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Opinion

台湾デジタル担当相 オードリー・タン氏に聞く

台湾におけるコロナ封じ込め

台湾史上最年少で入閣、コロナ禍においてリアルタイムでマスク在庫が分かるアプリや医療AI対話ロボットなど、ITを活用した対策を次々打ち出したデジタル担当相、オードリー・タン氏。11月初旬に横浜市で開催された日経・FT感染症会議での講演内容から、各国から称賛を受ける台湾のコロナ対策を探ってみた―。

[左]台湾デジタル担当相のオードリー・タン氏 [右]柴犬の画像を使い手洗いの重要性をPR

総人口2400万人を抱えながら、10月末時点での感染者は約600人(死亡者7名)。世界に類を見ない「圧倒的な防疫」に成功した台湾。しかも都市のロックダウンを行わず、経済活動や市民生活を維持しているのだ。

その基本となっているのが、Fast(迅速)、Fair(公正)、Fun(楽しさ)の「3つのF」だという。ウイルスがパンデミックする前に、各国に先駆けた水際での迅速な対応が奏功している。

「台湾では新型コロナ対策を2019年末からスタートしていました。インターネットに中国・武漢での症状に対する書き込みが行われ、それを元に2020年の元日には武漢から到着する旅客機の乗客の健康確認を始めました。私たちは2003年のSARSを教訓にして、政府もいち早く対策に取り組みました」(タン氏)

2つ目の「公正」に関しては、マスクの供給に代表される。新型コロナ禍において台湾政府は、マスクの生産を1日200万枚から10倍の1日2000万枚に増産体制を整えた。しかし、これをいかに公平に配布するかが課題だった。

「単純に販売するだけでは世界中で起こったようなマスクの買い占めが発生してしまうかもしれません。台湾では99%の国民が健康保険証を持っています。これを活用し、これを提示することで1人2週間分のマスク(大人9枚、子供10枚)を確保できるようにしました。加えて、近所のコンビニや薬局のマスク在庫をリアルタイムに確認できるマップを、なんと一般市民が作ってくれました。私はこのマップの存在をチャットで知り、政府を挙げてできる限り援助するよう働きかけました」(タン氏)。

マスク配布に対して内閣レベルでのミーティングを開き、民間の協力を得てコンビニや薬局の営業時間、マスクの在庫を30秒ごとに更新する仕組みを構築した。

「マスク需給をリアルタイムで確認できるシステムから、長時間働いていて薬局に行けない人々などにマスクが行き渡っていないことも分かりました。そこで24時間営業しているコンビニとも協力し、アプリを使って事前注文できるようにしました。これによって全ての人にマスクが行き渡る公正さを保証しました」(タン氏)


■「楽しさ」で苦境乗り越える

一般的な数値モデルによると、コロナ感染の再生産数を1未満にするには市民の約8割がマスクをつける必要があるといい、一連のシステムによる健全なマスク供給体制は台湾の新型コロナ対策に大きく貢献したと言えるだろう。

タン氏は3つ目のF=「楽しさ」もコロナ対策において重要だと強調する。

「台湾では『ユーモア・オーバー・ルーモア(ユーモアが噂をしのぐ)』という考え方に基づいて新型コロナにおけるパニックやデマに対応しています。政府内のスタッフが、インターネット上のハッシュタグに参加し、科学的な根拠に基づいた情報にユーモアを交えて発信しています。例えば、手洗いの重要性は柴犬の写真を使い、分かりやすく親しみやすく訴えています」(タン氏)

チャット上での人の問いかけに自動で答えを返すプログラム「チャットボット」の導入も「楽しんで対策を行える」一助となった。これはスマートフォンの操作に慣れない高齢者などを想定したもので、チャットボットを使って位置情報からマスクの在庫がある最寄りの薬局を知ることができる。また、AI対話ロボット「蘭医師」を開発。LINEを通じて、高齢者は正確な受診情報を得られる体制を整えた。

「医療AI対話ロボットの開発・実装に要した期間はわずか1カ月です。これにより、保健所や医療機関の担当者の負担も軽減できました。また台湾では国外から入国する人を14日間隔離しますが、ここでもチャットボットが活躍しました。今回のコロナ禍で、『市民と政府の間には信頼関係がある』ことがよく分かりました。民主主義は多くの人の参加が重要です。そこでデジタル技術を上手に活用することが、社会のより良い変革に繋がります」(タン氏)