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紙面座談会:製販の協業を考える

出席.jpgDX時代を迎え、モノづくりの世界も次代を志向し新たな取り組みが着々進んでいる。さらにその背を押すように、長引くコロナ感染症の直接・間接の影響から全工程を視野に入れた自動化・無人化・デジタル化などが多くの産業分野で待ったなしの状況だ。加えて自動車のEV化や脱炭素の流れなど、いまマーケットのテーマや課題は多岐に渡り各々重みも増している。必然として、こうしたことにいかに対応するかが、生産財とその販売流通で問われることになった。

そこで本紙では、「メーカーと販売商社の協業」を切り口に、「協業による変化への対応」を考える座談会を開いた。生産財有力メーカー7社の経営幹部と、販売商社サイドから山善の幹部が参加。まずコロナ禍における各社取り組みの変化や、新たな市場ニーズへの対応などを聞きながら、未来を志向する協業の価値について活発に意見を交わしてもらった。
216日、オンラインで実施)


環境変化と生産財市場

その実態は?


顧客訪問ができない、場合によっては検収の立会いが難しく売上が立たないなどと、この約2年、コロナ禍にあって様々な制約が生産財市場にも押し寄せ、各プレーヤーを悩ませてきた。同時にそうしたなかで市場ニーズも急激に変化した。まずは変化に関連し各社の「状況」や「対応」について聞いた。


近田(オーエスジー) 今日はよろしくお願いします。ご質問についてですが、わたしどもオーエスジーという会社は、過去から対面営業を重視し、対面での提案を強みとしてきました。それがいきなりコロナ感染症で対面営業を十分出来なくなって、強みであったものが逆にネックになったと感じています。このあたりは山善さんも似ているかもしれません。そうしたなか、なんとかしなきゃいけないという気持ちが逆にパワーに転じたといいますか、一種の推進力となって、お客様の要望に合わせる形で新しくオンライン対応ですとか、WEBショールームといったことを進めるようになりました。他方、今日のテーマである「協業」に沿って言えば、私ども単独だけでお客様の要求をこなせることは減ってきていると感じています。私どもだけでなく機械メーカーさん、ツーリングメーカーさんらといっしょになってお客様の課題に応える営業活動を増やしていきたいと思います。

本紙 WEBショールームは切削工具メーカーのなかでも御社の充実ぶりが注目されているようですが、これは感染症が始まって生まれたのですか。

近田 そうですね。今申し上げた通りなんとかしなきゃ、なんでもいいからやってみようと、WEBショールームにしても完成度どうこうを最初から狙うのではなく、まずはやってみようの流れではじめています。

本紙 お話に出た協業については後ほど詳しくお聞かせください。オークマの小田副本部長、同じく変化への対応という点で。

小田(オークマ) 私ども営業にとって市場ニーズを知り、その変化を掴むことが最も重要であり、難しい課題であると認識しています。オークマがいま取り組んでいることは大きく2つあって、先ず一つ目は、私どもグローバルに仕事していますから、世界各国の動向を掴む為に「3C分析」というのを行っています。
カスタマー、コンペチター、カンパニーの3つのCの分析であり、最後のカンパニーはオークマ自身を表しています。
この3C分析では、米、中、欧、日本など世界各国ごとに規模や特徴、ニーズを細かく分析していて、各国が打ち出す政治・方針も注視しています。例えば日本の「働き方改革」は少子高齢化による労働人口減少問題が根底にあり自動化提案が必要です。またコロナ禍を機に自動化・無人化システムが一段と注目されるようになり、人がいなくても工場の稼動を止めずに生産を続ける自動化が必要不可欠となりました。

そして二つ目ですが、私どもの国内90名のセールスマンが全員でお客様を訪問し「明るい話題を集める」という活動を継続して進めています。

本紙 明るい話題に絞って情報を集め、ネガティブ情報はむしろ不要?

小田 ええ。明るい話題をまとめて月1回、全セールスマンに情報発信し共有しています。好調な業種であったり企業であったり、地域ならではの話題がここに乗ってきます。これにより動き始めている業種や好調業種のお客様の要望を知るヒント、競合メーカーさんの売れ筋商品に関するものなど貴重な情報を得られます。ちなみに「明るい情報」を毎月集める活動はリーマンショックの時から始めました、当時は何も売れず、お客様も買えない時であり、そのような時でも「明るい情報」を集めてポジティブになることを目的にしていました。

本紙 それで、明るい話題はいま足下で増えていますか?

小田 はい。増えています。明るい情報を集めることは、お客様のニーズを知ることであり、最も重要と思います。

本紙 THKさん、同じく変化について。

松井(THK) 当社もグローバルに展開していて、生産は今や海外のほうが国内を少し上回り、売上も海外が国内を上回っています。海外がより好調という状況です。そうしたなかコロナ禍以降は、世界の市場ニーズを知る為の情報共有活動が社内で活発になっています。
と申しますのも、少し私のことを言いますと108カ月ほど中国で営業し、約1年前に日本に帰ってきました。中国赴任時は3カ月に1度日本に戻り、会議で現地の状況説明をするんですが、その会議には当然アメリカ、欧州、アジアなどの責任者も揃って、相互に発表しあったわけです。
で、コロナが出てからは帰国してのリアル会議はできなくなったものの、パソコンを使ったオンライン会議により、情報を交わす頻度がうんと増えました。コロナ感染症に関する弊社国内外拠点の状況は毎日確認していますし、営業・生産会議も週2回やっていて。海外状況はコロナになってからより多く、日本側でとれています。

本紙 コロナ禍の対応で随分変わったのですね。同じく日東工器さんは?

石澤(日東工器)そうですね。コロナ禍の2年間の間で一番変化を感じているのは、やはり先ほどから話題に出ていますように、働き方や社内コミュニケーションの在り方がだいぶん変化してきたということですね。当社でもITツールを社内活用するようになりました。オークマさんから営業の情報収集のお話がでましたが、私どもには「営業週報」というのがあって、これを電子化して国内・海外すべての営業がみられるようにしています。旬な話題を発信し即座に共有できるという形で私ども自身、変化しています。  
またIT関係ではユーチューブ動画に力を入れていて、お客様が目で見て、音を聞いて加工の仕上がりなどを確認し、その流れでツールを購入いただくということを進めています。いままでは対面販売を重視し、デモ機をクルマに積んでお客様の現場で実際に作業に使って確認してもらっていましたが、そういう取り組みが感染症の影響でできなくなる事が増え、代替的に当社の営業が「一度ユーチューブをみてください」とアピールしているわけです。これによって商談が意外と早く決まるということも増えています。 

本紙 牧野フライス製作所さんも、ITを積極活用し、オンラインセミナーなどに相当力を入れられています。

髙山(牧野フライス製作所) ご発言にありましたように、私どもも今までの打ち合わせは対面でやってきましたが、2020年度にコロナ感染症が出てオンラインセミナー、オンラインの打ち合わせ、あるいはオンライン立会いといったところを模索しながらやってきました。それが21年度になって営業活動に根を下ろし、特別なことではない、ごく普通の形になったと思っています。

本紙 もう板についてきたと。オンライン立会いに絡んでは、業界の一部でオンライン検収ということまで言われました。そこまでやれるかどうかは置くとして、オンラインでカバーできることは増えたようです。

髙山 いや、打ち合わせなどもそうですが、正直、対面に勝ることはないですね。オンラインのなかでどこまで出来るかといいますと、カメラを活用し、加工サンプルの面品位をみていただけるようなところまでやっています。しかしやっぱり「止む無くオンライン」という、苦肉の策的な側面は残ります。
ただオンラインのいいところはパッと打合せできて、パッと終われるということでしょう。マキノの社内でも国内だけでなくグローバルでフル活用する形になっています。これからもコロナとの闘いは継続すると思いますし、仮に収束しても以前の対面だけでなく、オンラインからさらにDX活用をプラスオンし、併行してやっていかねばならない時代になると想像します。
そうしたなかいまマキノの社内で取り組んでいるもののひとつに、間接要員の社員の仕事をRPA(ロボティックプロセスオートメーション)といったツールを活用し自動化していくことがあります。人手に頼っていた仕事を自動化し、自動化による工数削減効果を例えばオンライン関係の新たな業務に振り分けていくという活動です。営業本部の間接要員をゼロにし、すべての活動が直接の引き合い、受注増に貢献する形を、社員の意識改革も含め進めています。

本紙 デジタル活用について山崎技研さんは?

山崎(山崎技研) デジタル化に関して我々はまだDXというよりはデジタイゼーション、いわゆるアナログのデジタル転換を進めているという状況ですが、新しい試みは進んでいます。
いまオンラインでの立会いという話が出ましたが、私どもではコロナ禍のなか、海外に機械を納める際にもオンラインを活用しています。といっても日系ではない現地ユーザーさんと我々がオンラインで向かい合い、立ち会いを行うといったことは難しいわけですが、商社・山善さんの海外現地法人のエンジニアの方に間に立ってもらって、我々がオンラインで指示しながら現場でそのエンジニアに動いてもらうといったことを進めています。まだまだ課題はありますが、今は「これから使えるな」と手応えを感じています。

本紙 山崎技研さんの機械は、小ロット向け加工に、何より使ってみて良さがわかるというのが特徴ですね。リアル展示会の中止・延期は厳しいと思いますが、どのような対応を?

山崎 ええ非常に厳しいです。我々の機械は操作盤をピッと押せば勝手にモノを作ってくれるような機械ではなくて、お客さんが機械をさわって操作し、ご自身の技術を使って加工していく工作機械ですから、リアル展ができないのは非常に苦しい。ですが、当社の営業は全員がセールスエンジニアなので、普通の営業であればこういうご時勢に機械のPRだけの訪問は難しいことでしょうが、機械の調子どうですか、なんならチェックし修理までしますよ、とエンジニアとしてお客様に寄り添った話をすれば、タイムリーなトピックをお聞ききすることもできます。こうしたセールエンジニアの活動が強みになっていることは確かですね。

本紙 をくだ屋技研さん、同じ質問で

今江(をくだ屋技研)ユーザーさんとリアルにお話することが難しいご時勢なので、トピックスとして少し前から製品やアフターサービスの内容をどんどん動画でアップしHP等に掲載する取り組みを進めています。
そうしたなか最近は、私たちが動画を作らなくても、お客さんがユーチューブで「をくだ屋の製品修理してみた!」といった動画アップしてくれて、とても有難い(笑)。我々の営業もちゃっかりしたもので、お客様がアップした動画を、別の営業先で「見ておいてください」などと上手に利用する(笑)、ことにもなっています。
その一方、皆さんからはWEB展の話題も出ましたが、業界横断的な大きなオンライン見本市に参加しても、わたしどもの商品は周辺機器的なものが多く、なかなか当社サイトまで誘導するのは厳しかったように思います。それに当社の商品は、切削工具のように加工時間がどれだけ短くなるとか効率が何割上がるなどと、数字や理屈で表現しにくいものが多く、やはりリアルに見てもらうのが一番です。以前からやっているようにデモ機をもっていって体感してもらう、これが受注確率の最も高い方法です。だからリアルな営業に制約が続くのは厳しいですね。
あとDXの関係では、当社も遅ればせながら昨年7月、(6月決算を終えた)今期のスタートと同時に基幹システムを入れ替え、新しいインフラも整えました。リモートワークやペーパレス化もどんどん進めています。在宅化は、製造現場はなかなか難しいのですが、営業や設計・技術部門でチャレンジングに増やしています。

本紙 ありがとうございます。では商社の立場からみたコロナ禍による変化と、そこへの対応について、山善・佐々木専務お願いします。

佐々木(山善)はい。山善の佐々木です。冒頭オーエスジーの近田本部長が「これまでは対面営業が中心で強みだった」と言われたように、私どもも顧客密着を得意とした営業を続けていて、皆様に長年お世話になっている展示商談会「どてらい市」をはじめとして、いわば泥臭い販売企画を進めてきました。しかしこれがほぼピタリと、2年前からできなくなったわけです。コロナ禍の当初は社内も混乱しました。オンライン対応機器も行き渡っていない状況でしたので、まず機器を揃え、在宅勤務を少しずつ増やし、営業は訪問自粛を余儀なくされましたので、やはりWEBを利用した営業を進めてきました。
ですが、WEBだけではなかなか受注に辿りつかないということも経験知でだんだんみえてきました。WEBを使った幅広い商品提案であるとか、情報提供はうまくいったものの、そこに私どもの得意なリアル営業の部分を、どうにか組み合わせていかねばと感じています。
正直、大事な商談や営業のクロージングはリアルでないと、との思いがあります。WEB上ではなかなかお客様のお考えになっていることが判断つきません。最後は相手のお顔をみて、お客様がどういう反応を示されるか、顔色、顔つき、しぐさなどを見てですね、相手が納得されているかどうか察しながら商談を進めていく、そのあたりが一番商売で大事だと思います。そういうことを念頭に今はWEBとリアルのハイブリッド営業を進めています。


マーケット提案

最近の取り組みは?


コロナの様々な影響に関し、各社からは主に社内的な対応に関する話がまず出た。その後、会話は新たな市場提案など、ビジネス上の取り組みに関する話題に広がった。


佐々木 今申し上げたWEBとリアルを組み合わせた営業を続けるなか、山善としての提案の方向を申し上げますと、特に昨今は社会的課題を解決するのが一番のテーマかと感じています。ESG(環境・社会・ガバナンス)が盛んにいわれてきましたが、一つにはやはり環境対応に即した商品提案が事業として重要になります。私どもでは昨年4月、営業本部内にグリーン・リカバリー・ビジネス部という新たな部署を発足しました。これは今言いましたグリーンビジネスに対応するということで、特にいまPPA(パワー・パーチェス・アグリーメント)事業を中心に提案させていただいています。PPA事業とは再エネ電力を供給するもので、例えば皆様の工場の屋根に、私どもが太陽光パネルを敷設し、イニシャルコストは山善で負担させていただき、お客様は初期投資無しにそこで生み出される再エネ電力を長期契約で買っていただくというスタイルです。昨年10月には大阪ガスさんの関連会社であるDaigasエナジーさんと業務提携をし、大ガスさんサイドでメンテ関係をお願いするということで進めています。
もう一つDXについても大きなテーマになっていますが、当社は昨年101日付で経済産業省のDX認定事業者に選定されました。まだ何が提案できるという段階には至ってないものの、今年は基幹システムも刷新しますので、これと連携して新たな取り組みを具体的に進めるつもりです。
繰り返しになりますが、いまは社会的課題の解決が大きなビジネスチャンスになります。人手不足感が続く中、自動化などはこれまでも製造業のテーマであったわけですが、社会的課題として自動化の流れには加速がはじまっていると認識します。いずれにせよ、こうしたテーマを重視しつつ、市場のニーズをいかに的確に早く収集するか。卸の役割を果たしながら、販売店さんとしっかり連携を取って進めます。

本紙 市場テーマに関し、オークマさんは最近、脱炭素という切り口で自社の工作機械をアピールされています。まさに社会的課題ですが、実際の市場の反響はどうなんでしょう。

小田 はい、大きな反響を感じています。弊社はコロナ感染が落ち着いた昨年11月にプライベートショーを開催しました。4000名近いお客様に来場いただいたのですが、その時にちょっとした驚きがありました。つい1年前は「カーボンニュートラル(以下CN)」に関心を示さなかったお客様から「CNはどのように取り組めば良いのか?」、「会社でCNを考えろと言われたが、どこからはじめれば良いのか」等の質問を多く受けました。展示会ではCO2の排出量を「知る」「減らす」「埋め合わす」ことの重要性を大きなパネルを使って紹介しましたが、機械以上にパネルに食いつかれるお客様が多く驚きました。また中堅や大手のお客様から、今後は機械を選ぶ中で従来機に比べCO2排出量の低減率を問うことになると話を聞き、一挙にCNへの取り組みが加速してきたと実感しました。

本紙 まさに急変化ですね。

小田 そう、この一年であっという間に変わったなという印象を受けています。

山崎 CNについてはおっしゃるように非常に大きなトピックで、わたしども山崎技研も取り組みを強化していますが、いつのまにか市場全体で強い関心になっていますね。当社は創業者が戦後間もなくから自然環境保護に力を入れていて、もとからエコロジー活動は盛んでした。そういうことを経て昨今の取り組みを申し上げますと、製造現場からCO2を徹底削減するというのは難しいので、最低限、自社で出した炭素は自社でオフセットするよう課しています。具体的にいえば約350ヘクタールの森林を保有・管理していて、森林による炭素の吸収と、太陽光パネルの設置で炭素排出量を削減し、全体でオフセットできるようにしています。ただCNへの取り組みにはそれなりにコストが掛かります。機械の販売価格に転嫁しないで済むよう、低コストで上手にやっていきたいと思っています。

本紙 CNに向けた取り組みが多くの企業で進み、顧客への提案テーマとしても重要性を帯びているのでしょうね。昨今は取り組まないリスクということも聞かれます。

松井 私どもTHKも積極的に取り組んでいます。社内のCO2削減計画では2018年を基準として30年に半減、50年にゼロにする目標です。工場のみならず営業所においても2%でも1%でも減らそうと全社で実践しています。
そうしたなかCNに関連して、クルマのみならず産業界全体に電動化の波が広がっていると感じます。これが当社には追い風です。当社の製品は電動化されたシステムに使われるものが多く、それで油圧から電動に、エア動力から電動にという流れが今出ていて、例えばモーター向けボールねじ需要が膨らむといったことになっています。電動化の波がすべて脱炭素の観点から起きているとは言いませんが、カーボン削減に向け、動力を電動式にスイッチする流れは確実にあると感じますね。

近田 コロナ禍を背景として社会活動の在り方が急変化してきたなか、EV化を含めた電動化の流れもそうでしょうし、昨今のカーボンオフセットも、また私どもが取り組んでいる省エネもそうだし、自動化もそうですが、テーマ性もまた、コロナ禍によって拡大し、想像以上に重みを増している感じですね。

本紙 同感です。特に自動化は業種を問わず喫緊のテーマとして広がっていますね。日東工器さんは幅広い産業分野に省力化・省人化商品を提供されていますが、このあたりどう感じられますか。

石澤 ご指摘のように自動化はユーザーさんサイドでどんどん進んでいます。私どもでは手で作業する工具を多く生産していますが、いち早く自動化に対応しようと進めていきました。一例にネジ締め電動工具のデルボという商品がありまして、これは基本、手でネジを締めるものなんですが、いま引き合いは自動化に対応した仕様が非常に増えています。ネジ締めだけでなく、他の商品においても自動化対応の品揃えを増やしていく考えです。

髙山 コロナに関連して自動化のことを申し上げると、お客様からは従業員に感染者や濃厚接触者が出て生産計画がままならない、といった話を聞くようになりました。また実際に感染者が出なくてもそういうリスクは常につきまとっているわけです。そうしたなか自動化の流れはここにきて一気に強くなっています。それも工程の一部の自動化ではなく、全体として自動化・無人化しようという大きな取り組みになってきています。

本紙 CNや自動化など市場のホットなテーマが色々出ましたが、ほかはどうでしょう。

山崎 我々が作っている工作機械はニッチに特化していて、量産品ではなくて多品種少量加工向けをターゲットとして、主に中小製造業の皆様に使っていただいています。ですからいま出た自動化や無人化とはいわば真逆の方向です。
そうしたなか時代のテーマに絡めると、働き方改革に取り組まれる大手さんから中小に仕事が流れ、今非常に忙しいという中小のお客様が増えています。こうした状況のなかで我々に対する要望としては、いろんな加工に対応できる特殊仕様の要求がどんどん出ています。柔軟にお応えできるよう、会社として注力しているところです。

本紙 マテハン関連から唯一参加いただいた、をくだ屋技研さんはいかがでしょう。

今江 をくだ屋技研ではコロナ感染症が起きる前からですが、お客様の困りごとの解決に真摯に取り組もうと活動してきました。そこから製品を改良したり新製品の開発に取り組んでいます。

本紙 ユーザーの困り事は多岐に渡る?

今江 ええ。それを探しに行くこともあれば、直接お聞きすることもあります。先ほどからの自動化や省力化に絡んでは、手動の台車やリフターにアシスト機構を付加するといったことを進めていて市場で好評です。というのも、皆さんからは無人化を指向するといった話が出ましたが、私どもの業界ではちょっと違っていて、無人化ではなく、高齢化社会のなかで「従業員にラクに仕事をさせたい」というのが困り事として増えており強いニーズにもなっています。例をひとつ言えば、パチンコ・スロットの台の交換作業。マンパワーであの高さ、あの重さを入れ替えるわけですから作業の負荷は大きく腰などを痛めかねない。だから困っている、省力化できないかと私どもに話がきます。そういう現場は多くあります。介護関係などもまさにそうですね。


メーカーと商社、新たなコラボの方向は?


いろんな変化が沸き起こるなか、市場ニーズもより多様化し、企業の壁を越えた「協業」での対応が、顧客満足を得るために欠かせなくなってきた。ここでは主に、メーカーと商社のコラボレーションの可能性、方向性について考えを聞いた。


本紙 座談会のタイトルにあげた製販協業に関し、コラボレーションの今後の在り方や、メーカーから商社への要望といったことをお聞かせください。

山崎(山崎技研) 皆さんご存知かと思いますが、我々は半世紀以上にわたって山善さんに総発売元をお願いしています。当社は本社が地理的にも田舎にあり(高知県香美市)、情報を得るのが遅い面もあります。そんな中で商社さんに求めるのはまず、市場ニーズなどの情報の素早い発信と共有ですね。ほか山善さんに対する要望としては、山善さんの海外拠点はエンジニア機能を充実されていて、アジアなど海外の取り組みでは商社の枠を超えた動きをしてもらっています。このことが我々中小メーカーにとって非常に助かっています。
そこでまあ、国内ではまた違ったスタイルになるのでしょうが、海外のようなコラボレーションが日本でも出来ればいいなと、要望といいますかそんなことを思っています。

髙山(牧野フライス製作所) 販売商社さんとは一体となった営業活動をやっていきたいと思います。特に山善さんはさまざまな業種にアプローチされているので、そういった部分で共創という、お互いに付加価値を高めながら、さまざまなお客様へのご提案を積極的に創り出したいですね。マキノの取り組むデジタル化を充実させ、流通商社さんといっしょになったデジタル活用で、営業の効率化も進めたいと思います。

小田(オークマ) パートナーである商社への要望ですが、一番は多くの「ご注文書」をいただきたい(笑)。これが本音ですね。その為にも2つことを申し上げます。
一つ目は技術提案力という部分です。これはメーカーにとっても大変必要な事なことですが、商社さんにもお願いしたい。オークマは工作機械メーカーであって、例えば本格的な自動化ラインの要求があった場合、われわれの専門外の周辺機器が増えてきます。こういったところで商社さんにトータルな技術コーディネートをしていただきたいし、山善さんなら全体を俯瞰する力をお持ちですから、そういった要求に応えられると思います。
二つ目は情報の発信力です。メーカーの情報はどうしても偏りがち、山善さんが販売店を通じて集められる膨大な量の情報は宝であり、集めた情報を分析し業界トレンドや将来の方向性、ユーザーニーズを知ることが出来ますので、売る為の戦略を一緒になって考え進めていきたいと思います。また山善さんの家電はネット販売が大きく伸びており、膨大な顧客データを収集し分析されている。こうしたデータに加え、これまで蓄積したノウハウを加味した山善さんの知見は見習うべき点が多いと思います。

本紙 小田副本部長は国内とともにアジア全域の営業もみていらっしゃいます。山崎技研さんからもご発言がありましたが、アジアなどにおける商社との協業についてはいかがでしょう。

小田 はい。海外で数字をつくるうえでの苦労は、現地ローカルのお客様と私どもとの考え方の相違といった壁を乗り越えることだと思います。それぞれに文化や歴史の違いがあり、それを柔和に取り纏めてくれる山善さんの現地スタッフのお力は実に頼もしく、頼りになるビジネスパートナーとして、今後も大きな期待をしています。

本紙 山善の岸田副本部長、山善の海外でのエンジニア機能、あるいはスタッフの活動についてお話が出ました。受け止めて発言ください。

岸田(山善) 当社の海外のエンジニア、技術スタッフに関してお褒めの言葉をいただき有難うございます。しかし謙遜ではなく実力はまだまだです。メーカーさんのエンジニアの方に比べたら能力不足のエンジニアもたくさんいますので、改善の余地大ですが、エンジニアリング機能は弊社海外事業の重要キャラクターですので引き続き高めてゆきたいと思っています。
ただ、このコロナ禍における海外事業において、現有戦力=人材と組織を維持してきたことは、振り返ってみてよかったと思っています。コロナが海外で猛威を振るい始めた2年前に多少縮小しようとの考えもあったのですが、海外戦力をフルに残したうえで何とか勝ち抜いていこうという最終決断を20203月頃にしました。その結果、海外のお客様から「メーカーにサポートしてもらいたいがなかなか難しい。山善が代行でサービスしてくれないか」といったご依頼がかなり入ってまいりまして、出来得る限りの対応はさせていただきました。少しはお役に立てたのではないかと思っています。
しかしながら、海外スタッフに関しては難しい問題も抱えています。ひとつはなんといってもコロナが長引く中での景気回復によって、人手不足が多くの国・地域で目立ち、特にアジアでは賃金が著しく上がっています。この傾向は労働者からの要求というよりも、雇用する側が自ら吊り上げているイメージですね。正直申し上げて当社でも、現地の優秀なエンジニアが、給与が随分上がるからと引き抜かれた例があります。もう人材の争奪戦です。山善のエンジニアとひと口にいっても、トラブルをシューティングする担当から、生産ライン全体を工数設定含めフルターンキーで纏め上げられるアプリケーションエンジニア、また自動化に対応できる者まで様々なレベルがあります。人材争奪に関しては「技術商社として生き残る」という覚悟と、その覚悟を持って彼らの能力を高める教育を今後どのようにやっていくべきか、方向性を示す必要がありますね。

本紙 優秀な人材を育てても、そこを狙い撃ちでヘッドハントされればたまらない

岸田 そう、このあたりマキノさんなんかはどう感じていらっしゃいますか? 大きな問題ですよね?

髙山 そういう話は今いっぱい出てきましたね。おっしゃるように大変シビアな問題です。

本紙 「倍の給料だすから」といった誘いもあるようですね。人材が奪われることは看過できませんが、ナショナルスタッフを積極登用し、会社として社員の求心力を高める姿勢は山善のなかで一貫されているようです。

岸田 ええ。私どもの海外事業には4つの大きな方針があります。最も重要な一つ目が「経営の現地化」です。ほかの方針は「ターゲット市場の地理的な拡大と編成」、「ターゲット業種の多様化」、「仕入先メーカーさんとの更なる協業体制構築」です。
経営の現地化は、まさに現地に任せるということですが、これは何も当社独自の考えというわけではありません。お客様においても、例えば日系企業さんの中国工場では、以前の購買責任者担は日本人でしたが、今はもう現地の方が権限を持っておられます。米国市場も同様ですね。かつては、現地社員の方との商談であっても、最後は日本人の責任者が出てこられて日本流で厳しく言われ、こちらも日本人社員が出ていって対応するという、ある種厳しいながらもほのぼのとした交渉風景がありました。しかし今は違いますね。権限は現地の方へ移譲されていますから、日本人がのこのこ出掛け「まいど!前回と同様よろしく!」などいっても聞いていただけない。要はそうしたなか、当社のエンジニアも営業も、現地スタッフのレベルを上げ、現場仕事から経営まで任せていくことが必須になっています。それを私どもは少し早くからやってきたということです。来年度からの新しい中期経営計画でも、海外戦略の最初のテーマは「経営の現地化」にするつもりです。

本紙 海外事情などありがとうございます。メーカーから商社への要望などについて、再びメーカーさんにうかがいます。をくだ屋技研さんお願いします。

今江(をくだ屋技研) 商社さんへの要望や期待をいえば、ここ最近、仕事をしていて感じるのですが、ユーザーさん主導の引き合いが多いかなということです。例えばをくだ屋のあの商品もってきてという話がまず販売店さんに行き、代理店さんに行き、そのままメーカーに問い合せが来るということが以前より増えています。私が現場を走り回っていた時代は情報が少なかったせいもありますが、ユーザーさんがこんな仕事をしたいから何かいい道具はないかと販売店さんに相談され、販売店さんは、であれば、をくだ屋のこの商品がいいといった具合に提案され「メーカーを連れて説明に上がります」と話が進んだものです。すると僕らは喜んで同行営業に行くと。翻って今はユーザーさんが決めて、流通が受身で応える形が多くなっています。
そうしたなかで流通には、私どもメーカーの新商品を勉強してもらって、お客が知る前に先に提案するということをやってもらいたいですし、我々メーカーもWEBでの勉強会や資料作りをもっとやっていかなきゃと感じています。受身ではなく、提案型の営業に転換していくことが大事でしょうね。

石澤(日東工器) ユーザー様からのご要望の内容がだいぶ昔とはちがうということは、私も感じています。
そうしたなかでひとつ申し上げたいのは、「買う人の知識以上のものは決して購入されない」ということです。ですからユーザーの皆さんも知識・情報を拡げる為に展示会に行ったり、メーカーに聞いたり講習会を受けたりしておられます。私どもとしては、いちはやく新しい提案をしていくべきでしょうし、そうしたお客様との積極的な関係性の中で我々メーカーにも新製品のアイデアなどがたくさん出てくるはずです。
ご質問の流通商社さんへの要望については、日東工器は山善さんはじめ販売店各位のご支援のもとに事業を進めているメーカーですので、これ以上の大きな要望はありませんが、今後、工程を超えた全体的な自動化といった要求が広がって、システムインテグレーターさんの仕事を含めて大きな引き合いへの対応が商社さんに増えてくると思います。そうしたなかで私どもの継手や工具などの商品も、同時にシステムへ組み入れ販売していく形で、ご尽力いただければ有難いですね。

本紙 そういう面での商社との協業は深まっていますか。

石澤 そうですね。お客様は単品でなくユニットとして購入したいというご要望が多くなっていて、中間の商社さんに組み合わせていただくといったことも、お願いしています。こうしたことがいま本当に重要だなと思います。

本紙 THKさん、流通商社への要望に関して

松井(THK) ご要望というよりお願いというレベルになりますが、一番欲しいのはやはり情報ですね。具体的な案件の情報もそうですし、業界別の状況に関するものや、中期的な視点でのニーズの変化、こういう分野のこういう機械に引き合いが増えてきたよとか、そういう情報を定期的にいただければと思います。同時に不特定多数のユーザーへのフォローをいっしょになって是非強化したいですね。THKの国内営業は百数十名しかいません。対してお客様は数千社からあります。そうしたなかで不特定多数のお客様へのサービスの向上をいかに実践していくかが大事だと最近は特に認識しています。このあたりを山善さんとTHKでともに考え、工夫し、よくみえていないお客様に対しても、サービスを向上させたいですね。
ひとつ付け加えさせていただくと、THKの新しい方針としていま「ものづくりサービス業への大転換」を掲げています。ビフォーからアフターまでのすべてのサービスが私どもの仕事という考えに切り替えています。
この考えをベースに、オムニエッジというIoT関連のシステム商品に力を入れていて、これはLMガイドやボールねじ等の状態を監視しながら予兆検知機能でメンテナンスまでカバーするものです。いままでTHKは目に見える「モノ」しか販売してきませんでしたが、新たにサービスという、いわば形のない商品をオムニエッジ で揃えることができました。ここを当社の代理店のなかでいち早く注目していただければと思います。

本紙 オーエスジーさん、同じ質問です。

近田(オーエスジー) 皆さんからいろんなお話が出て、出尽し感もありますが(苦笑)、流通の皆様方へのご要望ということで考えを言いますと、流通という漢字のごとく、各メーカーの商品やサービスをお客様とわたしどもメーカーの間に入って市場に広げていただくとともに、昨今では情報という面でもまたこれを「流し通し」て、価値を作っておられます。私どものビジネスは基本、お客様の悩み、困りごとを解決することで生まれるものですが、その悩み、困りごとが様変わりしました。モノからコトへといいましょうか、従来の概念にない要求が増えています。そのあたりで山善さんのような専門商社さんがいろんな販売店さん、ユーザーさんから、またいろんな角度から情報を収集し、コーディネート力で対応いただければと大変期待しています。

本紙 有難うございます。メーカー同士のコラボということでも、最近の取り組みなど少しお教えください。

石澤 メーカー同士でいいますと、当社の継手や工具などをロボットや自動機メーカーさんにいろいろ提案をさせていただいています。そうしたなかで当社の商品をカタログに載せていただく、逆に私どももまた、自社のカタログにロボットや自動機の情報を載せるという、相互の協力も進めています。

本紙 そうした取り組みにより市場への提案内容も厚みを増しますね。工作機械でいえば削りの高効率化だけでなく、前後工程を含めた生産性の向上といったことが問われ、これがコラボレーションの契機になっているようです。

髙山 そうです。マキノではたかだか放電加工機とマシニングセンタを提供しているだけで、お客様は加工だけでなく測定もあれば工程全体の自動化といったことも考えてらっしゃる。突き詰めれば、いくつもの工程を全体としてどう時間を縮減し、高度にしていくかということです。切削はその中のごくわずかですから、いろんな周辺装置メーカーさんとともに提案の引き出しを増やさないと、お客様にも響かないだろうと感じています。

本紙 そのためのメーカー同士のパートナー関係は実際深まっていますか

髙山 深まっていると思います。加工したら測定が必要ですし、例えば5軸加工を行っている場合、お客様はワークを外さず測定したいというニーズがありますから、どうしたら三次元曲面の測定を機械の中で簡易にできるかといった点で、技術的な協業がはじまっています。

本紙 オークマさんは?

小田 地域に密着したテクニカルセンタを各地で作っていますが、昨年5月開設の西日本CSセンター(広島県福山市)では、弊社の機械とともに、オーエスジーさんの切削工具をはじめツーリング、CADCAMメーカーさんのソフト、また三次元測定機や形状測定機といった周辺装置メーカーさんの機器・ツールの展示を常設していて、お客様から依頼を受けたテストカットを、加工プログラムを作り、最新工具で削り、削った後のワークを測定するという流れを構築して提案しています。マキノさんがおっしゃるように、コラボを通じたトータルな提案は必要不可欠です。

本紙 マテハン分野ではどうでしょう

今江 先ほどお客様の困りごとの解決を図ると申し上げましたが、そうなると当社だけでは解決できない部分もでてきますので、そこを埋めるように他社さんといっしょに取り組み、共同で製品化するといった事例が出ています。共同開発品をわたしどもでも販売するし、コラボしたお会社も、少しいじった別商品として販売されるという形もあります。

本紙 そういうコラボは今、特定の相手ではなく、いろんなプレーヤーと柔軟に補完しあうという形ですか

今江 ええ、技術提携契約を最初に交わすといった厳格な感じではなく、互いにWINWINの関係になればいいよねと、そういうところから自然とコラボが深まっていくことが多いのではないでしょうか。

本紙 オークマさん、工作機械メーカーも柔軟に補完しあうコラボの形が主流でしょうか。

小田 そうですね。ただビジネス上の難しさはあります。例えばお客様からCADCAMはこのソフトを使用しているがどう思うか? どのメーカー良いのか? といった質問を受けた場合、その返答がオークマの考えになってしまうことがありますので、コラボの成果がそのままビジネスに直結するわけでもありません。当然「この点が良い」と提案は進めますが

本紙 マキノさんはどうみられる?

髙山 技術提携といったガチガチの取り組みではなく、自然な形でコラボが生まれているとは思います。ただオークマさんがおっしゃったようにお客様の今までのご経験も入ってきますから、そのあたりも汲み取っていろいろご提案していく、そんななかで協業を進めるという形でしょうね。

本紙 再びメーカーと商社の協業に話を戻しますと、いろんなメーカーの商品を販売してきた実績をベースに、柔軟な商品の組み合わせでトータルな提案をするといったことは、商社にアドバンテージがありますね。

佐々木(山善)卸商社としてどこまでできるのかという面もありますが、私どもではひとつ、TFS(トータルファクトリーソリューション)という部署を軸に機能商社化を進めています。いろんな技術的要素も含めてですね、先ほどマキノの髙山本部長がおっしゃったようにやはり加工時間だけが短くなっても仕方がない、前後工程を含めてのトータルな提案をしようと。そういうお手伝いをもっとできるような態勢づくりをいま強化しています。


象徴「どてらい市」と、今後の協業の可能性


メーカーと流通商社の協業の象徴的な催しが、当座談会のメンバー企業すべてが参加されてきた展示商談会「どてらい市」であった。協業の象徴としての「どてらい市」を再評価しながら、最後、将来の製販協業の可能性を改めて語ってもらった。


佐々木 どてらい市については私から申し上げます。1975年にスタートし毎年全国で開催してきたわけですが、会場によっては45回の開催を数えます。残念ながらこの2年間はコロナ禍でほとんどを中止しました。しかしこの中止によって、少し口幅ったい言い方ではありますが、地域のものづくり、地場産業の発展に少しは貢献できていたと価値を再認識しています。それともう一点、どてらい市は情報交換をはじめとして大きなコミュニケーションの場でもあってきました。残念ながらどてらい市の中止によって主催店様やメーカーの皆さんと会う機会も本当に少なくなっています。本来でいえば225日から東京どてらい市を開催予定でしたが、これもオミクロン株の感染蔓延をうけ止む無く延期にさせていただきました。今年3月までのどてらい市はすべて延期ないし中止となっています。今後の開催については心情的にはできるかぎりウイズコロナの姿勢で進めたいのですが、こればっかりは気持ちだけではどうにもできず、いろんな要素、状況をしっかり見極めながら都度、適切に判断していきます。

今江 どてらい市の魅力のひとつが即売市という側面で、当社には即売に適した商品群がありますのでいつも期待してきました。どてらい市の中止が続いた結果、台数で半分程にも落ち込んだ商品があるほどです。ずっと継続開催されている時は、マンネリ化の声も聞き、私どももそういう感じを覚えたこともありましたが、いざ無くなるとあらためて展示即売会どてらい市のありがたみが分かりますね。また販売店さんと事前PRをするなかでコミュニケーションが深まり、どてらい市閉幕後も新しい仕事にいっしょになって取り組んでいくといった経験も随分ありました。いろんな価値を感じています。

山崎 今はやはりリアル展示会の再開を非常に強く望んでいます。特にどてらい市はメーカー間の情報交換の場でもあり、メーカー同士のコラボレーションも会場でのさり気ない会話から「あっそれいいね」と取り組むことがよくありました。しかし中止になってからは、こうした話もウンと減っています。再開を強く期待します。
また我々メーカーと商社さんの今後のパートナーシップについてですが、やはりメーカーは作るプロ。各社技術で強みを持ち独自性もお持ちです。対して商社さんは売るプロで、いろいろな商品を取り扱ってトータル提案も出来るし、交通整理も出来る。そういうところでメーカーの強み、それから商社の強みを掛けあわせ、さらにユーザーさんを含めたパートナーシップ関係を深め、相互に繁栄していければ将来は明るいと思います。

石澤 どてらい市では毎年多くの販売をさせていただいており感謝しております。皆さんのお話のように、直接の価値は売上だったり、ユーザーさんとのコミュニケーション、販売店さんとの連携などがあります。更に他方では、間接的な価値と言えるのか判りませんが、私どもの経験でいえばどてらい市は営業の「いろは」であり、販売に必要な要素がすべて含まれていて、貴重な社員教育の場と思っています。開催が決まると成約目標額をどういう形で達成するのか戦略会議を開き、販売店さんとともに計画をたて同行PRをし、当日の会場で目標達成のために最後のPRをするという営業のPDCAそのものの取り組みが、凝縮されたイベントになっています。この2年間は、どてらい市がなかったので、当社の新入社員も経験しておらず、一刻も早く再開できればと思います。
またパートナーシップに関して申し上げると、山善さんは私たちにとってみればハブの存在だと感じています。山善さんが方針を出していただけると、それによって業界が動くということも数多くあると思います。これからもリーダーシップをとってハブとしての役割を期待したいと思います。

松井 私はリアルの展示会の重要さを凄く感じているつもりです。昨年、コロナ禍のなかで関西物流展に出展しました。久しぶりのリアルの展示会で凄く嬉しかったです。お客さんの顔が見られ、何かお話すれば反応してくれる、リアルの展示会って本当にいいなあと。特にどてらい市は、来場されるお客様だけでなく出展メーカーの皆様もTHKのお客様で、商社さん販売店・特約店の皆様もTHKのパートナーであります。そんなすべての方々とコミュニケーションをとれるという、これが一番の魅力であり、コロナで中止になって大変困っています。それから将来に向けたパートナー関係については、今後THK製品を単体販売いただくだけじゃなく、山善さんの取り扱いメーカーさんとタッグを組めるような何か、打つ手を考え実行していただければと考えています。

髙山 どてらい市に代表されるように対面の展示会というのは情報量一つとってもお客様からいろんなお話をお聞きでき、リアルに勝るものはないと私も思います。ただ展示会にすべての機械を展示できませんので、その地域製造業のニーズ・特色に合致した機械を出品して欲しいといったことを、もっとマキノにぶつけていただければ有難いですね。展示会というのはいっときの催しですが、イベント前の種まきから収穫までを見据えた一連の活動を当社として力を入れていかねばと感じています。
商社との協業ということではいっしょになってお客さんを開拓したり、市場を発掘したいですし、他方で協業ではなくて、山善さんには優秀な営業部隊がありますので営業の領域でお任せするところは任せたうえで、弊社の役割についてはまた相談させていただくと、そういう関係も進めていけたらと思います。

小田 どてらい市ですが、皆さんがおっしゃった価値とともに、その集客力も目を見張るものがあります。また、来場されたお客様から機械の注文をその場でいただくという経験を私自身していますが、お客様の購買意欲をかきたてる何か不思議な力のある展示会と思います。先ほど日東工器の石澤常務がおっしゃったように、どてらい市が開催される前日まで、山善の営業マンと販売店さんと取り組んでいく販促活動は苦労が多いのですが、その分、ご注文いただいた時の達成感は、実に味わい深いものがありますね。営業として貴重な体験になります。そうした価値を大事にして、これからも共に、どてらい市の歴史を刻んでいきたいと思います。
山善さんとのパートナーシップについては何度も申し上げますが、山善さんには技術提案力と情報発信力をお願いしたいと思います。お客様の新しいニーズにミートしている各メーカーの商品やシステムを、是非山善さんがトータルコーディネートしてくれることを期待しています。

近田 どてらい市については私も入社以来、石澤常務おっしゃるとおり大変勉強させていただいていて、当社の営業を育てるOJTの場という価値を感じてきました。また商談のリアルな空気感、感覚についても学びになり、お客様もまたそこを求め続けるだろうという点でずっと価値があると思っています。同時に切削工具は実演を通して価値が感じられるものですから、見て、触れて、しかも機械メーカーさんのお力添えをいただいたうえ実加工も積極的にお見せするというスタイルは大変有難いですね。
我々がビジネスとしてお客様の困りごとを解決することは必ず価値として残りますので、ここを販売店さん、山善さんといっしょになってやっていければ「協業」の価値は続きますし、お客さまにも振り向いてもらえると思っています。この部分で情報や課題を共有し、またなにより協業の量といいますか、取り組みの量が価値の量や質にもなっていくと思いますので、これをお願いいたします。

本紙 ありがとうございます。まだご意見は続く感じですが時間がきました。皆様のご意見を受け止め最後山善からお願いします。

佐々木 今日は貴重なご意見をお聞きしました。最後は私ではなく、岸田から話をさせていただきます。

岸田 はい。皆様、本日はお忙しいところ長時間にわたっておつきあいいただき有難うございました。私は海外の生産財事業を担当しておりますが、特に海外市場ではコロナだけでなく本当に大きな変化がこの数年の間に起こっていると思っています。特に我々が長年に亘って主要ターゲットとしてきた自動車産業が大きな変化に直面していることを肌で感じます。お客様の会社規模に関わらずカーボンニュートラルの波が、過去には思い描けなかった変化を起こし、苦悩されているお客様も多くいらっしゃいます。その波を見ながら、弊社も長期戦略を練り直しています。  
そうしたなか、皆様とともに勝ち残っていくひとつのポイントとして、メーカー様を「海外市場における真のパートナー」と位置付け、より緊密な関係を構築したいと考えています。山善が60年に亘って海外でお付き合いを広げてきた多くのお客様が、今本当に困っていらっしゃる。日系、海外系にとらわれず、そういうお客様のお役に立てるよう仕入れ先メーカーの皆様方と協力しながら海外生産財事業活動を進めていければと思います。
特に今日お集まりの皆様とは、国内外共に様々なコラボを具体的に実践しながら、広くお付き合いいただければ幸いと存じます。本日は有難うございました。

2022310日号掲載)