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中国、EV年産350万台突破

政策主導から市場主導へ

SUV「クラウンクルーガー」

世界一の自動車生産・消費国となった中国。EVをはじめとするNEV(新エネルギー車)販売台数においても世界シェアの過半数を占めており、市場を牽引する立場となりつつある。また、これまで補助金ありきで普及が進んだが、今後は市場主導でさらなる普及が進んでいくと見られている。


中国自動車工業会(CAAM)によると、2021年通年の中国市場の新車販売台数は、前年比38%増の2627万台(工場出荷台数ベース、輸出を含む)で、通年では4年ぶりに増加に転じた。乗用車は前年比65%増の2148万台となった。乗用車においては中国メーカーが前年比239%増の971万台と好調で、市場の452%を占めた。グループ別では、上位3グループは2020年同様に上汽、一汽、東風。4位は自主ブランドのSUVモデルおよび長安フォードモデルが好調な長安汽車グループとなった。

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日系メーカーは前年比08%減の515万台。トヨタを除く5社のマイナスが響いたが、2011年以来10年ぶりにドイツ系メーカーを上回る結果となった。なかでもトヨタは、新型SUVの販売が好調に推移し、同82%増の1944千台だった。なかでもハイブリッド車(HV)は同63%増の475900台となり、比率は25%に達した。

ホンダは半導体不足などの影響で同40%減の1561540台で3年ぶりの減少。日産は同52%減の1381494台と2年連続のマイナスとなった。日産は乗用車が同64%減だったのに対し、商用車は同78%増と堅調に推移した。

米系メーカーは、テスラとフォードグループの好調により前年比130%増の219万台だった。車種別ではSUVが好調で前年比65%増の1007万台と4年ぶりに1000万台を超えた。一方、商用車はバスを除いて下落し前年比66%減の479万台となった。

NEV(新エネルギー車)は前年比1755%増の352万台と大幅に増加。とりわけ中国国内市場においてで最も売れたNEV乗用車は上汽GM五菱の「五菱宏光MINIEV」。ベースグレードで28800元(約46万円)という低価格から爆発的な人気を博した。メーカー別でのNEV販売はBYDが首位。テスラは2位だった。

2021年の自動車市場について、「2018年から続いた販売台数の減少局面は終息した。新エネルギー車の販売台数は350万台を超え、販売台数全体に占める割合は134%に達した。このことからも新エネルギー車市場は、既に政策が牽引するかたちから市場主導に転換した」と見ている。

2021年の自動車輸出台数は前年比101.1%増の201万台と初の200万台超えを達成。うちNEV31万台だった。CAAMは「NEVは欧州にも輸出されており、中国メーカーの競争力が上昇している」と見る。

なお、CAAM2022年の販売台数を2750万台、うち500万台はNEVが占めると見通している。

■補助金終了も世界一のNEV大国に

これまで国策を通じてNEV車普及を支援してきた中国。その変遷を振り返ると、2009年に1000台の新エネルギー車を運用する国内の都市を毎年10都市ずつ増やしていくプロジェクトを開始。重慶直轄市の長安汽車製NEVに対する補助金を皮切りに、2010年には国家主導で上海、長春、深圳、杭州、合肥の5都市において、EVPHEVを個人で購入し、登録、所有した場合に交付する補助金を開始。バッテリー容量によって補助金の額が決定され、1㌔ワットあたり3000元(約51000円)、PHEV向けの上限は1台につき5万元(約85万円)、EV向けは1台につき6万元(約101万円)に定められた。

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低価格で市場を席巻した「五菱宏光MINIEV」。エアコンなし、航続距離100キロと機能を絞りシェアを拡大した

加えて補助金の交付以外にも、汽車購置税(日本の自動車取得税に相当)などの免除もあり、さらに2011年から2015年まではハイブリッド車への汽車購置税、消費税、そして車船税(車両と船舶に対する財産税)の半減措置も設定されていた。

だが2015年には新エネルギー車への補助金政策を段階的に減らしていき、2020年には打ち切る方針を発表するなど、補助金ありきのNEV普及からの脱却を目指していた。

だが、2019年の新エネルギー車販売台数は、補助金3割削減の影響もあり前年比4%減の約120万台に落ち込んだことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大で冷え込んだ国内景気の浮揚も見込んで補助金の延長を続けてきた。

しかし2021年末、個人所有のNEV車に対する2022年の補助金額を前年比で30%削減し、2022年末限りで補助金政策を終了すると発表した。元来、中国における補助金政策はNEV車の購入促進であり、その目標は「年間200万台の販売」であった。それを2021年に大幅にクリアする350万台を突破した。

また国の補助金政策こそ終了したものの、それぞれの省や直轄市、自治体レベルでの補助金は即廃止になるとは限らない。さらに補助金の減額分を補填する独自策を打ち出すメーカーも出るなど、今後も「世界一のNEV消費国」として世界のモビリティ市場を牽引していくことになりそうだ。

(2022年2月25日号掲載)