業継続計画。企業などで事故や災害が発生した際に、発生前と同様の事業が継続できるよう備える活動計画。

BOM【Bills of Materials】

製造業で用いられる、階層構造を表す部品一覧表。製品の見積もり時点から設計、調査、製造、メンテナンスにまで利用される。

BOP【Base of the Economic Pyramid】

潜在的需要をもつ途上国の低所得階層。人口約40億人と世界人口の7割を占め、市場規模としては日本の実質国内総生産に相当する5兆ドル(約500兆円)と大きい。有望市場として注目を集める。

BRICs【ぶりっくす】

経済成長が著しいブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の総称。各国の頭文字からとった。01年に米投資銀行のレポートで使われて広まった。BRICs人口は約30億人とされる。近年はsを大文字にして南アフリカ(South Africa)を加えた5カ国を指すことが多い。

CAD/CAM/CAE【きゃど・きゃむ・きゃえ】

(Computer-aided Design/Manufacturing/Engineering)コンピュータを利用した設計・製造・エンジニアリング(検討・修正)。

CASE【Connected Autonomous Shared Electric】

「Connected(接続性)」「Autonomous(自動運転)」「Shared(シェアリング)」「Electric(電動化)」の4つの単語の頭文字をとったもので、近年の自動車産業の動向を象徴する言葉。2016年に独ダイムラーのディーター・ツェッチェCEOが、中長期戦略の中で提唱したのが始まりとされる。国内外の多くの自動車メーカーがこの潮流に乗るべく事業展開している。

CBN【Cubic Boron Nitride】

CBN(立方晶窒化ほう素)焼結体。ダイヤモンドに次ぎ、超硬合金の2倍近い硬さをもつ。高硬度鋼の切削工具に用いられる。

CE【Concurrent Engineering】

製品やシステムの開発において、設計技術者から製造技術者まですべての部門の人材が討議しながら行う、同時並行的な生産方法。段階ごとに区切りをつけるのではなく、ある段階が次の段階をオーバーラップすることになる。

CEマーク【Community European】

EU圏内で流通させる製品に対して、その使用者の健康および安全を保護する規格。95年から同マークのない機械や家電は欧州で販売できない。

DX【Digital Transformation】

デジタルシフトとほぼ同義で、企業がITを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させることを指す。

EMS【Electronics Manufacturing Service】

電子機器受託製造サービス会社。ハイテク設備を武器に量産を受託し、急成長している。多くは中国を生産拠点とする。

ERP【Enterprise Resource Planning】

全社的業務管理・統合情報システム。ITを使って経営資源の計画的な活用を図る。

5G【5th Generation】

第5世代移動通信システム。超高速・超低遅延・多数同時接続といった特性があり、自動運転や遠隔医療など様々な産業における活用が期待される。携帯電話事業者の展開する全国サービスに加え、企業の敷地内など限られたエリアで使うプライベートネットワークとしての活用(ローカル5G)も予定されている。

FS【Feasibility Study】

実行可能性調査。採算性調査。

FSW【Friction Stir Welding】

摩擦攪拌接合。円筒状の工具を回転させながら強い力で押し付けることで摩擦熱を発生させ、母材と周辺部を軟化させて接合する方法。

IoT【Internet of Things】

家電や自動車、生産機械、建物など多様な「モノ」がインターネットに接続され、相互に情報をやり取りすること。コネクテッドカーはその1つ。異なる機器間の相互接続や、大量のビッグデータによるネットワークの負荷増といった課題がある。

KPO【Knowledge Process Outsourcing】

知的業務の委託。調査・分析・企画立案といったマニュアル化しにくい業務を対象とし、90年代に広がった比較的単純なBPO(Business Process Outsourcing)に対して用いられる。主にKPOサービスを提供するのはインドや中国、チリなどに主要拠点をもつ独立系企業。日本での利用は少ないが欧米企業で利用が進んでいる。

LFV【Low Frequency Vibration】

低周波振動切削。旋削加工中、長手方向(Z軸)に対して切り込み方向(X軸)が振動することで、切りくずを適度に分断する技術。切りくずによる製品のキズや刃具破損を防ぐ。

MaaS【Mobility as a Service】

個々の交通サービスを、統一されたプラットフォームのもとで1つの移動サービスに統合すること。カーシェアリングやライドシェアといった配車サービスもこの範疇に含まれ、日本でも2018年にトヨタ自動車とソフトバンクが自動運転車を活用した新移動サービス事業として「モネ テクノロジーズ株式会社」を共同設立するなど市場は拡大傾向にある。

MCS【Material Control System】

自動搬送装置統合管理システム。

MES【Manufacturing Execution System】

製造実行システム。

MEMS【Micro Electro Mechanical Systems】

モーターや駆動系などの機構を組み込んだ微小電気機械システム。半導体集積回路の構造に用いられる微細加工技術を応用したもので、マイクロマシン(一般に10mm立方以下)など。

MIM【Metal Injection Molding】

射出成形法の一種。金属粉末とバインダ(樹脂やワックス)の混合物を金型で射出成形し、バインダを熱で脱脂した後に焼結して成形する。複雑形状や難削材を成形できる。

MOT【Management of Technology】

技術経営。技術版MBA(経営管理学修士)とも言われ、技術に立脚した企業戦略の立案、実行をいう。

ODM【Original Design Manufacturing】

相手先ブランドによる設計・製造。OEM(Original Equipment Manufacturing=相手先ブランドによる製造)より範囲が広く、デザイン・仕様に受託側が関わる。

PLM【Product Lifecycle Management】

製品のマーケティングから企画、製造、さらに販売、保守、廃棄にいたるまでのライフサイクル全般にわたる情報管理。PDM(Product Data Management=製品情報管理)をさらに広げた概念。

RCEP【Regional Comprehensive Economic Partnership】

日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国が中心となり、ASEANと、5つのFTA(自由貿易協定)を束ねる広域的な包括的経済連携構想(東アジア地域包括的経済連携)。経済産業省によると、RCEPは人口約34億人(世界の約半分)、GDP約20兆ドル(同約3割)、貿易総額10兆ドル(同約3割)を占める広域経済圏としての発展が期待されている。2022年1月に発行された。

RP【Rapid Prototyping】

試作機製造などに用いられる短時間での立体形状作成技術。RPの1つに3Dプリンターがあり、光で硬化する液体樹脂を使った光造形法や樹脂粉末・金属粉末をレーザーで焼き固める焼結法、軟化させた樹脂を積層する方法などがある。金属粉末を利用したものでは、材料の改良などで100万ショット打てる金型や人工関節、歯科部品をつくる例も。

SIer【System Integrator】

ユーザーの用途に合わせて機械やロボット、コンピュータソフトを組み合わせてシステムの構築を行う企業。ロボット導入にはSIerの貢献が大きく、日本ロボット工業会は2018年7月、工業会の特定事業委員会として「FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)」を設立した。

TPP【Trans-Pacific Partnership Agreement】

環太平洋経済連携協定。太平洋を囲む国々が人、モノ、カネの自由な移動を目指す多国間協定で、06年にシンガポールやニュージーランドなど4カ国で始まった。TPPに加わると関税がほぼ例外なくゼロとなるほか、外国企業、外資、看護師や介護士をはじめとする外国人労働者の受け入れに関する規制ができなくなるため通常の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)より取引自由度が高い。

VISTA【びすた】

ベトナム、インドネシア、南アフリカ共和国、トルコ、アルゼンチンの5カ国。BRICsに続く新興国グループとされる。

アイランドキッチン【Island Kitchen】

部屋の中央に調理台やシンク、レンジなどを設置したキッチン。家族とコミュニケーションが図れる一方で、ダイニングルームからキッチンが丸見えなので常にきれいに片づけておかなければならない緊張感が伴う。2世帯が集える幅6.5mの巨大キッチンも登場(=写真)。アイランドキッチンには、V字状に折れ曲がって広がる「Vランド」、方形に近い巨大な「Cランド」、調理する人と食事する人の垣根をなくした「Dランド」、CランドとDランドが融合した「CDランド」などがある。ちなみにキッチンの長辺側が壁に付いた従来タイプを「オンウォール」、短辺側が壁に接したタイプを「ペニンシュラ」(半島の意)と呼ぶ。

安心R住宅

消費者が安心して購入できる既存住宅に対するブランド制度。国土交通省が新設し、2018年4月に制度を導入。

インスペクション【Inspection】

建築士など専門家による中古住宅の検査。住宅の劣化状況が客観的に明らかになれば、中古住宅を売買する際に消費者が安心して購入できるようになるため、政府がインスペクションの普及を重点施策として掲げている。

エコキュート

自然冷媒(CO2)ヒートポンプ式電気給湯機の愛称。エコと給湯の合成語。太陽で暖められた空気の熱を取り出すため、再生可能エネルギー利用機器と位置づけられるようになった。01年にデンソー、電力中央研究所、東京電力が共同で実用化。国内累計出荷台数は400万台を突破(13年10月)。エネルギーの自家消費時代を控え、深夜電力でなく、日中余った電気を湯として溜める使い方が提案され始めた。

エコジョーズ

従来捨てていた排気の熱を利用する潜熱回収型ガス給湯機の愛称。熱効率は95%ほど。国内累計出荷台数は500万台を突破(14年度)。石油を燃料として同様の仕組みをもつ給湯機はエコフィールと呼ばれる。

エネファーム

2009年5月に発売された家庭用燃料電池コージェネレーション(熱電併給)システム。08年6月に業界で名称統一された(エネルギーとファーム=農場の造語)。光熱費は導入前より年間で5-6万円(東京地区、標準家庭で試算)割安になるという。先行して発売された固体高分子型(PEFC)のほか、シンプルな構造で小型化に向く固体酸化物型(SOFC)もある。価格は当初の350万円前後から、200万円を切る新型が登場(13年4月)。停電時に自力で発電するタイプも。国内累計販売数は30万台を突破(18年度)。

グリッドパリティー【Grid Parity】

太陽光発電など再生可能エネルギーによる発電コストが既存の送電線電力の価格(電力料金)と同等かそれ以下になる分岐点。

スマートウェルネス住宅

省エネ・創エネ・蓄エネの観点だけでなく、安全・安心で健康に暮らせるという視点を加えた住宅。国交省はスマートウェルネス住宅・シティの推進を加速する。

節水トイレ【せっすいトイレ】

INAX(現LIXIL)が06年、国内で初めて使用水量(大便時)6リットルのサイホン式便器を発売して以来、競合各社が節水性能を競い合っている。水道代節約・省エネにつながるため、業界標準になりつつある。INAXの4リットル(11年4月発売)やTOTOの3.8リットル(12年2月発売、床排水タイプ)が国内最節水。小便器も節水の方向にあり、水をまったく使わない製品も。

ゼロ・エネルギー住宅【ZEH=Zero Energy House】

高断熱化や太陽光発電システムの設置で年間の一次消費エネルギーが正味ゼロになる住宅。国は2030年までに新築住宅のゼロ・エネ化を目指し、補助金制度を始めた。新「エネルギー基本計画」(14年4月)の中で、「2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」と掲げられている。一方、建築物については「2030年までに新築公共建築物等の平均でZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)」の実現を目指す」とするが、ビルは延べ床面積が大きく消費電力が多い割に太陽光パネルを載せられる面積が小さいため、実現はかなり難しい。

APF【Anual Performance Facter】

通年エネルギー消費効率。年間を通じてエアコンやエコキュートを使用したとき、1年間に必要な冷暖房能力を、年間消費電力量(期間消費電力量)で除した数値。より実使用に近い効率を示す。値が大きいほど省エネ性が高い。

BIM【Building Information Modeling】

3次元の建築モデルをコンピュータ上で構築するモデリング手法。建材・家具などの要素から構成され、それぞれに幅や奥行きなどの寸法や材料単価といった様々な情報を盛り込めるため、1つのモデルに情報を集約し設計~施工までの一元管理が可能になる。

CASBEE【Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency、きゃすびー】

国土交通省が主導し01年に開発された国内の新築・既存建築物の環境性能評価システム。周辺環境への配慮やランニングコスト、快適性などの性能を客観的・総合的に5段階評価する。毎年改良を重ねている。

COP【Coefficient of Performance】

エアコンやエコキュートに用いるエネルギー消費効率(冷暖房能力kW÷消費電力kW)。消費電力1kWあたりでどのくらいの能力を引き出せるかを数値化したもの。1の電力で5の空気の熱をくみ上げて6の熱をつくった場合にCOP6となる。

FRP【Fiberglass Reinforced Plastics】

ガラス繊維や炭素繊維などを補強材として埋め込んだ繊維強化プラスチック。軽くて機械的強度・耐食性・成形性に優れ、浴槽などに用いる。

GMS【General Merchandise Store】

衣・食・住に関わる大規模小売店。

HEMS【Home Energy Management System】

情報通信技術(ICT)を活用した家庭内の照明、空調、家電などのエネルギー管理システム。このビル版はBEMSという。HEMSを中心に太陽電池や蓄電池を利用したエネルギーの創蓄を最適化する住宅をスマートハウスと呼び、スマートグリッド(次世代送電網)によってエリアが広がればスマートタウン、スマートコミュニティとなる。

HFC32【Hydrofluorocarbon 32】

エアコン冷媒などに使われる、塩素を含まずオゾン層を破壊しないフルオロカーボン(フロン)の一種。ダイキン工業が13年春、国内向け壁掛形ルームエアコン全機種への採用を完了した。地球温暖化係数は675と従来のHFC410Aの3分の1程度。

IHクッキングヒーター

IH(Induction Heating=誘導過熱)方式の調理器。熱効率が高い。用いる鍋の材質を選ばないタイプや中華鍋に対応する製品も登場している。

LCCM(Life Cycle Carbon Minus)住宅

建設時、居住時、廃棄時における住宅のCO2排出をできるだけ減らすとともに、太陽光発電などを利用してCO2収支をマイナスにする住宅。縁側を利用して光・風を季節に応じてうまく取り込む。建築研究所などは11年2月、茨城県つくば市にデモ住宅を竣工。

MDF【Medium Density Fiberboard】

木質繊維を原料とする中密度繊維板。木材チップを細かく裁断したものに合成樹脂を加えて板状に成形したもの。平滑な表面をもち、家具の扉、側板などに用いる。

Q値【きゅうち】

熱損失係数。住宅の断熱性能を表すもので、建物全体の熱損失量を床面積で割った値。値が小さいほど断熱性能が高い。

SI住宅【スケルトン・インフィルじゅうたく】

耐久性の高い骨格(skeleton)と、比較的容易に変更できる造作や設備(infil=隙間を埋めるもの)がはっきり区別される住宅。

UA値【ゆーえいち】

外皮平均熱貫流率(単位はW/m2K)。Q値と同様に住宅の断熱性能を表すもので、建物全体の熱損失量(換気による熱損失を除く)を外皮(外壁・床・天井など)面積の合計で割った値。値が小さいほど断熱性能が高い。Q値は建物の大小や形状によって数値にバラつきが出るのに対し、UA値は建物の形状による影響を受けにくいという特徴がある。

カーボンオフセット【Carbon Offset】

排出した二酸化炭素を何らかの方法で間接的に相殺する(offset)こと。航空機を利用した人が飛行で排出したCO2を植林事業に寄付することで相殺するなど。航空各社は団体旅行を対象にさまざまな商品開発を行っている。ちなみにカーボンオフセットを通して、二酸化炭素排出が実質ゼロになった状況を「カーボンニュートラル」、二酸化炭素をより多く相殺した場合を「カーボンポジティブ」という。

カーボンフットプリント【Carbon Footprint】

商品のライフサイクル全体の温室効果ガス排出量をCO2量に換算してマーク(=イラスト)で表示する制度。マークは商品に付けられ、CO2排出量が一目でわかるようになる。経済産業省が09年に算定・表示方法などについての基本ルールをまとめ、試験販売も始まった。

グリーン電力証書【グリーンでんりょくしょうしょ】

太陽光、風力など自然エネルギーで発電する電力会社に資金支援し、これをもってクリーンなエネルギーを購入したと証明する制度。グリーン電力は割高になるが、地球温暖化防止に間接的に貢献できるため展示会などで利用され始めている。

スマートグリッド【Smart Grid】

電力の需給をITで効率的に制御する次世代送電網。賢い(スマート)送電網(グリッド)の意。米オバマ大統領が環境経済政策「グリーン・ニューディール」の目玉の一つに掲げた国家プロジェクト。日本の大規模実証実験は横浜市、豊田市、京都府けいはんな学研都市、福岡県北九州市の4地域で動き出しているほか、住設・ハウスメーカーによる取り組みも本格化(写真はパナソニックが神奈川県藤沢市などと進めるFujisawaサスティナブル・スマートタウン)。

都市鉱山【としこうざん】

金や銀、パラジウムなど希少金属を含んだパソコンや携帯電話などの廃棄物を、鉱山にたとえていう語。日本がため込む金や銀は世界の年間消費量の実に3倍になると物質・材料研究機構は試算する。

CNF【Cellulose Nano Fiber】

植物中に含まれるセルロース繊維を人工的に解きほぐし、主に幅100nm以下にしたもの。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度があるといわれる。今後、脱炭素・循環型社会実現のため、CNFを用いた複合樹脂素材の活用が期待される。

ESG【Environment, Social, Governance】投資

環境や企業統治に対する企業の取り組み姿勢を投資判断の材料とする手法。

FFV【Flexible Fuel Vehicle】

バイオエタノール燃料が普及するブラジルで実用化されているフレックス燃料車。バイオエタノールのみでも走行可能。国内では08年、バイオエタノール10%混合のガソリンの公用利用が認められた。

GX【Green Transformation】

カーボンニュートラル(CN)の実現に向けて、経済社会システム全体の変革を行うこと。CO2の排出量を社会全体で見える化する必要があるため、デジタル分野との連携が不可欠。

IPCC【Intergovernmental Panel on Climate Change】

気候変動に関する政府間パネル(1988年設置)。各国政府が指名した専門家や行政官が参加する会合で、地球温暖化の将来予測などを行う。07年に米アル・ゴア氏とともにノーベル平和賞を受賞。

PPA【Power Purchase Agreement:電力販売契約】

モデル発電事業者が発電した電力を特定の需要家(電力使用者)に供給する契約方式。特に、事業者が需要家の屋根や敷地に太陽光発電システムなどを無償で設置・運用して、発電した電気は設置した事業者から需要家が購入し、その使用量を事業者に支払うビジネスモデル。需要家には負担軽減の観点でメリットがある。TPO(Third-Party Ownership:第三者所有)モデルとも言う。

RE100【Renewable Energy 100%】

業務で使う電力のすべてを再生可能エネルギーで賄うことを目標に掲げる企業が参加する国際的な取り組み。英国に本部がある国際環境NGOが2014年に発足し、米アップルやスウェーデン発祥のイケア社など各国から130社以上が参加。日本の環境省は2018年6月、公的機関として初めて参加することが認められた。RE100への日本企業の参加は65社に達した(2022年2月現在)。

Scope【スコープ】

近年、サプライチェーン上の温室効果ガス(GHG)の排出に関する区分で使用される(Scope1・2・3)。「Scope1」は事業者自らによるGHGの直接排出。「Scope2」は外部から購入した電気、熱・蒸気が作られる際に排される間接排出。「Scope3」は上記以外の事業活動に関わる全ての間接排出。それらを全て合計したものをサプライチェーン排出量と言う。

SDGs【Sustainable Development Goals】

2015年の国連サミットで採択された、16年から30年までに世界が達成すべきゴールを示した国際社会の共通目標。日本では持続可能な開発目標と訳される。17のゴール・169のターゲットから構成され、貧困問題や気候変動、ジェンダー平等など内容は多岐に渡る。近年ではSDGsを経営に取り込む企業が投資家の評価を得るなど経済界における影響力が高まっている。

VPP【Virtual Power Plant】

仮想発電所。多数の小規模発電所をまとめて制御し、仮想的に1つの発電所のように取り扱うこと。

空家対策法【あきやたいさくほう】

正称は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(15年5月完全施行)。全住宅の13.5%にまで達した空き家の比率を下げるために制定された。中古住宅の流通が促進されそうだ。

改正省エネ法【かいせいしょうえねほう】

石油危機を契機に79年に制定された「エネルギーの使用の合理化に関する法律」はこれまでに何度も改正されてきた。08年5月の改正で、住宅・建築物に係る措置が09年4月から段階的に実施、工場・事業場に係る措置が10年4月から実施された。規制対象を従来の工場単位から企業単位に拡充するのが柱。

クリーンウッド法【Clean Wood Law】

2017年5月に施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」の通称。国内や原産国の法令に適合して、伐採された木材や製品の流通や利用の促進を目的とする。木材や関連事業者の範囲、登録方法なども定めている。

グリーン購入法【グリーンこうにゅうほう】

正称は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法」(01年施行)。国や地方公共団体などが環境に配慮した製品を率先して購入することを義務づける。

グリーン投資減税【グリーンとうしげんぜい】

エネルギー効率の高い設備機械などの導入を促す減税制度。11年7月創設。対象設備を取得した際に30%特別償却、即時償却または法人税額(所得税額)の7%特別控除(中小企業のみ)が受けられる。エネ革税制(エネルギー需給構造改革推進投資促進税制。12年3月末終了)に替わるしくみ。

住生活基本法【じゅうせいかつきほんほう】

住生活の安定・向上を促進するために06年施行。良質な住宅供給、住宅購入者の利益擁護などを規定する。

住宅性能表示制度【じゅうたくせいのうひょうじせいど】

第三者機関が住宅の構造耐力や省エネ性、遮音性などの性能10分野について等級評価する仕組み。品確法に基づいて創設された。

中小ものづくり高度化法【ちゅうしょうものづくりこうどかほう】

製造業の国際競争力の強化や新たな事業の創出をめざし、06年施行された。正称は「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」。22分野あったが11分野にまとめられた。

長期優良住宅制度【ちょうきゆうりょうじゅうたくせいど】

耐久・耐震性や維持更新の容易性が高い住宅を「長期優良住宅」と認定し、固定資産税などを減免する制度。09年6月に始まり、急浸透している。

特化則【とっかそく】

特定化学物質障害予防規則。労働安全衛生法の特別規則の1つで、管理すべき化学物質を指定している。

トップランナー方式【トップランナーほうしき】

省エネ法に基づく電気製品や自動車などのエネルギー消費効率基準の策定方法。機器の省エネルギー基準を、現在製品化されている最も効率のよい製品の性能か、それ以上の水準に設定する。

品確法【ひんかくほう】

住宅の品質確保、住宅購入者の利益保護などを目的に00年に施行された住宅品質確保促進法。「住宅性能表示制度」と新築住宅の請負・売買契約における「瑕疵(かし)担保責任」(補修請求権など)の2本柱。

フィードインタリフ【Feed-in Tariff】

固定価格買い取り制度。エネルギーの買い取り価格(タリフ)を法律で定める助成制度。太陽光発電など再生可能エネルギーの普及拡大と価格低減を狙い、欧州や韓国など約20カ国が採用する。日本も家庭の太陽光発電で生じた余剰電力の買い取りを電力会社に義務づける制度(09年11月から)のほか、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーの固定価格買取制度(12年7月から)が始まった。

ものづくり補助金【ものづくりほじょきん】

試作品や新商品の開発、新サービスの導入、設備投資などを行う中小企業の設備投資を促す「ものづくり・商業・サービス経営力苦情支援補助金」。「中小ものづくり高度化法」などに基づき、経済産業省と中小企業庁が2009年度補正予算編成時に創出した補助制度。公募要領で定めた事業完了期限(機械装置の納入、支払いなどの完了期限)までに納入する必要があるため、比較的短納期の設備に向く。

リサイクル法【リサイクルほう】

資源有効利用促進法(01年施行。再生資源利用促進法〈91年制定〉を改正、改題)。資源の有効利用と廃棄物の減量を促進し循環型社会を目指す。対象製品は容器包装(97年施行)、家電(01年)、自動車(05年)など。最終処分場の延命策に加え、温暖化対策としても有効とされる。

FSSC22000

FSSC(本部・オランダ)が策定した食品安全の認証規格。国や地域の違いをなくし世界標準規格として統一化が図れ、管理コストを大幅に下げられるメリットがある。類似の規格にISO22000などもあるが、企業間での衛生管理にバラツキがあるといった問題があった。

ISO50001

エネルギー管理に特化した国際規格。エネルギーの体系的な運用によって、温室効果ガスの排出量やエネルギーコストの低減につなげる。省エネ法とおおむね整合性がとれている。国内での認証取得企業はまだ18社(12年12月末時点)に過ぎないが、今後、海外ビジネス取引の必須条件となる可能性もある。

JISQ9100:2000

品質マネジメントシステムとして汎用的なISO9001:2000に航空宇宙産業特有の要求事項を追加した日本工業規格(JIS)。米国AS9100および欧州EN9100と相互認証され、国際的な認証として扱われる。航空機産業への参入にはこの認証が必要とされる。ただ、中小企業で個々に認証取得するのは難しく費用もかかるため、製品ごとに連携体で取得しようとする動きもある。

REACH【Registration, Evaluation and Authorization of CHemicals】

ヨーロッパ連合(EU)が定める化学物質管理制度。EUにおける生産者と輸入者は、生産品・輸入品の全化学物質(年間1トン以上の取り扱いが対象)の、人類・地球環境への影響についての調査や欧州化学庁への申請・登録 を義務づけられる。

RoHS指令【ロス(ローズ)しれい】

電気・電子機器における特定有害物資の使用制限。06年7月以降、ヨーロッパ連合(EU)加盟国内で販売される製品への水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、PBB(ポリ臭化ビフェニール)、 PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)の使用が禁止された。

RPS法【Renewables Portfolio Standard】

新エネルギー等利用法(03年施行)。電気事業者に対し、販売量に応じた新エネルギーの利用を義務づける法。新エネルギーとは風力、太陽光、地熱、中小水力、バイオマス発電など。