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けんかっ早いけど人が好き Vol.71

花占い

4月は花の季節。桜前線は北上し、都会でも庭先や、駅前の商店街などには、色とりどりの花が咲いている。先日も、久しぶりに降り立った駅から歩いていると、プランターに植えられたマーガレットの花を見つけた。

なんと、なつかしい! 小学生のころ、よくこの花びらをちぎって花占いをしたものである。好きで終わるまで、いや、好きで終わっても念のためもう一回と延々と繰り返すものだから、どれだけの花をひきちぎったことか。今、流行りのSDGsとやらでいくと花をひっこぬいて遊ぶなんて、とんでもない話なのだろう。

満開のマーガレット。ついひっぱって抜きたくなる花びら……。

花で遊ぶ。その言葉で過去の記憶の扉が開いた。思いおこせば、私はずいぶんと花と遊んだものだ。それは別の言い方をすれば極悪な花荒らしと言えるかもしれない。

三重の山奥にあった祖父の家には、黄色いマーガレットのような花がたくさん咲いていた。インターネットで調べると、ユリオプスデイジーだのディモルフォセカだのといった舌を噛みそうな名前が出てくるが、ともあれ、雑草よろしくめちゃくちゃ咲きまくっていたこの花を、激流のようなU字溝の用水路にちぎっては投げを繰り返して遊んでいた。あっという間に流れていく花を見ては、うわー、速い!と喜ぶ、とんでもないクソガキで、花好きの人が見たら「おまえが落ちてしまえ」と呪われても仕方がない状況だった。

田植え前の田んぼに絨毯のように咲くシロツメクサは、編んで冠にしまくった。編み方を覚えてからはひたすら作り、田んぼのシロツメクサをすべて刈り取る勢いである。赤いサルビアは、花の中心にある筒の部分をひきぬいて蜜を吸った。駅前の花壇にあるサルビアを友人と競い合うように吸うものだから、我々の足元は赤い花びらだらけになる。これまた、花の世話をしている人が見ていたら「二人とも、食べ過ぎて腹をこわしてしまえ」と呪われていたことだろう。

大らかな時代のおかげで私は呪いもかからず今もなお生き延びている。今の小学生は、マーガレットの花を見ても、恋占いをしようなんて思わないのだろう。というか、知らないかもしれない。じゃ、恋占いはなにでするのだ? そうか、スマホのアプリか。

そういう時代なのである。

2024425日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)