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北部九州のモノづくり(上)

アジアの玄関、鉄と港の島

八幡製鉄所・東田第一高炉史跡

小さな子どもに食べさせる際は注意を要する北九州銘菓がある。「こげなもん作りよっと?」と話題にもなっている。実際に回して締めることができるネジ形のチョコレート「ネジチョコ」だ。部分的に錆び、使い込んだ感じまでリアルに再現されているため、本物のネジをつい口に運んでしまいかねない。

「鉄の味」がする銘菓もある。北九州市八幡東区にある千草ホテルでのみ販売する金平糖「鐵平糖」だ。どちらの菓子も官営八幡製鉄所関連施設(同区)が2015年にユネスコ世界文化遺産として認定されたのを機に「鉄」をイメージしてつくられた。千草ホテルは「鉄のマチの風景を思い浮かべながらご賞味いただけると幸いです」と言う。

北九州は鉄のイメージと切り離せない。北九州工業地域は八幡製鉄所を中心にかつて4大工業地帯の一角をなした。ただ近年は、伝統的な鉄鋼業よりも自動車やロボット、金型・微細部品などの機械工業が盛ん。大手自動車の工場が多く立地し、世界4大ロボットメーカーの1つ安川電機もある。その周囲には金型・精密部品メーカーやロボットSIerが数多く存在する。九州各県でつくる九州自動車・二輪車産業振興会議の自動車関連企業立地マップ(20年11月まとめ)によると、サプライヤーは福岡県の592社を中心に大分(214社)、佐賀(121社)、熊本(96社)、宮崎(79社)、鹿児島(75社)、長崎(38社)の計1215社ある。

九州はアジアのゲートウェイとも言われる。福岡を起点に1千km圏内に釜山(距離210km)、仁川(540km)、上海(870km)などがあり、アジアを中心に28都市への航空定期便が就航する(コロナ禍の現在は運休の路線が多い)。

ロボで地方創生

とりわけ自動車産業が集積する北九州市がいま注力するのは環境・ロボット・SDGs。ロボットについては18年、内閣府の地方大学・地域産業創生事業に全国7自治体の1つとして北九州市が採択された(18年度から22年度までの5年間、事業費は17億円)。この事業は地域の大学と産業を結びつけて魅力ある独自の地方創生を目指す。九州工業大学、安川電機、北九州市、北九州産業学術推進機構(FAIS)を中心に大きく2つの柱で取り組む。その1つは最先端の研究で、安川電機と九工大が主導し世界で役立つロボット開発を目指す。もう1つはロボットを地元の中小企業に実装していくための導入支援。

市の産業経済局は「導入支援を進めるなかで北九州市は補助金制度をもつが、FAISという支援体制ももち、そこで導入の相談にのっている。ただ、実際にロボットを導入するのはSIerになるので、そのSIerの強化・拡大が重要になる」(大庭繁樹ロボット産業担当係長)と見る。その一環としてSIerネットワークの拡大を支援している。

次号以降では「クルマの島」を支える北部九州の企業とネットワークを紹介する。

北九州銘菓の ネジチョコ(右)と 鐵平糖