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ベトナム、広がる裾野産業と自動化

ロックダウン解除は「見切り発車」か

外出制限時のグエンフエ通りはタクシーの運行も禁止されていた(7月21日撮影)
写真はホーチミン市中心部。ジェトロ・ホーチミン事務所の比良井慎司所長撮影

コロナ禍で「工場隔離」に踏み切ったベトナム。生産活動の縮小によって部品不足を招き、日本の自動車メーカー各社が減産する一因にもなった(ワイヤハーネスの日本からの輸入はベトナム製が4割を占めトップ)。300カ所以上の工業団地をもつベトナムは長らく有望な生産拠点であり「脱中国」を志向する製造業の受け皿になってきた。また1億人近い人口から有望な市場としても見られるようになってきただけにショックは大きい。ただ、101日までにロックダウンは解除され、経済活動は通常時に戻りつつある。


概要.jpg「店内飲食が解禁された昨日、5カ月ぶりに店でフォー(米粉を用いた平たい麺)を食べられた」(1029日、ジェトロ(日本貿易振興機構)ホーチミン事務所の比良井慎司所長)、「外へ一歩も出られず、デリバリーの利用も一切できなかった2カ月間の在宅勤務からようやく開放された」(10月初旬、山善ベトナムの太田左登司社長)――

ベトナム経済の中心地、ホーチミン市で暮らす2人からそう聞いて日本の緊急事態宣言なんて甘いなと感じてしまった。

4波が長期化したベトナムは首都ハノイ(920日)に続きホーチミン(101日)でもロックダウンが解除された。第1~3波時は63ある各地方省市に規制解除の判断が委ねられていた。中国と同様のゼロコロナ政策で、感染者がゼロになったら12週間様子を見て解除の判断をしてきた。ところが今年7~9月は感染者が減らない状態が続き今回のような措置がとられることになった。

ロックダウンは解除されたが、「1回目のワクチン接種をした人が54%とようやく半数を超え、2回目は22%とまだ少ない。これまでは保守的に規制してきたが、このままだと経済が立ち行かないと外国企業からのベトナム政府への要望を踏まえてニューノーマルに移った」(ジェトロ比良井所長)と見切り発車感は否めない。ホーチミンの隣のビンズン省にも工場をもつプレス順送金型メーカー、栄精工(愛知県大府市)の森田浩太郎社長は「コロナ禍は収まりつつあるが、田舎に帰った労働者がいれば、ホーチミンに戻ってこれない人、ホーチミンから出られない人も今だにいる」と尾を引くコロナの影響を話す。

状況は好転しそうだ。ベトナムでは4種類の国産ワクチンの開発が進む。ホーチミンの新興企業「ナノジェン製薬バイオテクノロジー」と国防省傘下の軍医学院が共同開発した「ナノコバックス」は安価で、ナノジェン社によると発症予防効果は90%と高い。副作用の発生割合は米国のファイザーやモデルナ製より低いという。

■カギは優秀エンジニア

新型コロナの影響で世界経済が停滞するなか、ベトナムの2020年の実質GDP成長率は29%とプラス成長を維持した数少ない国のひとつだ。今年7~9月は▲62%と急落したが、1~9月で均すと14%とプラス成長を保つ。今年1~6月の外国投資受入額は1527100万㌦と前年1年間(3104500万㌦)の半分の水準は維持している。

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ベトナムは裾野産業が弱いと長らく指摘されてきた。だが、進出日系企業への現地調達率を毎年調査しているジェトロによると、「10年前は20%台前半だったのが最近は35%前後まで上昇した。中国やタイの6割に比べると開きはあるが、改善が進んでいる」(ジェトロ比良井所長)と話す。

自動化も広がる。ASEANで日本企業が最も多く進出するタイでは、人口に占める65歳以上の割合が129%2020年、世界銀行データ。日本は283%)と比較的高まっていることもあってロボット導入が進んでいる。タイに次ぐ日本企業進出数のベトナム(同78%)でも近年、工場の自動化が広がっている。4年ほど前から工作機械に自動化設備を付けて販売する山善ベトナムは現地のロボットシステムインテグレーター(SIer)が急成長していると指摘する。

「当社と親しいロボットSIerさんは大手電機メーカーから1オーダーでロボット支給で10億円、20億円の注文を受けている。ロボット支給だとシステムをつくるだけでその金額になるからとんでもない仕事量。そんな会社がベンチャーながら出てきている」

山善ベトナムでもエンジニアリング機能を強化しており、「当社のエンジニア(ハノイ支社で17人、ホーチミン本社で12人)の中の専任エンジニア数人もシステムインテグレートができる。当社はエンジニアあっての商売。当然、機械を直す仕事もあればプログラムをつくったりロボットの動きを設計したりする仕事もある」と言う。

自動化は主に海外大手企業が進めているが、山善ベトナムが最初にロボットを付けて同期させる仕事を受けたのはベトナム企業だったという。「彼らはロボットで品質を高め、加工時間・人を減らすことよりも自分たちのお客様である日系企業が来たときのアピールになると考えている。我々の工場はこんなレベルの高いことをやってますよと」。

ハノイ、ホーチミン地区には国立の理工系大学があり、優秀なエンジニアを確保できる環境にある。仕事のチャンスを与えれば貪欲に学んで力をつけるというエンジニアは数も質も拡大中という。コロナ下でも工場隔離も関係なく働いてくれるロボット利用がいっそう広がりそうだ。