日本物流新聞

目の焦点をずらすと帆船が浮かび上がってくる

直径1mmのエンドミルで「一筆書き」のように削る

皮、布、紙にも転写できる

3Dプリンターでつくった見える確率が上がるメガネ

「ステレオグラム」の世界を切削加工に応用

株式会社ナンゴー/京都府宇治市

「ナンゴー彫り」

目の焦点をずらすことで絵が立体的に見える。「ステレオグラム」「マジックアイ・ピクチャー」と呼ばれる世界を、切削加工に応用したのがナンゴーだ。イラスト、ロゴマーク、メッセージなど、浮かび上がらせたいものを切削による凹凸で立体的に表現する技法は「ナンゴー彫り」の名称で特許登録されている。
加工には直径1mmの小径エンドミルを使用。最大A2サイズを1本で止めずに削りきる。この「一筆書き」がポイントになるため、アルミ、樹脂、真鍮などの柔らかい素材に限られるものの、プレスで革や布に転写するのも技術的には可能という。

【目を引く「変わったもの」】
ナンゴー彫りは展示会で目を引く「変わったもの」として、製造部の五明(ごみょう)伸康さんが考案した。模様を何層も重ね、一番奥に浮かび上がらせたいものを潜ませるには、単純に削ればいいというわけではない。顧客の要望に合わせて画像をデフォルメした後、ステレオグラム用の模様に展開。3DCAD/CAMを駆使して、切削独特の風合いに仕上げる。
板だけでなく、立方体、円柱の表面にも削れるそう。オフィスの玄関に置くウエルカムボードのようなBtoBビジネスを想定して2011年に製品化したものだが、「これ以外の要望があるに違いない」(木村博高工場長)と年間10カ所以上の展示会でアピール。15年に販売サイトを開設したところ、百貨店や海外からも問い合わせがくるようになった。
ステレオグラムが性質上、人によって見え方に違いがあることから「少しでも多くの人に興味を持ってもらおう」と見える確率が上がるメガネを3Dプリンターで製作。見えることへのプレミアム感を楽しめる一品となっている。

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