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まだ高まる鍛圧機械の生産性

複合加工とIoT化で

ミーリング機能を付けたタケダ機械の孔あけ切断複合機「CBF-3015Ⅱ-M」

生産設備にIoT、AIなどのデジタル技術が活用され、生産性のさらなる向上に期待が寄せられている。鍛圧機械(板金系機械、プレス系機械)も例外ではない。もともと切粉が出ない鍛圧機械は生産性と環境性能(日本鍛圧機械工業会が認定するMFエコマシン認証は18社36製品89機種に。2022年1月現在)が高く、これにデジタル技術が加わり性能がさらに高まっている。

鍛圧機械予測.jpgラウンドした外周に貫通穴があり、凸部、凹部もある。加工するには一見、それほど難しい形状ではないが削り出しではそれなりの時間を要しそうだ(=下写真)。実はこれ、1台の特殊プレス機による1工程で加工した。使ったのは油圧プレスの総合メーカー、森鉄工(佐賀県鹿島市)のワンショットフォーミングプレス(多軸サーボ油圧プレス)「MSF1500-M32」。絞り成形や鍛造を文字どおりワンショットでやってしまう。5軸加工だ、3Dプリンターだと何かとそちらに注目が集まりがちだが、こと生産性では複合加工ができる鍛圧機械に分がありそうだ。

9面鍛圧機械(1)本文P1森鉄工.jpg

森鉄工が1台のワンショットフォーミングプレスで加工したワーク

複合加工といえば、従来の孔あけ・切断にミーリング機能を付けたタケダ機械の形鋼加工用の孔あけ切断複合機「CBF-3015Ⅱ-M」がある。2面拘束のBBT40番の主軸を初めて採用してBT50番なみの剛性をもたせ、長孔・円孔・タップ加工などに対応。「超硬タイプのドリルが使え、加工サイクルタイムがぜんぜん違ってくる」とし、新たな需要分野として「エレベータ関連などの製缶に必要になる」とこの4月に営業活動を始めたばかりだが、すでに手ごたえを感じている様子だ。

知能化も進んでいる。アイダエンジニアリングが79日まで名古屋の金属プレス加工技術展で披露した2ポイントサーボプレス「DSF-N2-4000A」は、学習機能(AI)を搭載し各部位の温度、サーボモーターの電流値、電圧値などを集約して学習する。また、大型操作パネルで複雑なモーション設定を容易にして直感的に操作ができるほか、奥まったワークの見え難い場所はカメラによる映像を確認しながら操作可能。

9面鍛圧機械(1)本文P3アイダエンジニアリング.jpg

奥まったワークの見え難い場所はカメラによる映像を確認しながら操作できる(アイダエンジニアリングのサーボプレス「DSF-N2-4000A」)

デジタル化を進めたのは相澤鉄工所の全自動シャーリングシステム「ARS-307G」。母材供給から加工条件設定、シート送り・排出、スタンピングなどをスムーズに行う。アナログ設定の従来機と違い、デジタルによる自動設定機能を設けたことで動作パターンとして記憶させられる。

トルンプのパンチレーザー複合加工機「TruMatic 3000 fiber」はパンチングとレーザー切断加工が可能。省スペース設計でコスパが高く、同社は中小製造業に好適という。「従来ハイエンド機に搭載の最新機能をもち、投資対効果が非常に高い」と導入を勧める。

IoT化で先行するのはコマツ産機だ。同社機の利点の1つにコマツが建設機械向けに開発し50万台以上の出荷実績のあるKomtraxの産業機械版「産機Komtrax」を使えることがある。これは機械本体に搭載する通信機能で機械稼働状況や消耗品の状態をインターネットを通じてどこからでも確認できるIoTシステム。2009年のリリース時からモデルチェンジを重ね、海外にも展開中(中国・タイ・インドネシア・米国など8カ国以上で使える)。一昨年には大型プレスの予知保全機能を加え、世界で4千台の稼働実績があるという。

(2022年7月25日号掲載)