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Opinion

金沢大学設計製造技術研究所 古本 達明 教授

ポーラス構造もつ金属AM金型、離型力を発揮

「金属AM(Additive Manufacturing=積層造形加工)は造形後の変形・反り、空隙の発生など解決すべき課題が残っているが、メカニズムを正確に理解することで従来では不具合とされる内容も有効に活用できる」

製造にかかわる研究が盛んな金沢大学に2019年にできた設計製造技術研究所の古本達明教授はそう話す。1980年に小玉秀男氏によって光造形法が発明されて以来、87年に光造形機が開発・販売され(3D Systems社、世界初のAM)、また同年には粉末焼結積層造形機が開発・販売された(DTM社、初の金属AM)。市場の拡大は確実視されており、2030年にはAM装置6500億円、AM用材料50006500億円、造形品2兆円の規模になるとのNEDO予測を古本教授は紹介した。

3次元CADや材料特性を熟知したうえでサポート材をうまく使わねばならないとし、「(金属AMに特有の)新しい設計概念を採り入れる必要がある」と指摘する。

「切削加工が苦手なオーバーハング(逆テーパー)や水管を配置した金型など、AMありきの設計を考える必要がある。と同時に熱変形も考慮しなければならない」

古本教授は5年前から金属AMにかかわる興味深い研究成果をいくつも発表してきた。その1つに「離型剤滲透機構を有するダイカスト金型の開発」(2111月公開)がある。一層ずつ積み重ねてつくる金属3Dプリンターによる造形品は、ポーラス(多孔質)構造にすることができる。ダイカスト金型に水冷管とは別にはポーラス構造を設ければ、離型剤をそこから供給できることを確かめたというものだ。離型剤とは金型から成形品を取り出しやすくするための薬剤。たい焼き器で生地を流し込む前に銅の焼型に塗る油の役割を果たすものだ。

「本当に金属の中から染み出せるの?という疑問を払拭すべく確かめたところ、深リブ構造でも離型剤を供給できることがわかった」

ただ単に染み出すというだけではない。アルミダイカスト金型の鋳造実験で離型力をちゃんと発揮することも確かめたという。だがこの実験は100ショット強と実際の使用に比べると少ない。「鋳造メーカーの協力のもと多ショットでの実験に取り組んでいるところ。実用化に向けて検討を進めている」と手応えを感じている様子。3D水冷管の配置や補修できることで金属AMと金型は相性がいいと言われるが、その相性はさらに高まりそうだ。

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2022610日号掲載)