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Opinion

本命は明らかにハイブリッド車

-日本で電動車の本命は何だと思いますか。

いわさだ・るみこ 神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会委員。

モータージャーナリスト 岩貞 るみこ 氏

「本命はすでに本格普及しているハイブリッド車(HV)であることは明らかです。1つの指標になるのはトヨタ自動車の動きで、トヨタは25年までに全車種を電動化すると 17年の記者発表で宣言しました。これは、全車種に必ずHVなど電気モーターを搭載した電動車を用意するということ。トヨタ車は日本国内の乗用車販売数の半数を占めているので、他の自動車メーカーも同じような考えで展開していくものと思われます」

-逆に考えると 25年以降も引き続きエンジン車を選択することができるということですね。

「選べます。そこはユーザーの事情も考慮されます。HVはどうしても車両本体価格が高くなります。HVはたしかに燃費はよくなりますが、一般のドライバーが車を買い替えるまでに810年間乗ったときの走行距離を考えると、エンジン車とHVの燃料費の差額よりも車両本体価格の差の方が大きい。つまりエンジン車の方が安く乗れることになります。走行距離が多くない人ならなおさらです。なので、初期費用を抑えたい、という人のためにも販売するすべての車をHVにするのにはもう少し時間がかかりますが、世界的な電動化の動きを見ながら調整していくことになるはずです」

EVの時代がくるといわれています。

HVの場合、ガソリンスタンドに行ってガソリンを入れて走らせるだけなので、ユーザーはエンジン車とほとんど変わらない使い方で乗れます。ところがEVになると充電設備が十分に整っていないという大きな問題があります。EVのテスラ車が人気と聞けばEVの時代になると思われがちですが、街中にある充電設備で充電しようとすると15分くらいはかかります。高速道路のサービスエリアにも充電設備はありますが、連休で多くの車が移動するときには、充電設備の前で充電渋滞が発生しそうです。自宅でも充電はできますが、マンション住まいや貸駐車場を利用する方は充電できないためEVを導入しにくい。あとEVの最大の課題はエネルギー政策とセットで考えなければならないことです。フランスでは原子力と再生可能エネルギーで作っている電気の比率が8割を超えているのでCO2の排出は少ない。でも日本の場合は火力発電が多くを占めているので、発電のときに出すCO2の量が多いのです。末端の車両でCO2を出さなくても電気を作る時に出していればそれはエコとは言えません」

EVはかなり分が悪いですね。

「電気は溜めておくことができないので、電力会社は需要ピークに合わせてすべての発電設備を作っています。日本は夏のお盆あたりが一番暑くて家庭での消費電力も多い。そこにさらに、民族大移動のように走らせる車を全部EVにするとなれば、足りないことは明らかです。EVの普及は車両本体だけでなくエネルギー政策、インフラ政策とセットにして考えなければなりません」

-水素を使った燃料電池車(FCV)は水しか排出しないので魅力的です。

FCVについては水素ステーションと車体価格の問題があります。先日、トヨタのミライがフルモデルチェンジされ注目されています。ただ、FCVはまだ製造にコストがかかるため、利益が出るようにするにはもっとコストダウンさせなければなりません。水素の充填も、ガソリン給油に比べるとまだまだ時間がかかるので、そこも解決する必要がありますし、なんといっても水素ステーションを増やす必要があります」