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ZOLLER Japan  代表取締役社長 龍 口 一  氏

「ツールプリセッターはお金を生む機械」をいかに伝えるか

切削工具の測定器やツールプリセッター業界におけるトップランナードイツZOLLER社の日本法人。龍口一社長にツールプリセッターの特徴や、切削工具のデータ化や自動化などの最新ソリューションについて聞いた。

――工作機械受注は調整局面ですが、貴社の受注動向はいかがですか。

「市況としては、専門紙やメディアでは好調な論調も少なくはないですがメーカーや商社に実際のところを聞くと、あまりいい話はないですね。先が読みにくいです。海外製品は投資意欲が高いときは動きがいいのでコロナ前は好調でしたが、コロナ禍以降は、横ばいです。オンラインを活用した効率的な拡販で伸長を目指します」

――海外メーカーとしては為替の問題も大きいのでは。

「この2年強で、ドルもユーロも3割は上がっています。価格に3割転嫁して買っていただけるのか。国内メーカーで代用しようとなりますよね。我々は為替の転嫁に関しては非常に慎重かつ緩やかに対応しています。また円で取引しますのでユーザーにとっては引き続き『お得感』があると思っています」

――貴社のツールプリセッターの特徴をおしえてください。

「ツールプリセッターというのは元来、切削工具の寸法の『目安』を測るものでした。工具長や工具径を測り、機械に打ち込み一度試しに削って、それを見て補正して、を繰り返してから量産に入る、といったものです。我々は、工具メーカーの開発や検査に使う工具測定器を作っているメーカーです。工具測定器と同じ精度をもち、かつ自動で誰がやっても同じように測れるのが我々のツールプリセッター『venturion』や、より高性能な工具測定器『genius』です。これまで『測定機器はお金を生まないのにそこまで高精度はいらない』と言われてきました」

――測定精度が製品品質にも影響を与える。

「工具は、正確にセットできているように見えてもフレやズレが生じることがあります。そのまま加工すれば不良品が出たり、品質に悪影響があります。当社は加工前に検査ができるツールプリセッターであるというのが特徴です。当社のツールプリセッターで計測して、いきなり仕上げ加工をされるユーザーもいます。試し削りのコストダウンになります。また不良品が出ることを考えれば、ツールプリセッター一台の費用はすぐに回収できるのです。工作機械が10台、20台あってもツールプリセッターは一台で事足りますよね」

――ツールプリセッターはお金を生む、ということですね。

「我々は本当に口下手で『儲かりまっせ』ということをなかなか伝えられていない。遅まきながらユーザーにヒアリングしてどれぐらいコストが下がったか、生産性が上がったか、などをデータ化して費用対効果を提示できるようにしていきます」

■工具のデータ化自動化の第一歩

――自動化に向けての取り組みも。

「自動化の前段階として、工具のデータ化を推進しており、スマートキャビネット『ツールオーガナイザー』を提案しています。まだまだ工具は属人的に管理されています。工具をデータ化して一元的に管理すれば発注の無駄、余剰在庫も含め効率化されます。その後、理想を言えばツールプリセッター『venturion』などで工具データをつなぎ、工具のピックアップから測定、さらに工作機械へデータ転送、AGVを使っての運搬、ロボットでの取り付けまでの一連の流れを構築していければと思います。牧野フライス製作所ともコラボしており国際ロボット展で、我々のシステムを使った自動工具測定と自動加工の展示を行いました。まだまだ実際にユーザー側でそこまでやれる例は少なく、まずは工具のデータ化からですね」

――チャッキングにも自動化ソリューションがありますか。

「チャッキングは、多種多様で人が作業することを前提に作られているので自動化に向いていません。しかし唯一、実用化レベルで自動化できるのが焼き嵌めホルダです。ロボボックスと言って、ツールワゴンにセットすれば、ロボットハンドで取り外しと取り付けをして、測定して、工具交換後のものを並べる。それをAGVで運ぶ、といったシステムです。ヨーロッパとアメリカで、自動化提案を始めています。海外で実績とノウハウを蓄積して日本に持ってきたいですね」

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工具測定器「genius

実機が並ぶ本社ショールーム

ドイツZOLLER社の日本法人が本社に設けたショールームでは、ツールプリセッター「venturion」や工具測定器「genius」など、高精度・高機能製品を幅広く展示している。購入検討中の顧客には製品見学の機会を提供し、購入後はトレーニングや専門セミナーも実施。このショールームは、設立から5年経った今も、技術革新を追求する業界関係者や顧客にとり、製品の実力を直接体験できる重要な拠点となっている。龍口社長は「ここ数年、競合しない他社メーカーとのコラボを推進しています」としてショールームでの共同提案も多い。

2024325日号掲載)