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『三品産業』最新ソリューション

食品/医薬品/化粧品

自動化、安心・安全、コストダウン実現へ

レステックスは協働ロボットを導入容易なパッケージ型で提案

農林水産省による令和元年度の食品製造業の従事者数は851万人と、全就労者数の12・6%にのぼり、裾野の広い自動車産業(約9%)を上回り、製造業のなかでは最も従事者数が多い。すなわち人手に頼っている割合が高く、人手不足による影響を大きく受けている産業のひとつであり、自動化やロボットの活用が注目されている。

米市場調査会社メティキュラスマーケットリサーチによる「食品ロボット市場予測2015-2019」では、食品向け産業用ロボットは年間32・7%の平均成長率で成長し、2025年には3300億円市場に達すると予測している。

同レポートでは、人件費が高く厳格な食品安全規制があるヨーロッパで先駆けて導入が進み、次いでアジア太平洋地域でも食品安全規制の強化と包装食品の需要の高まりといった追い風を受けて拡大が見込まれているとしている。パレタイズやピックアンドプレイス、包装などロボットの活用領域は多く、特に複数の作業をこなせる多関節ロボットが主役になる、と見ている。

一方で、健康産業速報による「食医受託加工・製造企業に対する調査」ではロボット・FA化について「導入済み」と回答した企業はわずか7%程度にとどまる。化粧品受託製造企業に対する調査でも「導入済み」は7%という結果だった。しかし「導入予定」と「将来的に検討している」と回答した企業は53%と半数を超えている。このあたりに「導入したくても実現に至らない」という企業の本音が見えてくる。

中小向けの自動化提案も

ロボットの利点は、「人間には不可能な精度と速度で、繰り返し同じ作業を安定して長時間こなせる」ことである。しかしながら三品産業には「ロボットより人間のほうが得意」という作業が少なくない。人間にとって造作もない「箸でから揚げをつまむ」作業は、ロボットにとってかなり難易度の高い作業だ。

こうした不定形の対象物のピックアンドプレイスの実現を目指しているのが、ロボットSIerによるコンソーシアム「チームクロスFA」だ。その展示施設「スマラボ東京」では、食品業界向けのロボットソリューションが常設されている。

「AI食品ピッキングシステム」は東京大学松尾研究室との共同開発装置。千切りキャベツを独自のハンドが定量を掴んで仕分ける。「AI技術を用いて、ハンドの制御をロボット自らが学習する。試行錯誤を繰り返すうちに目標のグラム数に近い値を掴めるようになる」(オフィスエフエイ・コム飯野英城社長)。

「お弁当盛り付けロボットシステム」は、画像センサとロボットハンドを用いて、おかずの盛り付けから蓋閉め、番重への積み付けなどを用途別にパッケージ化。従来、人手以外では無理とされていた弁当製造の自動化に一石を投じている。

しかしながら技術的には自動化が可能でも、特に中小企業においては製造ボリュームや経済的な理由から自動化に踏み切れないケースが圧倒的に多い。また、これまで産業ロボットを積極的に導入してきた業界に比べ、製造最適化・自動化における知見が圧倒的に不足している、という現実もある。

こうした問題に対し、部分的な自動化を提案するのがロボットSIerのレステックスだ。「食品製造業ではパートを雇うほうが良い仕事も多々ある。それでもロボットは様々な場所で人手に変わるメリットを生み出せる」(齋藤圭司社長)。

同社ではカメラを標準搭載し、操作が容易な協働ロボット「テックマン」シリーズの利便性を高めたパッケージを用意。300mmの昇降架台にキャスタ、アジャスタ、水平伸縮脚を付け、コンパクトさと揺れ抑制、移動性を高めた。標準ハンドは電動2つ爪平行グリッパに、3Dプリンタ製とした工具無用で交換可能な爪を搭載している。

「全ての設備を当社に依頼するのではなく、協働ロボットを自社内でひとつの『道具』として使い始める事を提案している」(齋藤社長)。


 

 

 

 

 

三品業界向け展示会から見る最新ソリューション

11月25〜27日の3日間、千葉・幕張メッセにて医薬品と化粧品の研究・製造展「インターフェックスWeek」、食品製造の自動化・省人化のための商談会「フードテックジャパン」など三品業界向けの展示会(主催=リードエグジビションジャパン)が開催された。合計で約1000社が出展し、1万9953人が来場した。

前田シェルサービスの「抗菌・除菌3in1マルチ・ドライフィルタースケルトン」

ニッタは食品向けロボットハンド「ソフマティックス」は、ウレタン樹脂製のグリッパで、不定形、つぶれやすい食品を優しく、包むように把持できる。

「コンビニ弁当工場などの食品工場は人による作業が多く、また24時間稼動しているため深夜帯の人手を確保するのが難しく、自動化ニーズが高い。しかし食品は柔らかいものや表面がざらついていたりするため吸着式ハンドではさばけないものが多い。ソフマティックスは独自設計の把持機構と樹脂素材によりパンなどの柔らかい食品でもつぶさずに掴める」(ニッタ)

加えて食品衛生法に適合した柔軟エラストマーを採用し、段差がないなめらかな構造なので丸洗いでき、衛生に保てるのも特長だ。現在、従来品の3サイズのほか、ワークサイズや形状に併せて選べるよう、サイズ展開の拡充を検討しているという。

前田シェルサービスが「最もクリーンなエアーを必要とする三品業界に最適だ」と提案するのは「抗菌・除菌3in1マルチ・ドライフィルタースケルトン」。3つの性能別エレメントで段階的にエアーをろ過する3in1マルチ・ドライフィルターのスケルトンタイプ。透明のボディはエレメント内の汚れが見え、目視管理しやすい。

「エレメントは定期的に交換しなければならないが、エレメントの汚れを確認するためには、都度ラインを止める必要がある。スケルトンタイプならばエレメントの汚れが一目瞭然。ラインを止める回数を最小限に抑えられるほか、汚れが分からない中で稼働させる不安・心配を解消できる」(前田シェルサービス)

食品配送で多く使われる「折りコン」を運ぶドーリー。軽量で扱いやすい反面、一度に多くを人手でハンドリングするのは至難のワザ。それを解決した大有のドーリー運搬台車「押しドリくん」が、AGVに進化した。「低重心のため荷崩れしにくく、ドーリーを触れずに自動で運搬できる。使用現場やドーリーのサイズに合わせてオーダーメイドも可能」(大有)。

 


積み下ろし自動化を省スペースで

 THKが参考出展した「回転モジュール」を活用したそばロボット

「『ロボットの稼動領域を自由に設計したい』『設置スペースにあわせた設計をしたい』という声が多い。この回転モジュールと当社の直動モジュールを組み合わせれば、ロボットの自由度の拡張と省スペース化が可能だ」(THK)

PSSは昨年発表した「極省スペース パレタイザー」のデパレタイズタイプ「極省スペース デパレタイザー」を参考出展した「荷積みや下ろしは体力がいる作業。人手不足や高齢化が問題になっている今、作業者の確保が難しいという現場が多い。しかしロボットを導入するのはスキル面でのハードルが高い、スペースの確保が難しいという声もある」(PSS)

今回、初披露したデパレタイザーは、装置の中にカメラを搭載し、装置の高さを抑えた。設置面サイズは幅1.58、奥行き1.42m(0.68坪相当)、高さは2.41mと省スペースな設計だ。「パレットの大きさプラス作業者1人が動けるスペースがあれば設置可能。通常は高い位置にカメラを設置する必要があるが、カメラ位置を工夫したことで装置内に収められ、かつ1台のカメラでの動作を可能にした」。

(2020年12月10日号掲載)