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労働環境を変える「物流施設」

ESR、物流施設を誇りを持って働ける空間に

デザインに優れた「人中心」の施設とは

壁面に多くのアート作品が描かれたESR尼崎DCのラウンジ

「物流施設」と聞いて思い浮かべるのはどのような光景だろうか。もし真っ先に浮かぶのが無機質なコンクリートの巨大な塊であるなら、ESRの物流施設を見学すればその古いイメージは一新されるかもしれない―。


ESR(東京都港区、代表取締役:スチュアート・ギブソン)は、アジア太平洋地域に特化した物流施設の企画・開発を手がける物流不動産事業者だ。同社の手がける物流施設には、その企業理念にも通ずる共通の特徴がある。「HUMAN CENTRIC DESIGN.」、すなわち人を中心に考えられた「ワーカーファースト」の施設であるという点だ。

例えば延床面積10万平方㍍以上の施設には託児所・ラウンジ・ショップをすべて標準で装備。「その時々で最高のものを形にする」を合言葉にアメニティ環境を充実させ、託児所ではバイリンガル教育やおむつ・布団を無償で提供するなどワーカーの働きやすさを高める様々な施策に注力している。

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女性の社会復帰を支援すべく開設した託児所。こうした施設は、スチュアート・ギブソン代表取締役自身が日本での保育園探しに苦労した経験からうまれたという

施設のデザインコンセプトが各棟で異なるのも特徴で、例えば大阪湾に面した「南港DC(ディストリビューションセンター)1」は、カリフォルニアの大学キャンパスをイメージした海を一望できる開放的な雰囲気に。「市川DC」のラウンジにはボルダリングスペースを配置し、「久喜DC」では壁面をくりぬいたカットアウトウォールを多用するなど随所に遊び心を散りばめた。さらに昨年6月に竣工した「尼崎DC」にはニューヨークのアーティスト集団によるテクノロジーを用いたアート作品も設置。憩いの場として公園を整備しラウンジにはハンモックを設けるなど、ともすれば広く無機質にもなってしまう物流施設を快適かつ洗練された個性のある空間へと昇華させている。

「その時々で自分たちが最高と考える施設を目指すのが我々のミッション。ワーカーの皆様の利便性や満足度を最優先に自由な発想でアイデアを膨らませ、妥協せず投資を行っています」。同社の広報を担当する横山智子さんは、ESRの施設づくりへの姿勢をそう表現する。

同社を貫くHUMAN CENTRIC DESIGN.という基本理念は、代表取締役であるスチュアート・ギブソン氏の想いによるものだ。同氏は物流不動産開発企業の日本法人代表として2000年に来日。当時はまだマルチテナント型の物流施設が国内に浸透しておらず、物流施設には「ただの巨大なコンクリートの箱」といった負のイメージが付き纏っていたという。そうした事情から人手不足に悩む企業も多かったようで、ESRの前身となる「レッドウッド・グループ」を06年に創業以来、同氏は「ワーカーが働く楽しみを得られる快適な労働環境の整備が人手不足の解消につながる」と考えデザインとアメニティに優れた先進的な物流施設を数多く創出。多くの取組みが他社も含めた業界水準になるなど業界全体のボトムアップに貢献している。

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ESR市川DCのラウンジは「静と動」を表現。ボルダリングスペースも設けた

目には見えない配慮も


物流施設へのデザイン面でのこだわりは先に紹介したとおりだが、一方で目には見えない細やかな配慮も垣間見える。例えばラウンジのBGMは音楽プロデューサーと契約し、時間帯や月ごとに違うものに変更。「弥富木曽岬DC」(22年4月竣工予定)ではラウンジにアロマを導入するなど様々な仕掛けを計画中だ。「要はそうした目に見えない部分にも気を配っているということ。これらの取り組みは気付かれづらいとは思いますが、ワーカーの方に『なんとなく快適』と感じていただければ我々としては嬉しいことです」(横山さん)という。 そうした働き手への配慮は狙い通り、テナント企業の人材確保や定着率の向上に結びついてもいる。休憩時間にラウンジのソファやハンモックに横になるなど思い思いにくつろぐワーカーも多く、そこがワークスペースであることを忘れてしまうほどだ。「我々がこう使ってもらえたらとイメージしていた理想的な使い方をしていただいている。またワーカーの方に改善点や新サービスに関するアンケートを取り、できることから取組みサービス向上にも努めています」(横山さん)。

今後はHUMAN CENTRIC DESIGN.の理念をさらに発展させる予定だ。例えば「東扇島DC」(23年3月竣工予定)では「高級ホテルのラウンジのような」ラグジュアリー感を創出する一方、フィットネスクラブやプライベートキッチンを設けるなどさらに働き手の五感に響く施設を目指す。「時代の変化に伴う様々なニーズに対応しつつ、職場に誇りを持っていただけるよう常に進化を続けていく」と横山さん。物流施設を人を惹き付ける場にすべく歩みを進める。