日本物流新聞

ステンレス製の「ビアタンブラー」

クリーミィーで口当たり滑らかな泡

手触りや匂いで磨き具合を感じ取るプロの技

奥山清行デザインのワイングラス

「2重構造のビアタンブラー」

磨き屋シンジケート/新潟県燕市

「ビアタンブラー」

「頼まれた仕事に『NO』は絶対に言いたくない」。各種研磨のスペシャリスト32社が名を連ねる「磨き屋シンジケート」(新潟県燕市)の幹事、富研工業の富田直樹社長は言う。
同シンジケートは共同受注組織として2003年に発足したが、知名度が上がるにつれ会員各社への直接発注が増加した。
今、相談窓口である燕商工会議所に来る依頼は、「むちゃくちゃ難しいとか、量が多すぎるとか…ほんと、厄介な仕事ばかりです」。言葉とは裏腹に、富田社長の顔はずいぶん嬉しそうに見える。
「研磨はモノに価値を吹き込む仕事だと思っています」。手に取ったのは某人気漫画の金属製マスク。細かな凸凹が無数にある鋳物を、研磨筋による曇りがない♯1000―表面粗さでサブミクロン台の鏡面にまで磨き上げ、まさにキャラの命を吹き込んだ。

【職人が磨きこんだ鏡面】
富研工業の工場では、若手職人が高速回転する羽布(バフ・研磨ホイール)に黙々とビアタンブラー等を押し当て、バフ研磨をしている最中だった。手ごたえの強弱や音、ステンレスやバフが焼ける「キナ臭い」匂いで判断して、押し付ける力を微妙に変え続ける。富研工業では各種自動研磨機で効率化も進めているが、♯1000の鏡面は職人の手技でなければ到達できないという。
2重になったビアタンブラーの内側は、注いだビールの泡にクリーミィーさが出るよう絶妙のざらつき加減に仕上げる。ダイヤモンドカット仕様の場合、外側は協力工場でのプレス前に研磨し、フィルムをかけて研磨面を保護しながらプレスした後、1~2時間かけて鏡面にまで再研磨するという手間のかかりようだ。
この手間があってこそ生まれる極上の泡と艶やかな輝き。燕市内各社が協力生産するビアタンブラーの年間売上は1億5000万円(販売元・ヨシカワ)にまで成長した。「燕に磨きあり」を世に知らしめ、大手企業や著名デザイナーとのコラボ製品も数々生まれている。

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