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アジア金型産業フォーラム講演

「EV化による車体構造の変化」

 NPOアジア金型産業フォーラムは929日、オンラインで「EV化による車体構造の変化」と題した講演を開催。自動車関連の技術コンサルティングを行うリンツリサーチエンジニアリングの小松隆代表が登壇し、電動車における車体構造のトレンドと今後についてを見通した。
 現状、EV車はガソリン車より部品点数が大幅に減少している一方で、車体重量は同クラスの車格でも平均して約240~460キログラム重いという。その重量の大部分を占めているのがバッテリーである。
 さらに航続距離を伸ばすため各社の搭載バッテリーは増加傾向にあり、車幅やホイールベースの拡大といった車両の大型化が進んでいる。
 車重の増加が与える影響として、衝突安全性能の低下が懸念される。走行中の車両が有する運動エネルギーは質量に比例し、衝突した際に車体は変形することでそのエネルギーを吸収する。
 小松代表はこうした重量増に伴う衝突安全性能への対応は、車体構造設計時から求められているという。
 「スチールからアルミで約70~100キロ、スチールからCFRPでは約140~200キロの軽量化が見込める。こうした材料置換に対応できる生産技術の進化が求められる。また、現行の断続溶断フレーム構造に留まらず、車体の効率化をさらに高める設計や、接合箇所の削減、高効率の接合技術が必要となる」
 さらに、今後の軽量車体への方向性として「コスト・生産性を重視する従来型の車体においては1200Mpa~1500Mpa冷間プレス材の開発と加工技術の進化が必要。また車体構造設計に工夫が必要。ただし大幅な軽量化は限界が近づいている」という。
 また、マルチマテリアルによる軽量車体については「骨格本体やボディにアルミ・CFRPを採用することで大きな効果が見込めるが、高い異種材接合技術が必要になるうえ、生産性やコストの問題に加え、リサイクル面などで大きな課題が残る」とし、「様々な素材で成形可能なチューブフレームの活用など、マルチフォーミングによる車体軽量化に期待したい」と語った。

20211025日号掲載)